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第13話 さてと、まずは確認からですかね。
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テシテシ、テシテシ、ポンポン、恒例の朝起こしであると同時に今日初めての癒やしの時間でもある、と同時に朝食の催促も含まれている。マーブル達を順番にモフってから顔を洗ってサッパリさせてから、朝食の準備を始めていると、来客があった。恐らくアッシュだろう。対応はウルヴ達に任せるとして朝食の準備を続けていると、ウルヴから報告というほどでもないか、アッシュが来たと伝えられる。
「アイス様、アッシュ様がお見えです。」
「了解。ここに案内して。」
「承知しました。」
ウルヴがアッシュ達をここに連れてくる。
「兄上、おはようございます。今日はよろしくお願いします。」
「おはよう、アッシュ。ところで朝食は済ませたのか?」
「いえ、朝食も含めて兄上と行動しようと思いまして。」
「そうか。折角来たんだから一緒に食べるか?」
「いいのですか?」
「いいも何も、そのお金はどこから出ている? もう少し考えてお金を使うと良い。自分で稼げるようになったら稼ぎの中で思いっきり贅沢するといいさ。」
「はい、では、お言葉に甘えて頂きます。」
「お前らも朝食はまだであろう。一緒に食べていくといい。」
「ハッ、有り難く頂戴致します。」
うーん、昨日までのアッシュを見ると考えられないほど変わっているな。取り巻き連中は口調ではああ言っているが、私を侮蔑しているのは見て取れるが、アッシュ本人は変わったな。これが本心か面従腹背かはわからないけど、別にいいか。
いくら改築したとはいえ、客人が来ることは全く想定していなかったので、全員で食べられる広い場所がないから、ウルヴ達は各自の部屋で食べてもらい、アッシュ達に食堂で食べてもらうことにした。私とマーブル達はもちろん私達の部屋で食べることにした。アッシュは何か言っていたが、取り巻き達は私達と食事したがらないだろうし、どうせ一緒に食べても美味しくないからね。
朝食が終わり、片付けを済ませたが、本来なら昼食前までは領内を散策して昼食後に狩りをしようかと考えていたが、予想以上に早く来てしまったので予定を変更して早速狩りにでかけることにした。とはいえ、アッシュもそうだが、取り巻き達も恐らくゴブリンもまともに倒せないだろうから、早めに出発しておかないと良い獲物を狩れないというのもあった。
トリニトを出て街道に入り少し南下してから西へと向かう。トリトン帝国の西にある森はかなり広大らしく森の広さ自体がトリトン帝国よりも広いらしい。これはアマさん情報だから間違いないだろう。で、この森を取り囲むように各国が存在している感じらしい。ひょっとしたらねぐらもこの森の中に存在するのではなかろうかと思うけど、転送魔法で移動できるのでそれは後回しでも問題ない。今はゴブリンだ。
森に到着した。入る前にアッシュ達の装備を確認する。大丈夫そうだな。小説によっては、森に狩りに向かうのに動きやすい格好ではなく鎧姿で行こうとするお馬鹿、いや、人達も一部存在するらしい、タンク職ではないにも関わらずだ。取り巻き達は私の装備が普段着と変わりないのを訝しんだが、落ちこぼれだからと納得したらしい。私はいつもこの格好でいろいろな魔物を狩っているんですがね。一応こちらでも魔物探知はしておくにしても、万が一があると面倒なので、マーブルにも探知魔法をかけてもらい、ついでにゴブリンのいそうな場所に案内してもらうことにした。
マーブルは定位置である私の左肩の上から方向を示す。その方向に従って私達は進む。アッシュは不安になったのだろう、私に聞いてきた。
「兄上、私達は何と戦うのでしょうか?」
「アッシュ達にはまずゴブリンと戦ってもらい、力の使い方などを確認させてもらう。で、そのゴブリンがいる場所までマーブルに案内してもらっているんだ。」
「なるほど。兄上の飼っている猫は凄いんですね。」
「マーブルだけじゃないよ。ジェミニもライムも凄いんだよ。とはいっても、実際に見てみないとわからないだろうから、そこは気にしなくてもいい。それよりも自分のことを心配した方がいいよ。ここは屋敷では無いから何が起こるかわからない。」
