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第一話 恋のつぼみはふくらんで
恋のつぼみはふくらんで(4)
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「花ことばがあって。たしか結構いい言葉で……ええと、何だっけ」
梗一郎の前で完全に立ち止まって、蓮がうんうん唸りだした。
知ってるのに! ここまで出かかってるのにと喉元をトントン叩いてみせる。
「最近、老化が著しいんだよ。まいったなぁ。二十九歳と三十歳はやっぱり違うんだ。めっきり衰えを感じる今日このごろ」
「……ははっ」
何と返事したものか困ったように愛想笑いを返す梗一郎に、蓮はしたり顔で首を振ってみせる。
「分かんないよね。そりゃ分かんないよねぇ。大学一回生だもん。ぴっちぴちの若者だもん。えっ、てことは十八歳? ひぇぇ……」
なにが「ひぇぇ」だ、なにが「ぴっちぴち」だと、愛想笑いを引きつらせる梗一郎は、青の花から空へと一瞬視線をさ迷わせた。
「君はどこにいたって成功する、です」
「えっ、なにが?」
「ネモフィラの花ことばです」
「あ、ああ、そう! それそれ!」
実に気楽に返事をする講師を、梗一郎は優しげに見やった。
「ちなみに僕の名前の梗は『誠実』で、先生の蓮は『清らかな心』ですよ」
清らかだなんて、そんな……と、満更でもなさそうに蓮は間抜けな笑みを晒した。
「それにしても小野くん、随分と花ことばに詳しいんだね。ご実家はお花屋さん?」
「……いえ」
「じゃあ、植物園?」
違いますよと返して、梗一郎は整った目元をわずかに顰めた。
「もしかして先生、覚えてないんですか?」
生徒の表情が、実に真剣なものに見えたのだろう。
蓮が小首をかしげる。
「ご、ごめん。ここまで出かかってたんだけど……」
心なしか、梗一郎の視線が強く感じられたのだ。
梗一郎の前で完全に立ち止まって、蓮がうんうん唸りだした。
知ってるのに! ここまで出かかってるのにと喉元をトントン叩いてみせる。
「最近、老化が著しいんだよ。まいったなぁ。二十九歳と三十歳はやっぱり違うんだ。めっきり衰えを感じる今日このごろ」
「……ははっ」
何と返事したものか困ったように愛想笑いを返す梗一郎に、蓮はしたり顔で首を振ってみせる。
「分かんないよね。そりゃ分かんないよねぇ。大学一回生だもん。ぴっちぴちの若者だもん。えっ、てことは十八歳? ひぇぇ……」
なにが「ひぇぇ」だ、なにが「ぴっちぴち」だと、愛想笑いを引きつらせる梗一郎は、青の花から空へと一瞬視線をさ迷わせた。
「君はどこにいたって成功する、です」
「えっ、なにが?」
「ネモフィラの花ことばです」
「あ、ああ、そう! それそれ!」
実に気楽に返事をする講師を、梗一郎は優しげに見やった。
「ちなみに僕の名前の梗は『誠実』で、先生の蓮は『清らかな心』ですよ」
清らかだなんて、そんな……と、満更でもなさそうに蓮は間抜けな笑みを晒した。
「それにしても小野くん、随分と花ことばに詳しいんだね。ご実家はお花屋さん?」
「……いえ」
「じゃあ、植物園?」
違いますよと返して、梗一郎は整った目元をわずかに顰めた。
「もしかして先生、覚えてないんですか?」
生徒の表情が、実に真剣なものに見えたのだろう。
蓮が小首をかしげる。
「ご、ごめん。ここまで出かかってたんだけど……」
心なしか、梗一郎の視線が強く感じられたのだ。
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