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第196話 さてと、帝都のダンジョンへと突入します。

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前回のあらすじ:帝都のダンジョン調査依頼があったので引き受けた。


 陛下とリトン公爵から帝都のダンジョン探索依頼を受けて準備を始めたはいいものの、ほぼ終わってしまった、、、。まぁ、用意するものなんてほとんどないからなんだけどね。食料と水は空間収納にまだ使い切れないほど入っているし、ってか万が一の為って取っておいてあるけど増える一方なんだよねぇ。まぁ、要するに私もいわゆるエリクサー使えない病の一人ということなんだね。

 それはさておき、準備ができたならさっさと行ってしまいましょうか。じゃあ、マーブルさん頼みましたよ。

 マーブルの「ミャア!」という可愛い鳴き声の後、全く異なる景色がそこには展開されていた。以前何度か行ったことのある帝都でのリトン伯爵、いや、公爵邸か。今は何故かフロスト侯爵邸になっているみたいだけど。

 幸いにして転送した部屋には誰もいなかったので、とりあえず部屋を出て廊下を進むと広間があり、その広間にはゴブリン族の1人が洞穴族の1人と楽しそうに作業をしていた。ゴブリン族の1人が私に気付いたようで声をかけてきた。

「おぉ、アイスさん、こんなところで会うとは、一体何用で?」

 ちなみに、このゴブリン族の人には名前がないので、名前で呼びようがない。というのも、ゴブリン族では長や部隊長クラスには名前はあるものの、基本的に名前がなく、フロスト領民になったときに好きな名前を付けて良いよと言ったにも関わらず、特に不便を感じないとのことで名前を名乗らないまま今まで過ごしてきている。正直私は面倒だから名前くらい名乗って欲しいところだ、、、。だったらお前がつけろ? 無理、そこまで思い浮かぶものではないのだよ、、、。

 それにさ、ゴブリン族ってほぼ同じ顔しているんだよ? 名前つけても違う人の名前呼んじゃったら失礼じゃん、、、。カムドさんやカムイちゃんは外見が異なるし、ユミールも基本はローブ着ているから区別できるし、エーリッヒさん達は声が他のゴブリンと異なるから区別がつけられるけど、他のゴブリン達って全く区別がつかねぇ、、、。ゴブリンのみんなもそれを結構面白がっているふしがある。

「あれ、今日は2人はここにいたのね。」

「おぅ、ご領主か! いやぁ、俺らはここでの作業道具の修理を頼まれているんだ。で、ご領主は?」

「ああ、私達はこれからこの帝都にあるダンジョンの探索に行くんですよ。」

「おお、ついにアイスさんが動き出すか!!」

「・・・いや、そこまで大げさなもんじゃないでしょ、、、。」

「正直なところ、俺らは問題ないんだけど、ここの市民達では手に負えない魔物なんだよな。ここの冒険者達も大したことないから厳しいようだしな。」

「まぁ、今はわからないけど、以前までは世界最貧国と言われていた国だからねぇ、、、。貧乏な国ではいくら首都でもまともな冒険者は少ないでしょう。」

「そんなものかねぇ。ま、どちらにせよ、アイスさん達があのダンジョンに潜ってくれるなら俺らは護衛に付かなくても済むから助かるぜ。」

「まさか、ゴブリンの格好で護衛とかしませんよね?」

「ああ、流石にここはフロストの町じゃないから全身鎧を着ていくさ。」

「・・・暑くない?」

「そこはラヒラスさんのおかげで、暑くないんだよね。ただ、多少動きづらいのはねぇ、、、。その分防御力がもの凄いことになっているんだけど。」

「それは素材の勝利ですね、あと洞穴族の加工力かな。」

「ご領主、嬉しいこと言ってくれるぜ!! まぁ、ゴブリン族がここまで器用だとは思わなかったけどな。」

 こんな感じで軽く話をして、ダンジョンの場所などを聞いたりした。あとは、一応領主の部屋が用意されているみたいなので、一部屋を謁見用に、もう一部屋を転送部屋にしておきましょうか。食事はみんなと同じ食堂で十分だろう。ゴブリン達にダンジョンの場所を聞いたので、そこを目指して進んでいく。

 帝都の町並みを見て驚いたのは、以前と比べると帝都民たちの顔が明るいことだ。以前来たときは、ほぼ無気力状態だった印象が強いけど、今は頑張って仕事に従事している。建物はまだ手つかずの状態ではあったけど、道路については綺麗に整備されている。また、スラムっぽいところもなくなっており、帝都民が一体となって町造りに励んでいるのがわかる。これもリトン公爵の手腕なんだろうね。

 ダンジョン前に到着したけど、入り口は門番が控えており、許可が必要のようだった。今回は依頼で来ているから問題ないけどね。

「おお、フロスト侯爵、お待ちしておりました!」

「お勤めご苦労様です。話は聞いているのですか?」

「はい。まさかこんなに早い到着だとは思いませんでしたけどね。」

 門番にいたのは、以前フロストの町に来たことのある兵士だった。やはり見知った顔だと面倒事が少なくて便利だよね。

「では、私達はこれから潜るけど、何度かこっちに出てくると思うけど、あまり驚かないでね。」

「出てくる? ・・・ああ、なるほど。そちらのマーブルちゃんの魔法ですな。流石ですな。・・・ところで、私は猫好きなんですよ、ですから、こんなに可愛くて頼りがいのある侯爵が羨ましいやら妬ましいやら複雑な気持ちですね。一体どうやって家族に迎えられたのですか!?」

 ・・・こやつ、猫ちゃんを家族扱いか、、、。やるな!