アッシュは半分納得したようなしていないような表情でとりあえずは頷いていた。まあ、実際に体験しないとわからないだろうからそれは仕方がないかな。
森を進むこと30分、マーブルが私の肩をテシテシと叩いた。ゴブリンの気配を探知したらしい。それにしてもいい肉球の感触。マーブルの指し示した方向に集中して探知をかけ直すと、確かに魔物の気配を探知した。なるほど、この気配がゴブリンね。あちこちにゴブリンの気配を感じることが出来た。それぞれが3から5体の集まりだった。よし、近くにいるのは3体か、練習には丁度いいかな。
「アッシュ、前方300メートル辺りにゴブリンを探知した。数は3体だ。心の準備をしておくように。」
「はい、兄上。でも、そんな遠くからゴブリンがいることがわかるのですか?」
「うん、わかるよ。でも、アッシュ達はそんなことよりも戦闘の準備をしておけ。」
アッシュの指示で取り巻き達も戦闘の準備をしていく。それにしても準備がもたついている。本当に狩る気があるのかねえ。ゴブリン達に近づいていくが、まだゴブリン達は気付いていない。ここら辺で仕掛けるか。
「アッシュよ。ここからゴブリン達を攻撃するから、魔法を使って攻撃してみなさい。一番大事なのは落ち着いて行動することだ。次に大事なのはしっかり魔法を命中させることだ。威力はその次だ。いいな。」
「はい、では、行きます。『炎よ、我が敵を討て、ファイアーボール!!』」
アッシュは詠唱を終えると杖をゴブリンに向けて杖先から火の玉が出てきた。火の玉は見事に1体のゴブリンに命中する。しっかりと頭部に命中させてゴブリンの悲鳴がでたが、しばらくして火の玉を喰らったゴブリンは倒れた。
「やった! ゴブリンを倒したぞ!!」
「落ち着け! ゴブリンはまだ2体残っているぞ! お前達は何をしている! アッシュの護衛じゃ無いのか!」
ゴブリンを倒せたことに喜びを露わにするアッシュとその取り巻き達。倒せたといってもゴブリンはまだ2体残っている。その2体のゴブリン達はこちらに気付いて向かってくる。アッシュは再び魔法を放とうとするが、焦りが強く詠唱ができない。取り巻き達も我を忘れて2体のゴブリンに突撃していく。しかも、恐怖を吹き飛ばすかのような大声で突撃をするものだから、周りにいるゴブリン達がそれに気付いてこちらに向かってくる。合戦じゃないんだから、大声で突撃したらまずいでしょうに、ってわからないか。
4人の取り巻き達は2体のゴブリン達と戦い始めた。4対2、しかも2がゴブリンだ。普通ならこちらの圧勝のはずだが、4体の方はプライドだけで実力が伴っていない取り巻きだ。何より連携が取れていない。一方ゴブリン達は2体とはいえしっかりと連携が取れているので互角どころかゴブリン達の方が少しだけ優位な状況だ。取り巻きはもう1人いるが、こいつはしっかりとアッシュのそばに控えていたし、落ち着いていた。
「アッシュ様、あいつらがゴブリンを押さえている間に魔法の準備を。大丈夫です。私がアッシュ様をお守りしますので。」
落ち着きを取り戻したアッシュは頷くと、詠唱を始めた。よし、しっかりと詠唱ができているな。では、こちらに向かって来ているゴブリン達は私達でどうにかするとしますか。一応、1人だけ落ち着いている取り巻きに声をかけておいた。名前? そんなん知らん。初めて見るような人だし、紹介されてもいないし。
「アッシュを頼むぞ。あいつらが大声で突撃しやがったから、周りからゴブリンが来始めた。そいつらは私達で倒すから、お前達はあの2体を頼むぞ。」
「ハッ、アイス様お願いします!!」
とりあえず、2体なら何とかなるだろう。では、残りはいつも通りで片付けますかね。
「さてと、ゴブリン達が迫ってきております。2体はアッシュ達に任せて残りを我々が倒そうと思います。ゴブリン達は3方向からやってきておりますので、丁度いいですね。では、マーブル隊員は、右側から迫ってきているゴブリン達をお願いします。ジェミニ隊員は左側です。私は後方を担当します。ライム隊員は万が一に備えてアッシュとその傍らに控えている取り巻きの護衛です。」
