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第八話 星の下で君の名を~エピローグに代えて

星の下で君の名を(8)

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 勢力の強い台風だったが、人的被害がなかったのは幸いである。
 しかし蓮のボロアパートは台風の影響をもろに受けてしまった。
 一階は床上浸水、二階は雨漏りがひどいという。

「ははっ……でも大丈夫。大家さんが何とかしてくれるって。大家さんも泣いてたけどね。ははっ……はっ……」

 傷んだ畳と壁紙は保険で対応できるそうだし、壊れた家電も大家さんの伝手で中古製品を貰い受けると決まった。
 しかし大切にしていた本や勉強に使っていたノートが濡れてしまったのは大きなダメージだ。

「……あれ、俺、よく考えたらキャンプなんて来てる場合じゃない気がしてきた。片付けとかしなくちゃいけないんじゃ……いや、今日はいいんだ! ははっ、息抜きも必要だし。ねぇ、小野くん?」

「ええっ? え……ええ」

 この局面で名を呼ばれ、梗一郎がドキリと胸を押さえる。

 慰めようと言葉を探しているのか、視線が左右に揺れた。

「い、家は残念でしたけど、でも先生がご無事で何よりです。あと、僕の気のせいですか? あのとき梗一郎って名前を呼んでくれた気が……」

「わあっ!」と蓮が突然、大きな声をあげたのは照れ故か。

「さぁ。気を取り直して! 楽しいキャンプだもの。明日は川遊びとハイキングと山登りをするんだ。ああ、楽しみだなぁ。さぁ、小野くん、寝る前に芋けんぴを食べようね。みんなにあげようと思ってたくさん持ってきたんだ」

「イベント盛りだくさんですよね。誰が企画したんだか。詰めこめばいいってものじゃな……えっ、寝る前に芋けんぴですか? いや、いただきましょう。ははっ、先生の芋けんぴ楽しみだな」

「遠慮はいらないよ。たくさん食べよう。食べまくろう! 今日ばかりはアパートの片付けのことは……忘れて……ははっ」

 笑い声が少々白々いことは否めないが、蓮はどうやら元気を取り戻したようだ。
 それが、から元気であったとしても笑顔は大切である。
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