82 / 210
第82話 さてと、なんか援軍要請が来ましたね。
しおりを挟む
前回のあらすじ:領民になるのを断ってきたので、それで了解した。その後、洞窟というかダンジョンを見つけた。
テシテシ、テシテシ、ポンポン、つんつん、、、。最近恒例となっている3人+1羽による朝起こしから一日は始まる。1羽については、わざわざ産みたての卵を届けに来てくれ、それを受け取ると部屋を出るという一連の流れがある。
朝食を食べてから、今日の予定について考える。といっても、フェラー族長やカムドさんにも話しておいたとおり、新たなダンジョンの探索をする予定だった。そう、だったのだ。なんかタンヌ王国というか、タンバラの街から援軍要請が来たと、ギルド長が伝えてきた。内容によると、隣国のサムタン公国がタンバラの街に攻め寄せてきているとのことだった。追放された王子の1人を擁しての挙兵だそうだ。何でも「タンヌ王国の正当な後継者に戻す」とのことらしい。まあ、定番と言えば定番だ。仮にうまくいっても後で地獄が待っているけどね、王国民に。
この騒ぎの原因は、以前タンヌ王国で、王族や貴族に対して大粛正があり、処刑や追放や身分剥奪などで貴族の数が5分の1にまで減ったことによるものだ。これに合わせて、後継者と目されていた王子2人は国外追放となっている。これだけ大規模な粛正があれば、そりゃ、少なからず混乱はしますわな。
とはいっても、貴族の大半は領土をもっていない穀潰しといっても過言ではない状態だったので、これにより王国では財政が一気に健全な状態に傾いたそうだ。・・・って、他人事のように言っているけど、これの原因って、実は私達なんだよね、、、。この世界に転生してきたときは、やや中年の一冒険者だった(前作「とある中年男性の転生冒険記」をご参照ください。)けど、その時に起こった事件だ。事の顛末は聞いていなかったので、後で聞いたときには、財政が健全な状態になったのはいいことだと思いつつも、処罰の対象となった王族が処刑ではなく追放と聞いたときには、こうなるんじゃないかとある程度予想はした。
ちなみに、戦姫のリーダーであるアンジェリカさんは、タンヌ王国の王女であり、実はタンヌ王国の王位継承者でもある。ただ、本人は嫌がっており、それもこういう状態になったりする一因ともいえる。本人の気持ちは痛いほど理解できるし、手に取るようにわかるが、国というものを考えると、それはよろしくない。まあそんなことはわかっているけど、正直私的にはどうでもいい話ではある。
今はアイス・フロスト伯爵としてここフロスト領を治める立場ではあるけど、任命してくれたトリトン帝国の皇帝陛下はおろか、帝国に対しても忠誠を誓う気持ちはこれっぽっちも存在していない。ただ、自分の楽しみに気が向いているだけである。これだけだと、どこぞの悪徳ボンクラ領主と大して変わらないかもしれないけど、実際その通りである。ただ、興味の方向が違っているだけ、あるいは、その興味の対象に費用がかかるかどうかの違いだけである。
まあ、そのことはどうでもいいことだから置いておくとして、アンジェリカさんから通信が来ないのが少し気になるところ。いつも通りであれば、最初にアンジェリカさん、あるいはセイラさんやルカさんから通信の魔導具を通じて話がこちらに来るはずだけど、今回は冒険者ギルドを通じてギルド長がこちらに報告してきたのだ。考えられるのは2つある。1つ目は、アンジェリカさん達に何か悪いことが起こったかもしれない、ということ。2つ目は、単純に通信の魔導具の存在をすっかり忘れてしまったということ。