3人とも敬礼で応える。うん、いつ見ても可愛いな。
私が号令をかけると、マーブル達はゴブリン達に向かって行った。私も後方に向かって進みゴブリン達と遭遇した。とはいっても、相手はゴブリン、私達では相手にならない。あっさりと倒して討伐の証である左耳を取って最初にいた地点に戻った。マーブル達はすでに戻っていて、それぞれが倒した耳もしっかりと持ってきていた。流石は私の猫達だ、こういうことには慣れていたので言われなくてもしてくれる。
戻ってきた後、アッシュ達はまだ2体のゴブリンと戦っていた。アッシュのそばにいた1人が的確にタイミングを教えてアッシュの火魔法をサポートしていた。ここまで戦ってようやく4人の取り巻き達も連携するようになって、2体のゴブリン達は劣勢になってきた。
そんなこんなで待つこと30分、ようやく最初のゴブリン2体を倒して取り巻きの4人は戻ってきた。4人はあちこちに傷を負っており疲労困憊の状況だった。アッシュもここまで魔法を撃ったことなどなかったであろう、こちらも疲労困憊だった。そんな状態でもアッシュは嬉しそうに話してきた。
「あ、兄上、な、何とか倒せました。こ、これが、じ、実際の狩り、なの、です、ね。」
「そうだよ、アッシュ。しかも、一番弱いと言われているゴブリンでも、こんなに大変なんだよ。」
「は、はい。ゴ、ゴブリンよりも、つ、強い、魔物を、あ、兄上、達は、いつも、倒して、いたん、です、ね。」
「そういうこと。だけど、アッシュ達、まずは初勝利おめでとう! でも、今の自分たちの強さがある程度わかったかな?」
「はい、私がどれだけ甘えていたのか実感しました。それと、兄上の言っていた、威力よりもまずは命中させること、というのを身をもって知りました。」
「うん、それらが理解できれば、今日ここに来た甲斐があるというもの。では、これ以上は厳しいだろうからトリニトに戻りますか。」
これで取り巻き達も自分たちがどの程度の強さか身をもって知っただろう、これを期に鍛錬に励んでくれればと思う。
ライムに周りを綺麗にしてもらいつつ、取り巻き達の体力の回復を待っていると、先程のゴブリンの臭いに釣られてオークが5体ほど向かって来ていた。それを話すと、アッシュ達は顔を青くした。
「ゴブリン2体でもこれだけ倒すのが大変だったのに、オーク? む、無理だ、、、、。」
取り巻き達が絶望の淵に立たされていたが、逆にマーブル達は喜んでいた。そりゃあ、肉がやってきたんだものな。オーク達はマーブルとジェミニに任せると、2人は張り切ってオーク達に向かって行ったが、あっという間にオーク達は仕留められ、マーブル達はオークの死体をこちらに運んできてくれた。
圧倒的な力の差を見せつけられ、アッシュと取り巻き達は呆然としていたが、マーブル達がオークの死体をこちらに持ってきたのは別に、力を見せつけるためでは無い。そう、肉と素材に分けて収納するためだ。5体のオークを確認すると、ライムがそれぞれのオークの血を吸い上げる。それが終わるとジェミニが次々にオークを肉と内臓と素材に分ける。肉と素材は収納したが、内臓に関しては再びライムの出番だ。ライムが内臓を次々に綺麗にしていって、これで処理が完了だ。これらを収納に入れていく。
「あ、兄上はいつも、こういったことを?」
「そうだよ、こうして肉や内臓などの可食部位と素材に分けて、肉や内臓は食事を作っている店に、素材は冒険者ギルドにそれぞれ卸してお金を稼いでいるんだ。」
「これで、トリニトの町が栄えていったのですね。」
「そう、素材は冒険者ギルドが周りに売って、肉や内臓は各食堂や屋台の人達が加工して食べ物を売って、お金が回っていき、みんなが儲けた一部を税としてこちらはもらっているんだ。みんなが儲ければ儲けるほど入ってくる税が多くなるんだよ。その税で私達の生活が成り立っているんだ。だから大事にしなければならないのは商業ギルドではなくて、トリニトの住民なんだよ。アッシュよ、わかるかな?」
「何となくわかったような気がします。これからは心を入れ替えて住民を大切にするように考えていきたいと思います。」
「うん、それでいい。アッシュはトリニトの次期領主なんだから、住民を大事にすることを忘れないで欲しい。」
「はい! しかし、いいのですか? 兄上がトリニトを継がなくても、、、。」
