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第六話 見て、君の夢はどこに?
見て、君の夢はどこに?(2)
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「契約延長の話はともかく。でも、こないだの歴史研究の発表会、緊張せずにうまく話せたんだ」
「そうか。蓮ちん、よかったな! 頑張ったな!」
ガシッと肩をつかまれた。
モブ子らが顔を見合わせて頷いてみせる。
これではどちらが生徒だか分からないわけだが、雰囲気に呑まれた蓮も笑顔を返した。
それからチラチラと周囲に視線を走らせる。
「あの、小野くんはどこだい? ちょっと伝えたいことがあるんだけど」
「えっ……」
イチ子だろうか。
モブ子の一人が小さな呻き声をあげ、隣りの二人と視線を交わす。
何を言っているのかはともかく、日ごろ明朗快活な彼女たちが言葉を詰まらせる様に、蓮は戸惑った。
「どうかしたのかい?」という言葉が喉に詰まって出てこない。
「アタシらは同人誌の印刷代で火の車なんだが……なぁ?」
「箔押し加工とか、上を見たらキリがないから……なぁ?」
「時間もないし、もうバイトは増やせないから……なぁ?」
顔を見合わせてモゴモゴと口を動かす三人。
「な、何のことだい? モブ子さんたち」
まどろっこしい彼女たちの言葉を遮った蓮だが、狼狽は隠せない。
視線は頭上のネムノキの花の間をさ迷っていた。
「こないだイチ子の家で原稿してたんだよ。追い込みってやつだな」
「うーばーいーつでピザ頼んだらな。なんと小野ちんが来たんだよ」
「小野ちんはまたバイトを増やしたらしい。かなり忙しいみたいだ」
原稿を手伝えと言って引き留めたというモブ子ら三人。
梗一郎は嫌そうな顔をして商品を渡すとすぐに帰ったとか。
それはそうだよ、モブ子さんたち。仕事中の人に何てこと言うんだい──つい挟みそうになるツッコミを堪えて聞いた話はこうだ。
「そうか。蓮ちん、よかったな! 頑張ったな!」
ガシッと肩をつかまれた。
モブ子らが顔を見合わせて頷いてみせる。
これではどちらが生徒だか分からないわけだが、雰囲気に呑まれた蓮も笑顔を返した。
それからチラチラと周囲に視線を走らせる。
「あの、小野くんはどこだい? ちょっと伝えたいことがあるんだけど」
「えっ……」
イチ子だろうか。
モブ子の一人が小さな呻き声をあげ、隣りの二人と視線を交わす。
何を言っているのかはともかく、日ごろ明朗快活な彼女たちが言葉を詰まらせる様に、蓮は戸惑った。
「どうかしたのかい?」という言葉が喉に詰まって出てこない。
「アタシらは同人誌の印刷代で火の車なんだが……なぁ?」
「箔押し加工とか、上を見たらキリがないから……なぁ?」
「時間もないし、もうバイトは増やせないから……なぁ?」
顔を見合わせてモゴモゴと口を動かす三人。
「な、何のことだい? モブ子さんたち」
まどろっこしい彼女たちの言葉を遮った蓮だが、狼狽は隠せない。
視線は頭上のネムノキの花の間をさ迷っていた。
「こないだイチ子の家で原稿してたんだよ。追い込みってやつだな」
「うーばーいーつでピザ頼んだらな。なんと小野ちんが来たんだよ」
「小野ちんはまたバイトを増やしたらしい。かなり忙しいみたいだ」
原稿を手伝えと言って引き留めたというモブ子ら三人。
梗一郎は嫌そうな顔をして商品を渡すとすぐに帰ったとか。
それはそうだよ、モブ子さんたち。仕事中の人に何てこと言うんだい──つい挟みそうになるツッコミを堪えて聞いた話はこうだ。
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