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第147話 さてと、これはありえないだろ!?

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前回のあらすじ:タンヌ国王一同が来たみたいだけど、陛下に任せた。



 ・・・少し前まで、いろいろと作らされたり、作ったものの副産物で、新たなものを作成したりで、いろいろと忙しかったことを思い出す。それらがようやく終わったので、今こうしてノンビリと過ごしているところである。

 ライムミードと名付けられた、我が町で生産しているミードは、相変わらず私が作成しているけど、2種類のビール、つまり常温発酵で作るマーブルビールと低温発酵で作るジェミニビールについては、完全に領民達に製作を移行完了できている。

 うどんについては、領民達でも自作できるくらいには広がってはいるけど、出来上がりに関しては、私やアンジェリカさん達にはまだまだ及ばないそうだ。正直、そんなことはないとは思っているし、実際に屋台でも販売を始めているのでそれを食べて確認した上での感想だ。というか、そんなプロとなっている連中を差し置いてもアンジェリカさん達の方が上というのもある意味凄い。まあ、それにかこつけて戦姫の3人と接点を持ちたいという願望も大いにあるのだろう。

 また、ビールを濾過する際に発生する酵母については、領民達には少量であれば無料で配布しているので、それでアレンジなどをしているようだ。残りはというと、専属でパンを焼く領民をおくことになったので、その領民に渡されるそうだ。あ、私にも一部来るようになっている。・・・つまりは、私にも何か作れ、と言うことなのかも知れない。いや、作るけどね。

 今現在は、その酵母はそのまま使われているが、少しどうにかできないかと考えている。もちろん、以前いた世界のように、酵母だけを分けたりするのではなくて、イースト菌のようにドライの状態にしても使えるのかどうかということである。酵母だけを取り分けるなんていうことは、この世界では正直無理だと思うし、他のいろいろなものも混ざっているからこそ、あの味などが出ていると信じたい。というのも、ここで作っているパンは、小麦粉と水、そして酵母のみで作られており、塩やバター、卵など一切入れておらずにあの味が出ているのだ。今現在考えているのは、あの酵母は使い切りではなく、保存が利くものにしていけたらな、という願望である。

 実際に試してみると、問題なく乾燥できた。ただ、成功したのは、水術で水分をなくした状態の酵母だけで、温風で乾燥させたりとかはやっていない。そこは領民達、そしてラヒラスに頑張ってもらおうか。そこまで試すのは、正直面倒臭いので勘弁して欲しい。

 ということで、乾燥させた酵母から作っても問題なく完成したことだけは、フェラー族長とカムド産に伝えて、実際に試食してもらって確認したので、後は彼らにお任せするということで決着。フェラー族長からは、「また仕事が、、、。」というつぶやきを聞いたけど、気にしない。カムドさんは、しょうがないなぁという顔をしていた。実際これ以上押しつけると仕事が滞ってしまうのであれば、カムドさんが止めるだろうから、止めないということは、まだまだ大丈夫、余裕だよ、ということなのだろう。

 話は大きく変わるが、タンヌ国王側から、驚く情報が届いた。その内容には、アンジェリカさん達は当初はビックリして固まっていたが、気を取り直すと、もの凄く喜んでいたのが印象的だった。私個人的にはそこまでかよ、と思ったりもしたけど、気持ちはわかるので、発言は止めておく。

 というのも、タンヌ王国の王妃であるナターシャ様がご懐妊されたからだ。あ、一応タンヌ王国の国王様のお名前は、オーグ・デリカ・タンヌね。(詳しくは前作「とある中年男性の転生冒険記」第58話を参照されたし。)鑑定結果で男の子ということもわかっているそうだ、って、鑑定でそこまでわかるのは凄いな。

 ということで、念願の跡継ぎが生まれてくるということで、非常に目出度いのだ。ちなみに、先日のサムタン公国などの件で、首謀者の王子はもちろん、その他に国外追放となっていた王子達も廃嫡どころか、身分も奴隷以下に落とされた状態にされて、すでに男の跡継ぎはいないことにされていた。そのせいで第一継承者となっていたアンジェリカさんだったけど、王子の誕生となれば話は変わってくる、ということで、弟ができた喜びに加えて、自分の継承権が下がることに喜びを隠せない様子だった。