1つ目の可能性はないわけではないが、彼我の戦力差を考えてみて、それはまずありえない。戦姫の3人はランクこそAランクではあるが、実力だけで考えるとそれぞれSランクでも問題なく通用する。ドラゴンも余裕で倒すしね。ということは、考えられるのは2つ目の「魔導具の存在をすっかり忘れている」ということしか考えられない。ラヒラスに聞いて他の可能性も考えてみるのもいいかもしれないけど、ラヒラスだとあと10や20くらいの原因が出てきそうで怖い。
ところで、タンバラの街から我がフロストの町へと援軍要請をする際に、なぜ冒険者ギルドから依頼がきたのかというと、実は、タンバラの街は現在守備兵こそいても、領主はいない状態だそうだ。で、何かあれば一旦守備兵長であるモウキさんが取り纏めることになっているらしい。アンジェリカさんから以前聞いた。ってそれでいいのか? と思ったけど、何やら特に問題はないらしい。いや、そこはダメでしょと思っても、向こうは大丈夫だと思っているのだから仕方ない。で、そのモウキさんから冒険者ギルドを通じて我がフロスト領に援軍を頼んだらしい。ちなみに、そのモウキさんは私が転生してから一番最初に出会った人間で、私が転生者なのを知っている数少ない一人であり、恐らく再び転生して今はここにいること位は掴んでいるはず。
恐らく、タンバラの街がうまく治まっているのは、モウキさんがいるから、という可能性は大きい。この際独立して王になっても問題ないんじゃないかと思う。仮にそうなったら、私は諸手を挙げて賛成だね。本人は絶対にやらないと思うけど。
さて、援軍要請を受けるつもりではあるけど、一応みんなに諮る必要があるので、主要なメンバーを招集してもらうことにした。フロスト領での主要メンバーというと、私達は当然として、領主補佐のフェラー族長とカムドさん、あとは、ウルヴとアインとラヒラス直臣3人、ゴブリン族の部隊長であるエーリッヒさん、エルヴィンさん、ハインツさん。それと、ウサギ族をまとめているレオ、といったところかな。カムイちゃんはアンジェリカさん達と一緒だからこの場にはいないので除外。あとは報告してくれたギルド長だ。
会場はアマデウス教会の会議室だ。建築中のフロスト城(仮)は訓練場以外未完成の状態なので使えない。ってか、これいつ完成するんだろう、、、。桜田なんとかみたいな感じになるのかなぁ、、、。アマデウス教会が機能しているから、全く不便は感じていないんだけど、何だろう、このコレジャナイ感、、、。
主要メンバーが揃ったところで、早速本題に入っていく。
「今さっき、ギルド長から連絡があって、サムタン公国がタンヌ王国を攻めようと進軍しており、タンバラの街へと向かっているそうだ。そのタンバラの街から援軍要請が来たから、その援軍要請を受けようと思うけど、みんなの意見を聞きたい。」
ラヒラスが最初に意見を出す。
「援軍要請を受けるのは構わないけど、それって、トリトン帝国に伝わっているの?」
「ギルド長、その辺はどうかな?」
「それについてですが、もちろん伝えております。フロスト領から援軍を出させるように伝えたのは皇帝陛下だそうです。近日中にその書簡がこちらに届く手筈となっておりますが、書簡が来る前に行動して構わないそうです。」
「なるほど、皇帝陛下の言質があるということでいいんだね?」
「はい、トリトン帝国内の全冒険者ギルドでそれは確認しております。」
「・・・普通はこれって、国が率先して動かないといけない案件だよね? 何で冒険者ギルドがメインになっているんだ、、、。」
ラヒラスが呆れ気味に呟くが、私的には仕方がないと思っている。だって、トリトン帝国だよ? 他の国ならともかく、ここはトリトン帝国なんだよ!! 宰相とか重要な職に就いている貴族のほとんどがアレなんだぜ? あんなのが仕切ろうとしたら、援軍出す前に戦争が終わってるわ!!