「傷ついていたときに助けて治療したら、家族になってくれたんだよ。私も運が良かったよ。」

「おぉ! そうでしたか!! 私もそういう出会いが欲しいですな、ハッハッ!!」

 そんな話をしていると、別の兵士達も便乗してきて、自分はウサギ好きだの、自分は実はテイマーを志していただの、正直どうでもいい話を聞かされてはいたけど、自分の可愛い家族をここまで手放しで褒められては嬉しくない訳がない! マーブル達も少し照れていた。可愛すぎるぜ、うちの猫(こ)達!!

 とまぁ、こんな馬鹿話をしてからダンジョンへと突入する。あ、兵士達には差し入れとしてコカトリスのゆで卵を進呈しておいた。もちろん高級品だから1人につき1つずつと念押しを忘れずにね。

 さて、ダンジョンの地下一階だけど、これぞ洞窟! という佇まいでしたよ、ええ。暗いしジメジメしているしで、これでは上級の冒険者達だって嫌気が差すでしょうね。しかし、暗いだの、ジメジメしているだの程度では、うちのメンバーでは問題無し。

「では、ライム隊員、明かりをお願いしますね。」

「ボクにまかせてー!!」

 ライムは元気よく返事をした後、光魔法で私達の周辺を明るく照らしてくれた。ジメジメについては、マーブルの火魔法でどうにかしようと考えたけど、切りがなさそうだから、水術で側面と天井に水分を集めることで解決した。もちろん、歩きやすさを考慮してある程度の水分を下に残すことも忘れない。

 ってか、明るくして気付いたんだけど、これぞ洞窟! では全くなかったよ、、、。いわゆる墓と呼ばれるようなやつだね、アンデッドが多いみたいだし。また、ジメジメしているおかげで、水術の気配探知がいつも以上に仕事をしてくれたのは嬉しい誤算だったよ。

 ということで、範囲を把握したところで地図作成といきますか。人工物っぽいダンジョンらしく通路は直線のようだけど、ここの階層は部屋ではなく通路型のようである。湿っぽいせいか、通路は把握できるけど、鉱物などの採集ポイントについては把握できなかった。仕方ない、虱潰しに探索してみますかね。

 数時間が経過したけど、はい、何もありませんでしたよ、ええ。要は徒労に終わったというやつですよ。時間と労力を返せ!! ということで、さっさと次の階層へと行きましょうかね。そんなことを思いつつも下り階段へと到着。階段付近では、ジメジメとしておらず、結構過ごしやすそうな場所だったので、時間的にも丁度良かったのでここで昼食を食べることにした。やはり、美味い食事って偉大だね。先程まで落ち込んでいた気分が一気に元に戻りましたよ。マーブル達も元気を取り戻したので一安心。

 ってか、ここってアンデッド系の魔物がわんさか出現するんじゃないの? この時点では気付かなかったことだけど、ライムの光魔法によって、遭遇することなく魔物が消滅していたようです。ライムさん、一体あの明かりはどういった魔法だったのでしょうかねぇ?

 昼食を摂り一息ついてから、マーブルに転送ポイントを設置してもらって、一旦ダンジョン入り口まで戻ることにする。もちろん、フロストの町へと帰るのではなく、ここでも途中で帰還できるかの実験である。仮に戻れなくても問題はないけど、できればいつもの場所で寝たい、いや、たまにはねぐらで寝泊まりするのもいいかもしれない。

 マーブルに転送魔法を使ってもらうと、無事に入り口まで到着した。いきなり現れた私達に一部の兵士達は驚いていたが、フロストの町に来たことのある兵士達は驚かずに感心していた。

「侯爵、おかえりなさい! っても、またダンジョンに戻るんですよね?」

「流石にわかりますね。」

「改めていってらっしゃいませ!!」

 兵士達の敬礼にマーブル達が敬礼で応えたので、私も敬礼で応えた。マーブル達の敬礼を見て兵士達も驚きはしたものの、それは一瞬で、姿勢はさらにビシッとしながらも、目尻は下がりまくっていた。わかる、わかるよ、その気持ち!!

