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第三話 願いをだきしめて
願いをだきしめて(2)
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「すみません、今日は授業にも出られなくて。バイトが長引いて……」
「バイトって荒物屋さんの? それなら、わざわざここまで来てくれなくてよかったのに。言ってくれたら俺が直接お店に行ったのに」
「いや、早朝バイトでスーパーの品出しをしてるんですけど、交代要員が遅刻してなかなか抜けられなくて」
肩が激しく上下に動いている。
ここまで走ってきたのだろう。
申し訳ないなぁと、蓮はその肩をぽんぽんと叩いた。
「俺も苦学生だったから分かるよ。大学に行きながらバイトをいっぱいしてたんだ。お世話になった先生がいて、その人がいなかったら卒業できてなかったと思うよ」
だから小野くん、君も俺に頼るといいよ──なんて、いかにも頼りない調子で言われて、しかし梗一郎は目を細めた。
「ありがとうございます、先生」
「今日の講義は、前回の新選組を掘り下げたものなんだ。新説も交えて紹介したから、新選組についてBL学的見地から述べよなんて小論文が出ても応用がきくと思うんだ。副長土方をめぐる……」
受けられなかった講義の内容をつらつらと述べ始めた蓮に、梗一郎が慌てて手を振ってみせる。
「いいですよ。今度モブ子らにノート借りますから」
「何言ってるんだい。先生が教えてあげてるっていうのに。それとも俺の講義はつまらないかい?」
「そ、そんなわけないです。ただ……」
「ただ? なに?」
つと、梗一郎の視線が泳ぐ。
「その、BL学そのものがその……」
「なに? つまらないって?」
「そ、そうは言ってません。先生のお話、面白いです」
整った顔立ちの学生を、蓮はじとっとした目で見上げた。
「じゃあ尚更しっかり説明しなきゃだね。俺は君を夢中にさせるって言ったじゃないか」
「それだったら、とっくに夢中だって僕も言いましたよね」
「バイトって荒物屋さんの? それなら、わざわざここまで来てくれなくてよかったのに。言ってくれたら俺が直接お店に行ったのに」
「いや、早朝バイトでスーパーの品出しをしてるんですけど、交代要員が遅刻してなかなか抜けられなくて」
肩が激しく上下に動いている。
ここまで走ってきたのだろう。
申し訳ないなぁと、蓮はその肩をぽんぽんと叩いた。
「俺も苦学生だったから分かるよ。大学に行きながらバイトをいっぱいしてたんだ。お世話になった先生がいて、その人がいなかったら卒業できてなかったと思うよ」
だから小野くん、君も俺に頼るといいよ──なんて、いかにも頼りない調子で言われて、しかし梗一郎は目を細めた。
「ありがとうございます、先生」
「今日の講義は、前回の新選組を掘り下げたものなんだ。新説も交えて紹介したから、新選組についてBL学的見地から述べよなんて小論文が出ても応用がきくと思うんだ。副長土方をめぐる……」
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「いいですよ。今度モブ子らにノート借りますから」
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「そ、そんなわけないです。ただ……」
「ただ? なに?」
つと、梗一郎の視線が泳ぐ。
「その、BL学そのものがその……」
「なに? つまらないって?」
「そ、そうは言ってません。先生のお話、面白いです」
整った顔立ちの学生を、蓮はじとっとした目で見上げた。
「じゃあ尚更しっかり説明しなきゃだね。俺は君を夢中にさせるって言ったじゃないか」
「それだったら、とっくに夢中だって僕も言いましたよね」
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