「いや、ラヒラス。これは皇帝陛下の英断だと思うよ。考えてもみなよ、ここはトリトン帝国だぞ?」
「そういえばそうだったね。今回に関しては陛下は良い仕事してるのかな、、、。まあ、いいか。皇帝陛下、いや、帝国でそれを承知しているなら問題ないかな。ということで、俺は援軍派遣は賛成かな。」
他のみんなにも聞いてみたが、みんなも賛成してくれた。では、これから部隊編成だけど、誰を派遣するかが問題かな。あ、ラヒラス気付いたな。
「援軍派遣なんだけど、少数精鋭で行くべきだと思う。というのも、ここはトリトン帝国だから、敵は外よりも中にありそうなんだよね。しかも、大臣連中が反対してないようだから余計にひっかかるよね。」
「流石はラヒラスだな。でも他のみんなもある程度はわかっているんじゃないかな。」
私がそう言うと、みんな頷いていた。しかし、外征するにもそれ以上に領内を気にしないといけないというのは何とも言えない気持ちにはなるね。
「で、派遣する援軍なんだけど、私達だけ「ちょっと待て。」、、、。」
ありゃ、アインが発言を遮ってきたよ、珍しいな。
「どうした、アイン?」
「どうしたもこうしたもない。アイス様達が援軍に向かうのは良いとしよう。ただな、俺たちも久しぶりに暴れたいんだよ!!」
そういうと、ウルヴとラヒラスも頷いた。あ、レオも頷いている。
「なるほど、そういうことね。わかった。とはいえ、私達が出た後、何が起こるかわからないから、主力の一部というか、大部分は残しておきたいんだよね。」
「そうですね、アイスさんは国内では敵だらけですしね。しかも、この町って城壁がないからほぼ無防備ですよね。まあ、アイスさんがどうして城壁を作っていないかは何となくわかりますけど。」
「流石はカムドさんですね。」
「伊達に長い付き合いではないですよ。では、我らゴブリン隊は留守ということにします、エーリッヒよ、それでよいな?」
「長がそういうのであれば、我らに異存はありません。」
「レオも援軍に向かいたいだろうが、派遣先はフロスト領とは異なって、魔族に対して敏感だ。余計な混乱は避けた方がいいだろうから、レオ達ウサギ族も留守を頼む。」
「カムド殿がそういうのであれば、我もガマンする。その分、ここに攻めて来る身の程知らずがいた場合には大いに活躍させてもらうぞ。」
「うむ、それは約束しよう。ただ、暴れたいのはお主達だけではなかろう。迎撃はしっかりと作戦をもって行うぞ。」
「承知した。」
「では、ある程度決まったところで、タンバラの街への援軍は私とマーブル、ジェミニ、ライムに加えて、ウルヴ、アイン、ラヒラスで行く。領内での決済についてはフェラー族長の判断に任せるよ。」
「ご主人、本当に私の判断でよろしいので? そういったことはカムド殿の方が適任では?」
「フェラー殿、あなたが上位なのですから、あなたが基本的に判断なさるのです、もちろん私も僭越ながら相談には乗りますよ。」
「そういうことでしたら、承知しました。」
「うん、期待しているよ。とりあえず数日だけだから、そんなに気を張らなくてもいいよ。気楽にやってくれればいいから。」
うーん、どうもフェラー族長は自己評価が低すぎるんだよな。少しは自信を付けてくれるといいのだけど。まあ、それ以上に普段から基本的な決済は族長がやってくれてるのだから、普段通りにやるだけでいいんだけどね。
「では、出発は明日の朝とするから、それまでに準備をよろしくね。特にラヒラス、木騎馬の整備頼むよ。」
「それについては大丈夫。普段から手入れをしているからね。」
「それなら安心だね。あと、ウルヴ、君も魔導具の確認をしておいてね。」
「また、アレですか。アレは何の意味があるんですか?」
「カッコイイでしょ? 何よりもインパクトがあるじゃん。」
「いや、確かにカッコイイし、インパクトがあるとは思いますよ、でも、何と言いましょうか、何で黒一色なのか、理由があるんですか?」
「もちろん、あるに決まっているじゃん。私らが黒一色になっても意味が全く無いんだよ。ウルヴが黒一色になることが重要なんだよね。」
「納得はしかねますが、とりあえず了承しました。」
「じゃあ、よろしくね。」
「アイス様、俺は何をすれば良い?」
「じゃあ、一応念のために、タンバラの街やその道中に関しての情報を集めてくれると安心かな。」
「了解した。」
「では、そういうことで、みんな頼むね。あと、ギルド長、情報と報告ありがとう。では、解散!」
援軍派遣についての会議も終わり、時間も十分余裕があったので、洞窟の探索に行こうかとも思ったけど、流石に行ける流れではないよね。私達についてはいつでも出陣できる用意は整っているので、何をしようか考えていたけど、考えてみたら、あの3人、食事まともに作れないじゃん。いや、ウルヴは軽食程度なら大丈夫だけど、仮にも戦だからもっとしっかりしたものでないとまずいか。