「ははっ、私は元々継ぐ気はないから、アッシュがいい意味でやる気を見せてくれるのは嬉しい。」
そんな話をしつつ、昼食の時間になったので、折角だから先程狩ったオーク肉と内臓を使って料理した。といっても、オークのステーキと内臓を煮たスープ(塩味、しかもそこまで煮込んでいない)だけどね。それでもアッシュ達はもの凄く喜んで食べていた。
「兄上! オークの肉ってこんなにも美味しいものだったのですね!! 今まで私達は何をやっていたのだろうと思うと恥ずかしく思います。」
アッシュがそう言うと、取り巻き達も頷いていた。
「今日は、ゴブリンしか倒せませんでしたが、兄上が王都に行くまでには、私がオークを倒して兄上に食べて頂きます!!」
「そうか、それは楽しみにしているよ。だから、アッシュもしっかりと訓練をしないといけないぞ。」
「はい!!」
「アイス様、ついでと言っては何ですが、私達も鍛えて頂けませんか?」
「ん? どうした? 落ちこぼれに教えを請うなんて、一体何があった?」
嫌みでもなく、本当に不思議に思っていると、取り巻き達は一斉に土下座してきた。
「申し訳ありませんでした!! 私達は何も知らずに、奥方様を始めとした方達の言葉を鵜呑みにして過ごしておりました故、アイス様がここまで強いとは思っておりませんでした! 何を今更とは思われるかもしれませんが、なにとぞ私達も強くして下さい!!」
「まあ、やる気になってくれたのなら、それはそれでいいことだから、引き受けるよ。」
「あ、ありがとうございます!!」
そんなこんなで、アッシュの他に5人も鍛錬に加わることになった。
トリニトに戻ってアッシュ達と分かれた後、のこったオークをいつも通り卸して、順番が逆になったがトリニトの散策をして今日は終わった。
アッシュ達の強さも何となく把握したから、それを基に訓練していきますか。明日からブートキャンプの開幕だ。
「アイス様、アッシュ様がお見えです。」
「了解。ここに案内して。」
「承知しました。」
ウルヴがアッシュ達をここに連れてくる。
「兄上、おはようございます。今日はよろしくお願いします。」
「おはよう、アッシュ。ところで朝食は済ませたのか?」
「いえ、朝食も含めて兄上と行動しようと思いまして。」
「そうか。折角来たんだから一緒に食べるか?」
「いいのですか?」
「いいも何も、そのお金はどこから出ている? もう少し考えてお金を使うと良い。自分で稼げるようになったら稼ぎの中で思いっきり贅沢するといいさ。」
「はい、では、お言葉に甘えて頂きます。」
「お前らも朝食はまだであろう。一緒に食べていくといい。」
「ハッ、有り難く頂戴致します。」
うーん、昨日までのアッシュを見ると考えられないほど変わっているな。取り巻き連中は口調ではああ言っているが、私を侮蔑しているのは見て取れるが、アッシュ本人は変わったな。これが本心か面従腹背かはわからないけど、別にいいか。
いくら改築したとはいえ、客人が来ることは全く想定していなかったので、全員で食べられる広い場所がないから、ウルヴ達は各自の部屋で食べてもらい、アッシュ達に食堂で食べてもらうことにした。私とマーブル達はもちろん私達の部屋で食べることにした。アッシュは何か言っていたが、取り巻き達は私達と食事したがらないだろうし、どうせ一緒に食べても美味しくないからね。
朝食が終わり、片付けを済ませたが、本来なら昼食前までは領内を散策して昼食後に狩りをしようかと考えていたが、予想以上に早く来てしまったので予定を変更して早速狩りにでかけることにした。とはいえ、アッシュもそうだが、取り巻き達も恐らくゴブリンもまともに倒せないだろうから、早めに出発しておかないと良い獲物を狩れないというのもあった。
トリニトを出て街道に入り少し南下してから西へと向かう。トリトン帝国の西にある森はかなり広大らしく森の広さ自体がトリトン帝国よりも広いらしい。これはアマさん情報だから間違いないだろう。で、この森を取り囲むように各国が存在している感じらしい。ひょっとしたらねぐらもこの森の中に存在するのではなかろうかと思うけど、転送魔法で移動できるのでそれは後回しでも問題ない。今はゴブリンだ。
