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第46話 さてと、ようやく要望に応えることが出来そうですね。

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 それぞれ話し合いをして、アマデウス教会と冒険者ギルドをフロスト領に作ることが決まってから数日後、まずは冒険者ギルドが完成した。場所的には領主館へと一直線につながる大通りとなる予定の一角に建てられており、地上5階、地下3階というもの凄い構造をしていた。地上1階はギルドの受付などの他、酒場兼食堂も作られていた。地下1階は解体場と魔物素材の倉庫となっており、地下2階は訓練場だそうだ。地下3階にはさらに倉庫が作られていた。地上の2階は各会議室やギルド長室などがあり、3階より上はギルド員の宿舎として作られたそうだ。


 建物の材質には魔樹がふんだんに使われており、見た目はもの凄い豪華になっていた。といっても、フロスト領では魔樹が一番コストがかからないんだけどね。魔樹だから火に弱いかといえば、そうではなく、所々に防御結界が施されており、ドラゴンの攻撃でもびくともしない構造となっているらしい。ラヒラスがマーブルに頼んで結界を張ってもらい、それを魔導具で維持できるようにしたそうだ。確かにマーブルクラスの結界となればそのくらいは頑丈だろう。一応耐久テストとして、野ウサギ族が体当たりをして試したらしいが、びくともしなかったそうだ。とはいえ、その耐久テストだと、ほとんどは保たないでしょうに、、、。


 そんな凄い設備を数日間で完成させたのにはもちろん理由があり、トリニトにいるときから既に冒険者ギルド側で設計図や建築計画を詰めに詰めていたようで、あとは木材を加工して組み立てるだけの状態だったそうだ。ただ、魔樹って見た目以上に加工が大変らしいのだが、そこはフロスト領、魔樹をものともせずに加工できる存在が多数いたらしく、1日掛からずに組み立て準備までいけたそうだ。


 また、地下についてだが、ラヒラス特製の巨大な柄をもつ匙、平たく言うと、シャベルが効果を発揮した。シャベルの魔導具に魔力を込めると、岩でもプリンのように掘り進められるようで、大活躍した。掘った土はどうしたかというと、先日のマジックバッグの出番である。1袋当たり10メートル立方しか入らないとはいえ、袋自体はたくさんあるので、掘った土を片っ端から放り込んでも大丈夫なのだ。また、袋に土を入れておけば、勝手に粘土などに分けてくれるようで、それもある意味良い仕事をした。


 そんな感じでたった数日で完成したものが冒険者ギルドフロスト支部であった。とはいえ、これから業務の中心をこちらに移動させる作業などがあり、引き続き大変だろうが、そこはギルドの事情だから頑張ってもらいたい。


 完成後、ギルド職員全員でお礼を言いに来た。別に作業が終わってからでもいいんだけどね。


「フロスト伯爵、ご協力ありがとうございました。おかげでこのような立派な建物が完成致しました。こんなに立派で頑丈なギルドの建物など、他では見られません。さらに、みなさまのおかげもあって、予算も少なく済みました。」


「礼には及ばないよ。極貧だったトリニトを立て直してくれたのは、冒険者ギルドが協力してくれたことが大きいからね。フロスト領の発展にも冒険者ギルドは無くてはならないものだから。今は商人はいないけど、これから商人が来たとしても、冒険者ギルドがなければ、商業を行う経済的体力は作れないからね。これからもお互いに協力して、お互いに発展していこう。」


「はい!」


 今日は冒険者ギルドフロスト支部が完成したお祝いとして、ギルド内にある酒場兼食堂で宴だ。実は建物自体もマーブルの闇魔法で空間が広くなっており、建物の大きさ以上に中身が広くなっている。とはいえ、魔導具に必要な魔石の兼ね合いもあり、広くなっているのは地上1階部分と地下1階部分だけとなっている。酒場兼食堂はこれからのことを考えて、最大で300人が飲み食いできる大きさになっていた。そんな広さだから現在の領民全員はもちろんのこと、トリニトから来た関係者全員も合わせて余裕で入ることができた。


 私はというと、食べる側ではなく調理する側にいた。というのも、一応、フロスト領では私が一番の料理上手であり、料理班やトリニトから来た屋台の人達が、料理を教えろとうるさかったのだ。私、一応領主なんですけどね、、、。まあ、みんなが喜んでくれるならいいか。


 マーブル達は嬉しいことに私の手伝いをしてくれていた。マーブルは火力の調整を担当してくれ、ジェミニ達、野ウサギ族は料理を運んでくれ、ライムは汚れたところを片っ端から掃除してくれていた。ラヒラスの魔導具でキレイにするやつがあるはずだが、ラヒラス曰く、「領内のことなら無料かそれに近い値段で用意できるけど、冒険者ギルドは別組織だから、有料だね。」とのこと。まあ、言っていることはよくわかるので、そこは任せておきますか。何より、ここってしばらくは使わないんだよね。というのも、建物を建てただけで、業務はこれからだし、何よりも利用者がおらん!