よし、折角だしこちらで用意しておきますかね。戦時食を作るとなれば、材料も時間も十二分にある。実際どうなるかはわからないけど、タンバラの守備兵達とあまり変わりはない程度に見た目はごまかしておかないとね。あとは、念のため2ヶ月分くらい用意しておきますかね。余ったらタンバラのみんなに分けてしまえば解決だ。
ということで、準備として大量の食料をマーブル達に手伝ってもらいながら作ることにした。作った以上はみんなに喜んでもらいたいのは言うまでもない。
テシテシ、テシテシ、ポンポン、つんつん、、、。最近恒例となっている3人+1羽による朝起こしから一日は始まる。1羽については、わざわざ産みたての卵を届けに来てくれ、それを受け取ると部屋を出るという一連の流れがある。
朝食を食べてから、今日の予定について考える。といっても、フェラー族長やカムドさんにも話しておいたとおり、新たなダンジョンの探索をする予定だった。そう、だったのだ。なんかタンヌ王国というか、タンバラの街から援軍要請が来たと、ギルド長が伝えてきた。内容によると、隣国のサムタン公国がタンバラの街に攻め寄せてきているとのことだった。追放された王子の1人を擁しての挙兵だそうだ。何でも「タンヌ王国の正当な後継者に戻す」とのことらしい。まあ、定番と言えば定番だ。仮にうまくいっても後で地獄が待っているけどね、王国民に。
この騒ぎの原因は、以前タンヌ王国で、王族や貴族に対して大粛正があり、処刑や追放や身分剥奪などで貴族の数が5分の1にまで減ったことによるものだ。これに合わせて、後継者と目されていた王子2人は国外追放となっている。これだけ大規模な粛正があれば、そりゃ、少なからず混乱はしますわな。
とはいっても、貴族の大半は領土をもっていない穀潰しといっても過言ではない状態だったので、これにより王国では財政が一気に健全な状態に傾いたそうだ。・・・って、他人事のように言っているけど、これの原因って、実は私達なんだよね、、、。この世界に転生してきたときは、やや中年の一冒険者だった(前作「とある中年男性の転生冒険記」をご参照ください。)けど、その時に起こった事件だ。事の顛末は聞いていなかったので、後で聞いたときには、財政が健全な状態になったのはいいことだと思いつつも、処罰の対象となった王族が処刑ではなく追放と聞いたときには、こうなるんじゃないかとある程度予想はした。
ちなみに、戦姫のリーダーであるアンジェリカさんは、タンヌ王国の王女であり、実はタンヌ王国の王位継承者でもある。ただ、本人は嫌がっており、それもこういう状態になったりする一因ともいえる。本人の気持ちは痛いほど理解できるし、手に取るようにわかるが、国というものを考えると、それはよろしくない。まあそんなことはわかっているけど、正直私的にはどうでもいい話ではある。
今はアイス・フロスト伯爵としてここフロスト領を治める立場ではあるけど、任命してくれたトリトン帝国の皇帝陛下はおろか、帝国に対しても忠誠を誓う気持ちはこれっぽっちも存在していない。ただ、自分の楽しみに気が向いているだけである。これだけだと、どこぞの悪徳ボンクラ領主と大して変わらないかもしれないけど、実際その通りである。ただ、興味の方向が違っているだけ、あるいは、その興味の対象に費用がかかるかどうかの違いだけである。
まあ、そのことはどうでもいいことだから置いておくとして、アンジェリカさんから通信が来ないのが少し気になるところ。いつも通りであれば、最初にアンジェリカさん、あるいはセイラさんやルカさんから通信の魔導具を通じて話がこちらに来るはずだけど、今回は冒険者ギルドを通じてギルド長がこちらに報告してきたのだ。考えられるのは2つある。1つ目は、アンジェリカさん達に何か悪いことが起こったかもしれない、ということ。2つ目は、単純に通信の魔導具の存在をすっかり忘れてしまったということ。
1つ目の可能性はないわけではないが、彼我の戦力差を考えてみて、それはまずありえない。戦姫の3人はランクこそAランクではあるが、実力だけで考えるとそれぞれSランクでも問題なく通用する。ドラゴンも余裕で倒すしね。ということは、考えられるのは2つ目の「魔導具の存在をすっかり忘れている」ということしか考えられない。ラヒラスに聞いて他の可能性も考えてみるのもいいかもしれないけど、ラヒラスだとあと10や20くらいの原因が出てきそうで怖い。