 また、次の一言を聞いて、私は固まってしまった。しかも、ありがたくもトリトン陛下からにやにやしながら直々にね、、、。・・・どうしてこうなった、、、。その会話の内容をちょっと再現。

「ナターシャ妃が王子をご懐妊ですか。それは目出度い出来事ですね。アンジェリカさんが喜ぶのもわかりますね。」

「そうだな。で、だ、フロスト侯爵よ、これは、オーグ、いや、タンヌ国王からお願いされたんだけどよ、王子が生まれたら、この地で育てたいらしいんだよ。ということで、侯爵、引き受けてくれるな?」

「は? いや、意味わからないんですけど、、、。」

「つまりだな、タンヌ王国の王宮で育ててしまうと、折角生まれた跡継ぎが、以前いた王子達みたいになってしまう可能性が極めて高くなってしまう、ということみたいでよ、どうせなら別の安心できる場所で子育てや教育をしてぇ、って話になってな。」

「いやいや、他国に教育させるって、おかしいでしょ!? しかも、次期王となる可能性の高い第一王子ですよ? しかも、学校とかそういった類いのものってまだ作ってない状態なんですよ?」

「ああ、それについては問題はねぇ。学校関係なら王国にもあるだろうし、どうせ、ここでも作る予定なんだろ? それによ、まだ、ってことは、これから作るってことだよな? お前さんの作るものだから、どうせ規格外になるに決まってるからな! ここで学校ができたら、こっちに通うのもアリなんじゃねぇか?」

「そう言う問題じゃないでしょうに、、、。どこをどうしたら、他国の、しかも首都ではなくこんな辺境の地で、、、。それに、留学ならまだしも、教育でしょう? いろいろおかしいでしょ、、、。」

「おいおい、侯爵、確かにここはトリトン帝国では辺境に当たる地かもしれねぇけどよ、お前さん全く自覚ないみたいだから、言っておくぞ。リトン宰相が言うには、ここから帝都に収めている税ってな、他の帝国中から集まる税を合わせた額より多いからな。」

「え? まだ一年未満ですし、三年間は税を納めなくてもいいと聞きましたけど、、、。」

「いや、始めはそうだったんだけどよ、お前んとこのフェラーによ、リトン宰相が聞いたそうなんだよ。景気がよさそうだから、少しでも納めてくれるかってな。そしたらよ、フェラーが隣にいたカムドって言ったか? ほら、あのゴブリンエンペラーの、そのカムドと話をしてな、このくらいだったら納められるって返事を聞いたらしいんだよ、そして渡された額がもの凄い金額でよ、あのリトン宰相も驚いたらしいぞ。」

「いや、それは、ただ単に、帝国内が貧しいってだけの話じゃないですか。まあ、あの二人が大丈夫と判断して税を帝都に納めたというなら、それについては問題ないんですけどね。」

「まあ、帝国が貧しいのは俺も理解しているけどよ、けどよ、フェラーがこんなこと言ったらしいぞ。『今現在はこれだけしか納められないけどいいか?』ってな。それも申し訳なさそうに渡したらしいぞ。驚いたのが俺ではなく、リトン宰相だからな。しかも、一年未満だから、数ヶ月分の収入だけでそんな額なんだよ。そんな財政状況がえげつねえお前の領地が辺境? それこそありえねぇ。」

「いや、そう言われましても、領民も少ないですし、商業関係も未発達ですしね、十分辺境と言えるのではないでしょうかね。」

「いや、お前、オーグのやつも驚いていたぞ、こんな町並み王都にもないってな。しかも、建材がおかしいだろ!? 魔樹だぞ!?」

「そんなこと言われましても、我が領で手に入る木材って、魔樹が基本ですからね。」

「まあ、それはいいや。これからは、オーグ達もちょくちょくこっちに来るみたいだから、よろしく頼むぜ。あ、俺らと同じように過ごすみたいだからよ、毎回侯爵が対応しなくても問題ないそうだぞ。領民達とも仲良くなっているみたいだしな。」

「なるほど、教育という名目で、こちらにメシをたかりに来る、と、そういうことですね、わかりました。」

「身も蓋もない言いぐさだな、おい。まあ、間違っちゃいねえか。俺たちもこれを機に友好を深めていきたいと思っているから、侯爵、これからよろしくな。」

 と、まあ、こんな感じで私の返事も聞かずに押し切られてしまいましたよ、、、。ってか、トリトン陛下については、ああ見えても神様だから大丈夫だろうけど、タンヌ国王夫妻は大丈夫なのか? まあ、陛下と同じように過ごされるのであればいいや。一つ言えるのは、私の行動の妨げにはそれほどならない、ということかな。あくまで、それほど、ではあるけどね。