森に到着した。入る前にアッシュ達の装備を確認する。大丈夫そうだな。小説によっては、森に狩りに向かうのに動きやすい格好ではなく鎧姿で行こうとするお馬鹿、いや、人達も一部存在するらしい、タンク職ではないにも関わらずだ。取り巻き達は私の装備が普段着と変わりないのを訝しんだが、落ちこぼれだからと納得したらしい。私はいつもこの格好でいろいろな魔物を狩っているんですがね。一応こちらでも魔物探知はしておくにしても、万が一があると面倒なので、マーブルにも探知魔法をかけてもらい、ついでにゴブリンのいそうな場所に案内してもらうことにした。
マーブルは定位置である私の左肩の上から方向を示す。その方向に従って私達は進む。アッシュは不安になったのだろう、私に聞いてきた。
「兄上、私達は何と戦うのでしょうか?」
「アッシュ達にはまずゴブリンと戦ってもらい、力の使い方などを確認させてもらう。で、そのゴブリンがいる場所までマーブルに案内してもらっているんだ。」
「なるほど。兄上の飼っている猫は凄いんですね。」
「マーブルだけじゃないよ。ジェミニもライムも凄いんだよ。とはいっても、実際に見てみないとわからないだろうから、そこは気にしなくてもいい。それよりも自分のことを心配した方がいいよ。ここは屋敷では無いから何が起こるかわからない。」
アッシュは半分納得したようなしていないような表情でとりあえずは頷いていた。まあ、実際に体験しないとわからないだろうからそれは仕方がないかな。
森を進むこと30分、マーブルが私の肩をテシテシと叩いた。ゴブリンの気配を探知したらしい。それにしてもいい肉球の感触。マーブルの指し示した方向に集中して探知をかけ直すと、確かに魔物の気配を探知した。なるほど、この気配がゴブリンね。あちこちにゴブリンの気配を感じることが出来た。それぞれが3から5体の集まりだった。よし、近くにいるのは3体か、練習には丁度いいかな。
「アッシュ、前方300メートル辺りにゴブリンを探知した。数は3体だ。心の準備をしておくように。」
「はい、兄上。でも、そんな遠くからゴブリンがいることがわかるのですか?」
「うん、わかるよ。でも、アッシュ達はそんなことよりも戦闘の準備をしておけ。」
アッシュの指示で取り巻き達も戦闘の準備をしていく。それにしても準備がもたついている。本当に狩る気があるのかねえ。ゴブリン達に近づいていくが、まだゴブリン達は気付いていない。ここら辺で仕掛けるか。
「アッシュよ。ここからゴブリン達を攻撃するから、魔法を使って攻撃してみなさい。一番大事なのは落ち着いて行動することだ。次に大事なのはしっかり魔法を命中させることだ。威力はその次だ。いいな。」
「はい、では、行きます。『炎よ、我が敵を討て、ファイアーボール!!』」
アッシュは詠唱を終えると杖をゴブリンに向けて杖先から火の玉が出てきた。火の玉は見事に1体のゴブリンに命中する。しっかりと頭部に命中させてゴブリンの悲鳴がでたが、しばらくして火の玉を喰らったゴブリンは倒れた。
「やった! ゴブリンを倒したぞ!!」
「落ち着け! ゴブリンはまだ2体残っているぞ! お前達は何をしている! アッシュの護衛じゃ無いのか!」
ゴブリンを倒せたことに喜びを露わにするアッシュとその取り巻き達。倒せたといってもゴブリンはまだ2体残っている。その2体のゴブリン達はこちらに気付いて向かってくる。アッシュは再び魔法を放とうとするが、焦りが強く詠唱ができない。取り巻き達も我を忘れて2体のゴブリンに突撃していく。しかも、恐怖を吹き飛ばすかのような大声で突撃をするものだから、周りにいるゴブリン達がそれに気付いてこちらに向かってくる。合戦じゃないんだから、大声で突撃したらまずいでしょうに、ってわからないか。
4人の取り巻き達は2体のゴブリン達と戦い始めた。4対2、しかも2がゴブリンだ。普通ならこちらの圧勝のはずだが、4体の方はプライドだけで実力が伴っていない取り巻きだ。何より連携が取れていない。一方ゴブリン達は2体とはいえしっかりと連携が取れているので互角どころかゴブリン達の方が少しだけ優位な状況だ。取り巻きはもう1人いるが、こいつはしっかりとアッシュのそばに控えていたし、落ち着いていた。