ところで、タンバラの街から我がフロストの町へと援軍要請をする際に、なぜ冒険者ギルドから依頼がきたのかというと、実は、タンバラの街は現在守備兵こそいても、領主はいない状態だそうだ。で、何かあれば一旦守備兵長であるモウキさんが取り纏めることになっているらしい。アンジェリカさんから以前聞いた。ってそれでいいのか? と思ったけど、何やら特に問題はないらしい。いや、そこはダメでしょと思っても、向こうは大丈夫だと思っているのだから仕方ない。で、そのモウキさんから冒険者ギルドを通じて我がフロスト領に援軍を頼んだらしい。ちなみに、そのモウキさんは私が転生してから一番最初に出会った人間で、私が転生者なのを知っている数少ない一人であり、恐らく再び転生して今はここにいること位は掴んでいるはず。
恐らく、タンバラの街がうまく治まっているのは、モウキさんがいるから、という可能性は大きい。この際独立して王になっても問題ないんじゃないかと思う。仮にそうなったら、私は諸手を挙げて賛成だね。本人は絶対にやらないと思うけど。
さて、援軍要請を受けるつもりではあるけど、一応みんなに諮る必要があるので、主要なメンバーを招集してもらうことにした。フロスト領での主要メンバーというと、私達は当然として、領主補佐のフェラー族長とカムドさん、あとは、ウルヴとアインとラヒラス直臣3人、ゴブリン族の部隊長であるエーリッヒさん、エルヴィンさん、ハインツさん。それと、ウサギ族をまとめているレオ、といったところかな。カムイちゃんはアンジェリカさん達と一緒だからこの場にはいないので除外。あとは報告してくれたギルド長だ。
会場はアマデウス教会の会議室だ。建築中のフロスト城(仮)は訓練場以外未完成の状態なので使えない。ってか、これいつ完成するんだろう、、、。桜田なんとかみたいな感じになるのかなぁ、、、。アマデウス教会が機能しているから、全く不便は感じていないんだけど、何だろう、このコレジャナイ感、、、。
主要メンバーが揃ったところで、早速本題に入っていく。
「今さっき、ギルド長から連絡があって、サムタン公国がタンヌ王国を攻めようと進軍しており、タンバラの街へと向かっているそうだ。そのタンバラの街から援軍要請が来たから、その援軍要請を受けようと思うけど、みんなの意見を聞きたい。」
ラヒラスが最初に意見を出す。
「援軍要請を受けるのは構わないけど、それって、トリトン帝国に伝わっているの?」
「ギルド長、その辺はどうかな?」
「それについてですが、もちろん伝えております。フロスト領から援軍を出させるように伝えたのは皇帝陛下だそうです。近日中にその書簡がこちらに届く手筈となっておりますが、書簡が来る前に行動して構わないそうです。」
「なるほど、皇帝陛下の言質があるということでいいんだね?」
「はい、トリトン帝国内の全冒険者ギルドでそれは確認しております。」
「・・・普通はこれって、国が率先して動かないといけない案件だよね? 何で冒険者ギルドがメインになっているんだ、、、。」
ラヒラスが呆れ気味に呟くが、私的には仕方がないと思っている。だって、トリトン帝国だよ? 他の国ならともかく、ここはトリトン帝国なんだよ!! 宰相とか重要な職に就いている貴族のほとんどがアレなんだぜ? あんなのが仕切ろうとしたら、援軍出す前に戦争が終わってるわ!!
「いや、ラヒラス。これは皇帝陛下の英断だと思うよ。考えてもみなよ、ここはトリトン帝国だぞ?」
「そういえばそうだったね。今回に関しては陛下は良い仕事してるのかな、、、。まあ、いいか。皇帝陛下、いや、帝国でそれを承知しているなら問題ないかな。ということで、俺は援軍派遣は賛成かな。」
他のみんなにも聞いてみたが、みんなも賛成してくれた。では、これから部隊編成だけど、誰を派遣するかが問題かな。あ、ラヒラス気付いたな。
「援軍派遣なんだけど、少数精鋭で行くべきだと思う。というのも、ここはトリトン帝国だから、敵は外よりも中にありそうなんだよね。しかも、大臣連中が反対してないようだから余計にひっかかるよね。」
「流石はラヒラスだな。でも他のみんなもある程度はわかっているんじゃないかな。」
私がそう言うと、みんな頷いていた。しかし、外征するにもそれ以上に領内を気にしないといけないというのは何とも言えない気持ちにはなるね。
「で、派遣する援軍なんだけど、私達だけ「ちょっと待て。」、、、。」
ありゃ、アインが発言を遮ってきたよ、珍しいな。
「どうした、アイン?」
「どうしたもこうしたもない。アイス様達が援軍に向かうのは良いとしよう。ただな、俺たちも久しぶりに暴れたいんだよ!!」
そういうと、ウルヴとラヒラスも頷いた。あ、レオも頷いている。
「なるほど、そういうことね。わかった。とはいえ、私達が出た後、何が起こるかわからないから、主力の一部というか、大部分は残しておきたいんだよね。」