 こうして、冒険者ギルドフロスト支部は完成したので、急ごしらえした解体場からフロスト支部の方で解体作業の場を移してこちらは完了したが、問題、というか時間がかかったのはアマデウス教会の方であった。何せ教会を作るのはいいが、基本的構造など誰1人としてわからない。もちろん私もわかるわけがない。以前の世界ではそれほど興味はなく、知っているのはせいぜいテレビに出るような豪華絢爛なもので、こちらの世界でどうなっているかなど全くわからなかった。


 アマデウス教会の関係者を呼ぼうかという意見も出たが、トリトン帝国にはそもそもアマデウス教会はないので、他国から呼ばなければならない。一応隣のタンヌ王国には教会があることを知っているが、流石に知っているとは今の段階で言うわけにはいかない。で、結局、談話室、神官の部屋、祈りの場など、ある程度の部屋に分けて作ろうということになった。建材は冒険者ギルドを作ったときに掘って手に入れた粘土と土などを混ぜて、焼きレンガのように一気に作ってしまおうと言うことになった。・・・これって、ほとんど私達の仕事じゃん、、、。


 レンガの素材から一気に作り上げるから、まずはジェミニの土魔法でしょ、それから、私が乾燥させたりするでしょ、で、あとはマーブルが火魔法で焼き上げるじゃん。ってか、これって私達しか仕事する必要ないってやつ? まじですか? まあ、いいか。他ならぬアマさんの教会だしね。お礼を込めて気合入れて作りますか。それを察してか、マーブル達もやる気になっていた。


 今回ライムは出番無さそうだけど、ここの建築を除けばライムはどこに行っても引っ張りだこの存在だ。ということで、一緒に仕事できないと少しションボリしていたライムを励ます。まあ、本当は完成後にゴミみたいな汚れの部分は出てくるので、ライムの出番は思い切りあるんだけど、その間暇だし、ライムの凄さを領内で見せつけてやろうじゃないか。


 ジェミニに土魔法で造形を頼んだが、幸いなことに野ウサギ族のみんなはジェミニと同様かそれ以上の土魔法使いだった。逆にレオから「何を水くさい!!」と怒られる始末だったよ。とはいえ、失敗したら怖いやら恥ずかしいやら情けないやらで心配なので、試しに小さいサイズで試してみた。思いの外上手くいったので、いよいよ本番である。ちなみに設計図は大工達が作ってくれた。


 作業については造形にやはり時間がかかってしまったが、ここで手を抜いてしまうと構造上よろしくないので、どれだけ時間がかかっても慎重に作業を行った。そのおかげもあって、粘土の状態でもしっかりした作りになった。


 ジェミニ達による造形が完成したので、次は私自身が水術で粘土の水分を抜く作業だ。ここも一気にやって崩壊しては意味が無いので慎重に水分を除いていく。水分が無くなっていくと、色が変わっていくので、作業を見ていた人達はそれを見て「おおっ」と言いながら眺めていた。目を輝かせていたので魅せた甲斐はあっただろうか。


 良い具合に水分を除くことができたので、あとはマーブルによる日干しレンガから焼きレンガへと変える作業のみとなった。といっても、マーブルが火魔法で焼いて、他に燃え移らないように教会内を風魔法で覆うだけだが、これがもの凄い派手なものになった。見た目的には教会全体が火で覆われているのだ。しかもそれは焼却ではないので、形が崩れることなく数日間煌々と燃え続けているのだ。後日話を聞くと、森からもその様子がわかるくらいの大きさだったそうだ。


 そんな派手派手しい火のオブジェから3日後、無事、アマデウス教会は完成した、といっても、流石に3日も燃え続けていたから、熱いに決まっている、ということで、冷めるまでさらに1週間かかった。水術などで冷ますことも考えたが、急速な温度変化で壊れてしまってはどうしようもないので、やはり放置して自然冷却が一番ということで、そうなった。


 そんなこんなで、ようやく教会が完成した。もちろん神官はいないので、しばらくは私が神官も勤めることになった。とはいえ、私は領主なので、ここには普段はいないので、とりあえず祈りの場+アルファだけ整備することにした。祈りの場にはアマデウス像を用意した。ちなみにデザインはジェミニである。当人を見ているのだから当然だろう、それでその出来映えはというと、まさに当人そのものであった。流石はジェミニである。威厳がありつつも表情は穏やかとなっており、まさに神様といったところであろうか。というのはウルヴやアインなど当人を見たことがない人達の感想である。って、通常は見たことがないのが当たり前だよね。


 それで、アマデウス像の近くに水槽というか、水が沸く魔導具を設置してもらい、池のような様相を呈していた。池からは水路を作って、別室でその水を利用できるようにした。これが+アルファの部分である。ちなみにこの水はねぐらの水が沸く魔導具で、トリニトの私用の離れ小屋に設置されているものと同じである。もちろん、領民達はこの水を飲んだりすることが可能だ。といっても、水場で用意している水と全く同じなんだけどね。