 改めて兵士達に見送られてダンジョンへと戻った。先程の地下一階の階段である。この場所はライムの光がなくても明るい場所だった。

 階段を降りて地下二階へと到着。地下一階とは違い、ここでは多少ジメッとしているものの地下一階ほどではない、それに少し薄暗いとはいえ、真っ暗ではない。これなら光無しでも進めそうなので、光無しで進むことにした。

 地下二階の地形も先程と同じ感じだった、というか、これ同じじゃないの? 簡単に水術の気配探知で地形を確認しながら地図を作成していくと、同じでしたよ、、、。流石はダンジョンだね、建設構造全く無視だよこれ、、、。まぁいいか、その方が進みやすいのは間違いないからねぇ。しかも通路の1本1本が長いので、流石の私も迷わない、はず、、、。

 ん? 魔物の気配を探知した。数は、と、6か。いや、10? こいつらは浮遊状態か。

「みんな、魔物の気配を探知しました。数は10くらい? 地に足が付いているのが6で、残りの4くらいは浮遊している感じかな。ということで、マーブル隊員とライム隊員は、浮遊している魔物を殲滅してください、ジェミニ隊員は地に足がついている魔物を私と3体ずつです。」

「ミャッ!」「了解です!」「わかったー!」

 マーブル達が敬礼で応えた。私も戦闘態勢を整えるべく、空間収納からオニジョロウを取りだす。

 準備が整ったので、先へと進んでいく。向こうもこちらにようやく気付いたようで、こちらに向かって進んできた。正直もう少し早く気付かれるかと思ったけど、思った以上に遅かった。もしかすると、魔物の方でも認識が鈍くなっているのかもしれない。まぁ、私達より早く気付いたとしても、戦闘準備くらいは最低でもできる距離内は把握できているから問題無いけどね。

 うっすらと確認できそうだったので、確認しつつ鑑定をかけてみると、「スカルナイト」が6体に、「ファントム」が8体という構成のようだ。って14体かぁ、、、。それ以前に、こいつら食べられないから、アマさんの鑑定もいい加減なんだよね。今回も名前しか出してきてないし、、、。

 浮遊体って認識するのが大変だね。多少落ち込んでいると、マーブルが左肩に、ジェミニが右肩に、ライムが頭に乗ってきた。モフモフ天国でもあるけど、一応これも私達の戦闘隊形の1つである。ってか、私、これから弓をぶっぱするんだけど、いつも君達は平然と魔法撃ってるよね?

 流石はアンデッド達、攻撃範囲に入ってくると、音も立てずにこちらへと襲いかかってきた。いや、相手の動く音は丸聞こえだから音も立てずというのは間違いかな。とりあえず無言で襲いかかってきたに変更しておこう、そうしよう。

 ホネホネ達は左右に分かれて襲いかかってきたので、左側を私が、右側をジェミニが自然と受け持つことになった。とりあえず頭部に撃ち込んで爆破させるつもりだから、弾種榴弾でいいのかな? そこら辺はよく知らないけどそうしておきますか。左手に矢を作りだし放つと、狙い通りに頭部に直撃、爆破して破壊。頭部を失ったスカルナイトは体が崩れ、石ころを残して消えた。とりあえずこいつらはヘッドショットでどうにかなるのね。残り2体も榴弾によるヘッドショットでアッサリと仕留めて終了。

 ジェミニも土魔法を繰り出してこちらもヘッドショットであっさりと殲滅。ってか、どうやってこのダンジョンであの塊を生み出しているのか知りたい、、、。マーブルは火魔法で、ライムは光の弾を繰り出してそれぞれあっさり殲滅。

 ちなみに石ころは魔石でした。でも、劣化版のようで、いくつか合わせると通常の魔石になるそうです。でも、うちらでは合わせることができないようで、これは町に戻ってから考えるとしますかね。

 折角だからと、先程と同じように虱潰しに探索してきたけど、魔物に遭遇した以外は特にこれといって何もなかったけど、魔物が出てくれたことでマーブル達も退屈することなく進めたみたいで何よりです。ちなみに、ライムの明かりで魔物が消滅したことに気付いたのはこのときです。来た道を戻るときに何も無かった場所に石ころ改め劣化版の魔石があったことにより気付いたのです。

 それに気付いたときのマーブル達は微妙な感じでしたね、ええ。ライムの見事な仕事を褒めたかったけど、そのおかげで自分たちが戦えなかったという何とも言えない気持ちがあったからでしょうかね。とりあえず地下一階だから、恐らく劣化版の魔石すら落とさなかっただろうから、これでよかったんだよとマーブル達に話すとそうかもしれない、ということで、改めてライムを褒め、喜びでピョンピョン跳びはねる姿を見てホッコリしたのだった。

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アンジェリーナ「ええっ!? アイスさん達はまたダンジョンへと行かれたのですか?」
リトン宰相「ええ、侯爵達4人で行ってもらいました。」
アンジェリーナ「ワタクシ達もそちらがよかったですわ、、、。」
リトン宰相「でも、あのダンジョン、アンデッドの巣窟みたいですぞ?」
アンジェリーナ「うっ、、、。」
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