「そうですね、アイスさんは国内では敵だらけですしね。しかも、この町って城壁がないからほぼ無防備ですよね。まあ、アイスさんがどうして城壁を作っていないかは何となくわかりますけど。」
「流石はカムドさんですね。」
「伊達に長い付き合いではないですよ。では、我らゴブリン隊は留守ということにします、エーリッヒよ、それでよいな?」
「長がそういうのであれば、我らに異存はありません。」
「レオも援軍に向かいたいだろうが、派遣先はフロスト領とは異なって、魔族に対して敏感だ。余計な混乱は避けた方がいいだろうから、レオ達ウサギ族も留守を頼む。」
「カムド殿がそういうのであれば、我もガマンする。その分、ここに攻めて来る身の程知らずがいた場合には大いに活躍させてもらうぞ。」
「うむ、それは約束しよう。ただ、暴れたいのはお主達だけではなかろう。迎撃はしっかりと作戦をもって行うぞ。」
「承知した。」
「では、ある程度決まったところで、タンバラの街への援軍は私とマーブル、ジェミニ、ライムに加えて、ウルヴ、アイン、ラヒラスで行く。領内での決済についてはフェラー族長の判断に任せるよ。」
「ご主人、本当に私の判断でよろしいので? そういったことはカムド殿の方が適任では?」
「フェラー殿、あなたが上位なのですから、あなたが基本的に判断なさるのです、もちろん私も僭越ながら相談には乗りますよ。」
「そういうことでしたら、承知しました。」
「うん、期待しているよ。とりあえず数日だけだから、そんなに気を張らなくてもいいよ。気楽にやってくれればいいから。」
うーん、どうもフェラー族長は自己評価が低すぎるんだよな。少しは自信を付けてくれるといいのだけど。まあ、それ以上に普段から基本的な決済は族長がやってくれてるのだから、普段通りにやるだけでいいんだけどね。
「では、出発は明日の朝とするから、それまでに準備をよろしくね。特にラヒラス、木騎馬の整備頼むよ。」
「それについては大丈夫。普段から手入れをしているからね。」
「それなら安心だね。あと、ウルヴ、君も魔導具の確認をしておいてね。」
「また、アレですか。アレは何の意味があるんですか?」
「カッコイイでしょ? 何よりもインパクトがあるじゃん。」
「いや、確かにカッコイイし、インパクトがあるとは思いますよ、でも、何と言いましょうか、何で黒一色なのか、理由があるんですか?」
「もちろん、あるに決まっているじゃん。私らが黒一色になっても意味が全く無いんだよ。ウルヴが黒一色になることが重要なんだよね。」
「納得はしかねますが、とりあえず了承しました。」
「じゃあ、よろしくね。」
「アイス様、俺は何をすれば良い?」
「じゃあ、一応念のために、タンバラの街やその道中に関しての情報を集めてくれると安心かな。」
「了解した。」
「では、そういうことで、みんな頼むね。あと、ギルド長、情報と報告ありがとう。では、解散!」
援軍派遣についての会議も終わり、時間も十分余裕があったので、洞窟の探索に行こうかとも思ったけど、流石に行ける流れではないよね。私達についてはいつでも出陣できる用意は整っているので、何をしようか考えていたけど、考えてみたら、あの3人、食事まともに作れないじゃん。いや、ウルヴは軽食程度なら大丈夫だけど、仮にも戦だからもっとしっかりしたものでないとまずいか。
よし、折角だしこちらで用意しておきますかね。戦時食を作るとなれば、材料も時間も十二分にある。実際どうなるかはわからないけど、タンバラの守備兵達とあまり変わりはない程度に見た目はごまかしておかないとね。あとは、念のため2ヶ月分くらい用意しておきますかね。余ったらタンバラのみんなに分けてしまえば解決だ。
ということで、準備として大量の食料をマーブル達に手伝ってもらいながら作ることにした。作った以上はみんなに喜んでもらいたいのは言うまでもない。
0
お気に入りに追加
1,120
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】嫌われている...母様の命を奪った私を
紫宛
ファンタジー
※素人作品です。ご都合主義。R15は保険です※
3話構成、ネリス視点、父・兄視点、未亡人視点。
2話、おまけを追加します(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)
いつも無言で、私に一切の興味が無いお父様。
いつも無言で、私に一切の興味が無いお兄様。
いつも暴言と暴力で、私を嫌っているお義母様
いつも暴言と暴力で、私の物を奪っていく義妹。
私は、血の繋がった父と兄に嫌われている……そう思っていたのに、違ったの?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる