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第9話 さてと、これから試し乗りです。私じゃないけど。
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離れ小屋を拡張してもらうのはいいのだけど、一つ大事なことを忘れていた。それはトイレである。前世では自分のことだけ考えていればよかったので、小についてはそこら辺に、大については凍らせて埋めておけば事足りたので敢えて話には出さなかったのだが、今回はウルヴ、アイン、ラヒラスという何物にも代えがたい配下が得られたのだ。風呂や洗濯についてはどうにか目処がついたものの正直すっかり忘れていた。というわけで魔導具の出番だ。魔導具というこではラヒラスに製作を頼むと、ラヒラス自身もそれには気付いていたが、具体的にどうすればいいかわからなかったらしい。まあ、トリニトにしか住んでいないとそうなるよね。
というわけで、臭いを消す魔導具と大を処理する魔導具の2種類について話し合った。細かい内容については、他の人の意見も参考にしようということで、ウルヴとアインにも参加してもらった。具体的な会話については割愛する。話し合った結果、大については肥料になるように圧力と火でどうにかするように決まった。自分のやつを肥料にすることに多少の抵抗があった、私だけは。他の3人は特に抵抗がなかったので、そうすることにした。圧力を強めて硝石にしようかとも考えたが、魔法のある世界に火薬を持ち込むのはどうかと思ったので、硝石案は却下となった。私魔法使えないけどね(泣)。
これらの魔導具は順番を飛ばして最優先で作成することにした。最終的には臭いを消す魔導具と、大などを肥料にする魔導具、完成した肥料を貯め込む魔導具の3つが作られることになった。その3種類ならラヒラスも可能、とのことだったので、早速頑張ってもらうことにした。これらの魔導具はそれほど魔力を必要としないらしく、昨日手に入れた魔樹の魔石で300年は余裕とのこと。こいつ、どれだけ凄いんだよ、と改めて思った。
こうしている間にも、拡張工事は順調に行われており、2日で3人の部屋とトイレが完成した。3人の部屋が完成すると、ラヒラスは早速部屋に籠もって作成に集中することになった。籠もるとはいえ、小説などでよくある、籠もったらほとんど部屋から出てこなくなる、というわけではなく、ある程度目処が立つと部屋から出てきて、ウルヴの配合してくれたお茶を飲んだりするし、食事の時間になると普通に部屋から出て一緒に食事を摂る。ちなみに同じお茶でも好みが分かれているところが面白い。しかもそれに対応して見事に配分して用意できるウルヴも侮れない。
そんなこんなで、木の馬のような魔導具、名付けて木騎馬の試作第一号が完成した。魔力を流す量によって速度が変わるらしいが、実際に試してみないと性能はわからないとのことだったので、早速試し乗りをしてみることにした。ちなみに私には魔力がないから乗れないが、こちらは水術で足下と接地面を凍らせて滑って移動することが可能なので速度的には大丈夫だろう。まあ、一騎しかできあがっていないので、私は乗らないのだけど。一応、マーブル達と一緒に乗ることによって彼らの魔力でどうにかできるが。
出来上がった木騎馬は一旦収納にしまっておく。というか、トリニト領内では乗る予定はない。トリニトを出てから木騎馬を出してウルヴに乗ってもらう。魔力を流すと木騎馬が動き出した。
「アイス様、これは凄い乗り物ですね。魔力を流すと思い通りに動いてくれます。」
「おお、それはよかった。これでウルヴも戦闘で活躍できそうだね。」
「はい、これで活躍して見せますよ。しかし、木で出来ているから正直不安な面もありましたが、素材もいいのでしょうが、これはかなり頑丈に作られておりますね。」
ウルヴが言ったように、素材はいいものを使っている。ブラックオークだ。ブラックオークは木材にすると普通の木の色より少し濃い感じの色になる。ダークトレントは少し白っぽいと、種類によって色は微妙に異なっていたりする。しかし、この木騎馬は漆黒ともいうべき黒い色をしている。ラヒラス、実は知っているんじゃなかろうか? やはりあの知謀は侮れない。敢えて言わなかったが、ウルヴは平たくいうと、超イケメンで金髪のロン毛だ。こんな出で立ちをしていて、木騎馬も黒と来たら、鎧も黒くしないといけない。これは様式美だ。これは現実的には起こりそうもないが、万が一アニメ化という運びになったら間違いなくテーマ曲が流れることは想像に難くない。もちろん『デッデッデデデデッ、カーン』から始まるあの曲である。様式美を知らない方達は荘厳な曲に痺れ、知っている方達は笑いを禁じ得ない状態になるのは確定的だ。
話がそれてしまったが、今ここにいるのは、私とマーブル達とウルヴのみである。アインは大工さんの手伝いを頼んでおり、ラヒラスは木騎馬の量産を頼んでいる。もちろん、材料の木材と魔石はたっぷりと置いてきてあるので張り切って作成していることだろう。とりあえず、まずは平原を走ってもらう。ついでに魔物がいたら試しに戦ってもらうつもりだ。もちろん武器は馬上槍を持たせている。ウルヴって剣術スキルないんだよね。槍の形はギャ○を思い浮かべて欲しい。あるいは攻撃を喰らうと鎧が全部脱げてしまう某人気アクションゲームの初期投擲武器だと思ってくれればいいと思う。そのうち、ラヒラスに投擲できるように魔導具を作ってもらいましょう。
木騎馬の性能だけど、予想以上に凄かった。ウルヴの魔力がまだ低かったり、慣れていない部分もあるけども、私の水術での加速移動についてきていた。これならいろんな任務をこなせるだろう。おあつらえ向きにブルホーンという牛の魔物を探知できたので、そちらに向かう。数は15くらいかな。昨日の魔樹討伐で私のレベルも結構上がったので、探知できる範囲が広がっていた。では、作戦準備といきましょうか。
「今、前方1キロくらいにブルホーンという牛の魔物を探知しました。数は15くらいです。ブルホーンですが、DランクかCランクといった魔物です。牛ですので牛肉が手に入りますが、他にも皮や角が冒険者ギルドで売れると思いますので、皆さん張り切って狩りましょう。」
「ミャッ!」
「キュウ(牛肉? 頑張って狩るです)!」
マーブルとジェミニはやる気だが、ウルヴは及び腰だった。
「ア、アイス様、ブルホーンってCかDランクの魔物ですよね? 私では歯が立ちませんよ!」
「いや、ウルヴ、確かに通常では歯が立たない。けど、今の君は木騎馬に乗っている状態だから問題なく狩れるよ。君が乗っている馬を信じて試しに攻撃してみて欲しい。」
「アイス様がそこまで仰るならやってみますが、無理そうなら退却しますがよろしいですか?」
「うん、それでいいよ。無理して怪我したり命を落とす必要はないからね。とりあえず木騎馬に乗った状態で戦う訓練だと思って挑んで欲しい。」
「わかりました。では、アイス様、指示お願いします。」
よし、やる気になってくれたか。実際木騎馬に乗っていないのであれば話は別だが、木騎馬に乗っている状態であれば、あの程度楽勝に勝てるはず。これで自信を付けて欲しいと思う。ちなみにアインだったら真っ向勝負でいけそうな気がする。
「では、今回の作戦ですが、牛肉をいただくのはもちろんですが、ウルヴの騎乗戦闘訓練が第一にありますので、その点をしっかりと認識して下さい。では、ウルヴ隊員には先陣を切ってもらいます。とりあえず最初の一体に集中してくれればいいです。マーブル隊員とジェミニ隊員はウルヴ隊員の補助をお願いします。ライム隊員はブルホーンを倒した後に重要な任務が待っておりますので待機です。私は氷の塊で周りを狙っていきます。」
「ミャッ!」
「キュウ(了解です!)!」
「ピー!」
「ハッ!」
全員が敬礼でもって応えた。魔物の群れはどんどん近づいてくる。近づいてくるたびにウルヴは震えが止まらなくなってきていた。