「アッシュ様、あいつらがゴブリンを押さえている間に魔法の準備を。大丈夫です。私がアッシュ様をお守りしますので。」
落ち着きを取り戻したアッシュは頷くと、詠唱を始めた。よし、しっかりと詠唱ができているな。では、こちらに向かって来ているゴブリン達は私達でどうにかするとしますか。一応、1人だけ落ち着いている取り巻きに声をかけておいた。名前? そんなん知らん。初めて見るような人だし、紹介されてもいないし。
「アッシュを頼むぞ。あいつらが大声で突撃しやがったから、周りからゴブリンが来始めた。そいつらは私達で倒すから、お前達はあの2体を頼むぞ。」
「ハッ、アイス様お願いします!!」
とりあえず、2体なら何とかなるだろう。では、残りはいつも通りで片付けますかね。
「さてと、ゴブリン達が迫ってきております。2体はアッシュ達に任せて残りを我々が倒そうと思います。ゴブリン達は3方向からやってきておりますので、丁度いいですね。では、マーブル隊員は、右側から迫ってきているゴブリン達をお願いします。ジェミニ隊員は左側です。私は後方を担当します。ライム隊員は万が一に備えてアッシュとその傍らに控えている取り巻きの護衛です。」
3人とも敬礼で応える。うん、いつ見ても可愛いな。
私が号令をかけると、マーブル達はゴブリン達に向かって行った。私も後方に向かって進みゴブリン達と遭遇した。とはいっても、相手はゴブリン、私達では相手にならない。あっさりと倒して討伐の証である左耳を取って最初にいた地点に戻った。マーブル達はすでに戻っていて、それぞれが倒した耳もしっかりと持ってきていた。流石は私の猫達だ、こういうことには慣れていたので言われなくてもしてくれる。
戻ってきた後、アッシュ達はまだ2体のゴブリンと戦っていた。アッシュのそばにいた1人が的確にタイミングを教えてアッシュの火魔法をサポートしていた。ここまで戦ってようやく4人の取り巻き達も連携するようになって、2体のゴブリン達は劣勢になってきた。
そんなこんなで待つこと30分、ようやく最初のゴブリン2体を倒して取り巻きの4人は戻ってきた。4人はあちこちに傷を負っており疲労困憊の状況だった。アッシュもここまで魔法を撃ったことなどなかったであろう、こちらも疲労困憊だった。そんな状態でもアッシュは嬉しそうに話してきた。
「あ、兄上、な、何とか倒せました。こ、これが、じ、実際の狩り、なの、です、ね。」
「そうだよ、アッシュ。しかも、一番弱いと言われているゴブリンでも、こんなに大変なんだよ。」
「は、はい。ゴ、ゴブリンよりも、つ、強い、魔物を、あ、兄上、達は、いつも、倒して、いたん、です、ね。」
「そういうこと。だけど、アッシュ達、まずは初勝利おめでとう! でも、今の自分たちの強さがある程度わかったかな?」
「はい、私がどれだけ甘えていたのか実感しました。それと、兄上の言っていた、威力よりもまずは命中させること、というのを身をもって知りました。」
「うん、それらが理解できれば、今日ここに来た甲斐があるというもの。では、これ以上は厳しいだろうからトリニトに戻りますか。」
これで取り巻き達も自分たちがどの程度の強さか身をもって知っただろう、これを期に鍛錬に励んでくれればと思う。
ライムに周りを綺麗にしてもらいつつ、取り巻き達の体力の回復を待っていると、先程のゴブリンの臭いに釣られてオークが5体ほど向かって来ていた。それを話すと、アッシュ達は顔を青くした。
「ゴブリン2体でもこれだけ倒すのが大変だったのに、オーク? む、無理だ、、、、。」
取り巻き達が絶望の淵に立たされていたが、逆にマーブル達は喜んでいた。そりゃあ、肉がやってきたんだものな。オーク達はマーブルとジェミニに任せると、2人は張り切ってオーク達に向かって行ったが、あっという間にオーク達は仕留められ、マーブル達はオークの死体をこちらに運んできてくれた。
圧倒的な力の差を見せつけられ、アッシュと取り巻き達は呆然としていたが、マーブル達がオークの死体をこちらに持ってきたのは別に、力を見せつけるためでは無い。そう、肉と素材に分けて収納するためだ。5体のオークを確認すると、ライムがそれぞれのオークの血を吸い上げる。それが終わるとジェミニが次々にオークを肉と内臓と素材に分ける。肉と素材は収納したが、内臓に関しては再びライムの出番だ。ライムが内臓を次々に綺麗にしていって、これで処理が完了だ。これらを収納に入れていく。