 しかし、何故タンヌ王国の王子がここで教育する必要があるのか解せないけど、国が違うということを別にするなら、案としてはアリなのかもしれない。というのも、ここに住んでいる領民達は基本的に善良であるし、敵対さえしなければ、魔物とはいえ非常に可愛らしい生き物がここに住んでいる。下々と言っては領民達に失礼かも知れないけど、下々の暮らしなどを学べること、また、魔物達もいるということで、嫌な偏見も出にくい環境にはあるので、そういった意味では、いいのかもしれない。

 とはいえ、私的には納得はしてないけど、2国のトップがそう決めたのなら仕方がない。アンジェリカさん達も何か知らないけど、「これで本当の意味でここの住民になれますのね!」とか嬉しそうに話していたとかいないとか。

 そういえば、そんな話をした後に、そのアンジェリカさんがこちらに来た。

「アイスさん! 今は特にこれといって急ぎの用事はありませんわよね!?」

「ああ、アンジェリカさん、おかげさまで、ようやく一段落ついたところですかね。で、今日はどうしました?」

「アイスさん! まさかお忘れになったのかしら!? ワタクシ達を新しいダンジョンへと案内して頂けるという約束を!!」

 あ、そういえば、以前そういう話をしたっけな。はい、すんません、正直忘れておりました。あと、近い近い。まあ、先日の洞穴族のムサイ髭面に比べると超美人が迫っていると言うことで眼福ですけどね。端から見ると羨ましいかもしれませんけど、こういうときって、何か逆らえない状況なので、正直怖いです。眼福ですけど。まあ、ここは正直に言いましょうかね。

「すみません、正直すっかり忘れておりましたが、今の発言で思い出しましたよ。」

「やっぱり、、、。まあ、いいですわ。思い出して頂けたようですし。」

「で、案内するのは構いませんが、同行するのはアンジェリカさん達戦姫の3人だけですか?」

「いえ、それについては、カムイちゃんも一緒に行きたいということでしたので、カムイちゃんにも同行して頂こうかと。」

「ふむ、カムイちゃんもですか。それは都合がいいかもしれませんね。」

「アイスさん、どういうことですの?」

「ああ、以前、私があのダンジョンに初めて入ったときに同行してもらったんですよ。斥候の訓練も兼ねてね。」

「なるほど。でしたら問題ありませんわね。」

「というか、むしろ、一緒の方がいいですよ。変な罠がたくさんあるので、セイラさんも覚えた方がいいでしょうから。」

「そうでしたか、それは心強いですわね。」

「そういうことです。ところで、アンジェリカさん達やカムイちゃんの都合については大丈夫ですかね?」

「それについては問題ありませんわ! ワタクシ達はいつでも行けますわよ!!」

「了解しました。それでは、明日から早速向かうとしましょうか?」

「それは、ありがたいのですが、もう少し落ち着いてからでもいいと思いますわ。・・・そうですね、それでは3日後ということでよろしいかしら?」

「3日後ですか。私的には大丈夫と言いたいところですが、どうなんですかね? 変な横やりが入りそうな気がしないでもないのですが、、、。」

「その辺はワタクシ達にお任せ下さいな! トリトン陛下にはしっかりと話を付けておきますから!!」

「ミャア!」「ワタシ達にお任せです!!」「わーい、ダンジョン!!」

 いや、そこで具体的に名前を出しちゃいけないでしょう、、、。何故かマーブル達も任せろと言わんばかりの態度、ライムはダンジョンに潜れることを喜んでいた。まあ、いいか。3日後からダンジョンか。いろんな新しいものが見つかるといいな。

-------------------------
アンジェリーナ「トリトン陛下、3日後にアイスさんとダンジョンへ向かいます。」
トリトン陛下「そうか、わかった、しっかりアピールしてこいよ!!」
アンジェリーナ「・・・。(顔真っ赤)」
トリトン陛下「けどよ、あいつ、気付くかな、、、?」
周りの人達「(絶対気付かないよね。)」
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