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第八話 星の下で君の名を~エピローグに代えて
星の下で君の名を(4)
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「き、君とはいつでも……その、会えるじゃないか。その、だって……俺たち、お付き合いしてるんだし。あっ、もちろん君が嫌になったら別だけども」
「嫌になんてなりませんよ」
暗闇の中に「ふふっ」と吐息がもう一度。
「でも、寂しいのは寂しいですよ。せっかく日本史BLの話が少しだけ面白くなってきたのに」
「えっ、本当かい? 夢中になったかい?」
「まぁ、夢中かと言われればちょっと……」
梗一郎は言葉を濁した。
その微妙なニュアンスなど伝わっていないのだろう。
テントの前で蓮がピョンと飛び跳ねる。
前途ある若人を、日本史BLの魅力に目覚めさせたぞなんてガッツポーズをしている気配。
「じゃあ、秋の検定試験も受験するよね?」
「ええ? 難易度が高いって言うじゃないですか。そんなの受けるんだったら、素直にTOEICとか受けたほうが……」
身も蓋もない梗一郎の反論も、蓮は聞いちゃいなかった。
「難関の日本史BL検定試験に一人でも合格者を出したら、来年の春からまた大学で雇ってくれるっていうし。頑張ってくれよ、小野くん!」
「そうなんですか。じゃあ頑張ります!」
傍目には、テントを前に二人が立ち話をしているよう見えることだろう。
蓮の手はいじいじと入口の布をまくったり下ろしたりを繰り返している。
だって、二人で並んで眠るのは何だか気恥ずかしい。
それに、テントの中に入ったら美しい星空を見られないじゃないか。
そんな蓮の姿を見やって梗一郎は目を細める。
「嫌になんてなりませんよ」
暗闇の中に「ふふっ」と吐息がもう一度。
「でも、寂しいのは寂しいですよ。せっかく日本史BLの話が少しだけ面白くなってきたのに」
「えっ、本当かい? 夢中になったかい?」
「まぁ、夢中かと言われればちょっと……」
梗一郎は言葉を濁した。
その微妙なニュアンスなど伝わっていないのだろう。
テントの前で蓮がピョンと飛び跳ねる。
前途ある若人を、日本史BLの魅力に目覚めさせたぞなんてガッツポーズをしている気配。
「じゃあ、秋の検定試験も受験するよね?」
「ええ? 難易度が高いって言うじゃないですか。そんなの受けるんだったら、素直にTOEICとか受けたほうが……」
身も蓋もない梗一郎の反論も、蓮は聞いちゃいなかった。
「難関の日本史BL検定試験に一人でも合格者を出したら、来年の春からまた大学で雇ってくれるっていうし。頑張ってくれよ、小野くん!」
「そうなんですか。じゃあ頑張ります!」
傍目には、テントを前に二人が立ち話をしているよう見えることだろう。
蓮の手はいじいじと入口の布をまくったり下ろしたりを繰り返している。
だって、二人で並んで眠るのは何だか気恥ずかしい。
それに、テントの中に入ったら美しい星空を見られないじゃないか。
そんな蓮の姿を見やって梗一郎は目を細める。
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