「あ、兄上はいつも、こういったことを?」
「そうだよ、こうして肉や内臓などの可食部位と素材に分けて、肉や内臓は食事を作っている店に、素材は冒険者ギルドにそれぞれ卸してお金を稼いでいるんだ。」
「これで、トリニトの町が栄えていったのですね。」
「そう、素材は冒険者ギルドが周りに売って、肉や内臓は各食堂や屋台の人達が加工して食べ物を売って、お金が回っていき、みんなが儲けた一部を税としてこちらはもらっているんだ。みんなが儲ければ儲けるほど入ってくる税が多くなるんだよ。その税で私達の生活が成り立っているんだ。だから大事にしなければならないのは商業ギルドではなくて、トリニトの住民なんだよ。アッシュよ、わかるかな?」
「何となくわかったような気がします。これからは心を入れ替えて住民を大切にするように考えていきたいと思います。」
「うん、それでいい。アッシュはトリニトの次期領主なんだから、住民を大事にすることを忘れないで欲しい。」
「はい! しかし、いいのですか? 兄上がトリニトを継がなくても、、、。」
「ははっ、私は元々継ぐ気はないから、アッシュがいい意味でやる気を見せてくれるのは嬉しい。」
そんな話をしつつ、昼食の時間になったので、折角だから先程狩ったオーク肉と内臓を使って料理した。といっても、オークのステーキと内臓を煮たスープ(塩味、しかもそこまで煮込んでいない)だけどね。それでもアッシュ達はもの凄く喜んで食べていた。
「兄上! オークの肉ってこんなにも美味しいものだったのですね!! 今まで私達は何をやっていたのだろうと思うと恥ずかしく思います。」
アッシュがそう言うと、取り巻き達も頷いていた。
「今日は、ゴブリンしか倒せませんでしたが、兄上が王都に行くまでには、私がオークを倒して兄上に食べて頂きます!!」
「そうか、それは楽しみにしているよ。だから、アッシュもしっかりと訓練をしないといけないぞ。」
「はい!!」
「アイス様、ついでと言っては何ですが、私達も鍛えて頂けませんか?」
「ん? どうした? 落ちこぼれに教えを請うなんて、一体何があった?」
嫌みでもなく、本当に不思議に思っていると、取り巻き達は一斉に土下座してきた。
「申し訳ありませんでした!! 私達は何も知らずに、奥方様を始めとした方達の言葉を鵜呑みにして過ごしておりました故、アイス様がここまで強いとは思っておりませんでした! 何を今更とは思われるかもしれませんが、なにとぞ私達も強くして下さい!!」
「まあ、やる気になってくれたのなら、それはそれでいいことだから、引き受けるよ。」
「あ、ありがとうございます!!」
そんなこんなで、アッシュの他に5人も鍛錬に加わることになった。
トリニトに戻ってアッシュ達と分かれた後、のこったオークをいつも通り卸して、順番が逆になったがトリニトの散策をして今日は終わった。
アッシュ達の強さも何となく把握したから、それを基に訓練していきますか。明日からブートキャンプの開幕だ。
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「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
実家が没落したので、こうなったら落ちるところまで落ちてやります。
黒蜜きな粉
ファンタジー
ある日を境にタニヤの生活は変わってしまった。
実家は爵位を剥奪され、領地を没収された。
父は刑死、それにショックを受けた母は自ら命を絶った。
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いい加減にこんな生活はうんざりだと思っていたときに出会ったのは、商人だと名乗る怪しい者たちだった。
騙されていたって構わない。
もう金に困ることなくお腹いっぱい食べられるなら、裏家業だろうがなんでもやってやる。
タニヤは商人の元へ転職することを決意する。
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