 ようやくアマデウス教会が完成し、領民全員とトリニトから来た人達全員で、私達を先頭にアマデウス像にお祈りした。お祈りする作法は特に決めていないので、その辺は各自好きにしてもらうことにした。ちなみに私は合掌瞑目というこの世界にそぐわないやり方だった。だって、これしか知らないんだから仕方ない。


 私が合掌瞑目して少し経つと場面が切り替わる感覚を受けた。あ、これ本人ご登場だな。


 気がつくと、そこはやはり、ある程度見慣れた景色だった。真っ白な大理石の部屋にこたつとミカンがあったのだ。やはりアマさん本人がそこにはいた。ちなみに、マーブルとジェミニとライムも一緒だ。


「アイスよ久しぶりじゃの、まさかワシの教会を建ててくれるとは思わなかったぞい。」


「アマさん、お久しぶりです。領民達から祈りの場を作りたいと要望があったので、案を出したら採用された感じです。」


「ホッホッホッ、ある程度は聞いておるよ。それにしても、お主、ワシのことよくわかっておるの。お主の言った通り、別にワシの教会だからといって、ワシだけを信仰する必要はない。良いことでも悪いことでも悩みでも何でもよい。ワシ達に何かを伝えてくれれば、それはそれで嬉しいのじゃよ。色々下界の事を話してくれるのが楽しくて仕方ないからの。」


「なるほど、お祈りとはそういったものも含まれているのですね。作った甲斐がありましたよ。」


「それにしても、ここの教会でのワシの像じゃが、そっくりに作ってあるのう。しかも、優しげにしておるところが気に入った。」


「ありがとうです! アマデウス様はお優しいので、自然とそういう表情になったです!!」


「ホッホッホッ、そうか、そう言ってくれると嬉しいの。皆に感謝じゃ。」


「喜んで頂けて何よりです。一応私の方針なんですが、教会内には一応神官用の部屋など作ってありますが、基本的には神官は置かない方針ですが、よろしいですか?」


「それは別に構わんぞい。お主達がこまめにこうしてお祈りという報告をしてくれればのう。ところで、この件についてお礼をせねばならんの。」


「いや、別に必要ないですよ。」


「そうは言ってものう、ここまで考えてくれたお主達ではなく、迷うことなく賛成してくれた領民達に対するお礼だとしたら、受けてくれるよな?」


「領民達にと言うのであれば、断れませんね。」


「そうじゃろう、そうじゃろう。ということで、ささやかではあるが、この教会そのものにワシの加護を授けよう、これでこの教会はどんなことがあっても壊れたりすることがなくなる。」


「それはありがたいです。一応伺っておきますが、少々改築とか色化粧とかしてもよろしいですかね?」


「うーん、不壊状態にするから、削ったりはできなくなるが、色づけやら何やらは特に問題ないぞい。」


「ありがとうございます。何せ一色ですから、そのうち物足りなくなってくると思いまして。」


「その辺はお主達の好きにしたらいいぞい。ワシが求めておるのは、お祈りという名の報告じゃからな。」


「では、お言葉に甘えておきますよ。」


「それとな。あともう1つお礼があるのじゃが、ワシの像のところから水が湧いておるじゃろ? あの水に少々加護を授けたいと思うが、受けてくれるか?」


「・・・加護の内容にもよりますが、どのような加護を?」


「別に構えなくともよい。そうじゃな、お主が領民と認めたものに限り、お主が愛用しておるねぐらの水と同等の成分をつけよう。確か、あの湧き水は魔導具から作られているよな? では、あの魔導具はそこに設置しておる限り無制限に水が湧くようにしてやろう。それならいいよな?」


「十分すぎるくらいです。ありがとうございます。」


「そうか、喜んでくれるか。それならワシもお礼をした甲斐があるのう。ってもう時間か、アイスよ、折角ワシの教会を作ったのじゃから、こまめに顔を出すのじゃぞ。」


「承知しました。マーブル達と一緒に伺いますよ。」


「そうしてくれい。できるだけここにいるようにするからのう。」


「いや、それはまずいでしょうに。」


「ホッホッ、それではの。」


「はい、では、また。」


「ニャーー!」


「またお会いしたいです!!」


「ボクもまた会いたい-!」


 景色が暗転して、アマデウス像の前に戻った。流石にご神託として伝えるのは後々面倒だから、お祈りに対しての注意点みたいな感じでみんなに伝えましょうかね。


 一応アマデウス神の教えとして、像の前で祈ってさえくれれば、別にアマデウス神でなくとも構わないこと、また、いいことでも悪いことでも悩みでも何でもいいので、祈りを通じて伝えてくれれば神様も喜んでくれるという旨を伝えた。まあ、建築する前でもどの神に対しての祈りで構わないことは伝えてあるし、理解してくれると思う。ただ、この教会に与えられた加護だけは伝えないでおこう。

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