「ウルヴ、落ち着いて、まずはとにかく一撃を与えることに専念して。馬を信じてこう動いて欲しいと思えば馬は応えてくれるから。周りは大丈夫だから、自分が攻撃したい一体に集中してくれればいいから。」
「アイス様、、、、。本来なら御身を護る立場であるのに申し訳ありません。」
「そう思っているのなら、ここでしっかりと戦闘に慣れていって欲しい。ここから君の本来の強さが発揮される場面なのだから。最悪自分が生き残るにはどうすればいいか考えて欲しい。」
いろいろ思うところがあったのだろう、震えていた体であったが、震えが止まり、目には強い決意が表れていた。よし、間に合った、これならいけそうだな。いや、問題は私の方かな。香木以外に使い途がありそうもなかったダークアルラウネの木片からスリングショットを作ってみたので、それを今回試してみる。さて、上手くいくだろうか。
ブルホーンの群れを視認できたので、気合を入れ直す。
「では、作戦開始!」
私の合図と共に、騎乗のウルヴが速度を上げて突っ込んでいった。今回は無理そうだけど、次回以降で慣れてきたら突撃前に「イクゾー」というかけ声は欲しいな。茶化す気はそれほどないけど、そう言いたくなるほどその姿は様になっていた。私も負けていられない。作り出した氷の塊をダークアルラウネの木片から作ったスリングショット(これ以降は略して『アルラウネスリング』、さらに略して『アルスリ』としますか)にセットして外側にいるブルホーンを狙って撃っていく。普通にぶつけていても倒せないので急所っぽい眉間を狙っていく。投擲スキルも順調に上がっているみたいで、面白いように命中する。ただ、運良く一撃で倒せたのは一体のみで、残りは怯ませることに成功したけど、倒すまでには至らなかった。
マーブルとジェミニはウルヴの近くにいるブルホーンを攻撃していた。マーブルは風魔法で、ジェミニは自慢の刃を使ってあっさりとブルホーンの首をはねていく。ウルヴは一瞬驚いていたが、気を取り直すと先頭にいるブルホーンめがけて槍を突きつける。とはいえ、正面から突いては自分にも甚大な被害を受けることを理解していたのか、突進するブルホーンを見事に躱して側頭部を狙って槍を突き出していた。戦闘にいた牛は横に吹き飛ばされた上にあっさりと仕留められた。ウルヴはそれを気にすることなく次々にすれ違った牛めがけて槍を突いていった。
ウルヴとマーブルとジェミニはブルホーンの群れに向かって行ったが、私はもちろん遠くから攻撃するようにしていた。だって、飛び道具で攻撃するのに必要以上に近づいてどうするの? と、それは置いておいて、先程命名したアルスリを使った投擲だけど、自分の腕で投げるのよりも飛距離が3倍くらい伸びていたし、命中率もかなりよかった。あとはどう威力を上げていくかだけど、塊を大きくするのも一つの手ではあるが、ここは塊ではなくつららのようなもので投擲しようと思い、実際にそうしてみた。つららの形状は通常の形とドリル型の2種類で試してみた。通常の形もドリル型の形も狙い通りに眉間に刺さったが、通常の形では刺さりきらずに動きが止まる程度だったが、ドリル型は奥まで到達してしっかりと仕留めることができていた。しかしドリル型については射程距離が多少短い感じがした。具体的には通常型の3分の2、つまり普通に投げるより2倍の射程がある感じかな。これは状況によって使い分けますか。ちなみに塊のままだと4倍くらいの射程だった。
ウルヴはブルホーンを自分で倒したことにより誇らしげな表情でこちらに戻ってきた。
「アイス様の仰ったとおり、自分でどうにかできました。自分でも確かな手応えを感じました。」
「うんうん、ウルヴ、初討伐おめでとう! これからもこの調子で頑張って欲しい。」
「ハッ! これからも精進します!!」
そんなこんなでブルホーンの群れを倒す。結果はウルヴ3体、マーブルとジェミニが5体ずつだった。ちなみに私は2体でした(泣)。倒した後は早速ライムがまず血を吸い取りブルホーンを綺麗にする。その後でジェミニがブルホーンを部位毎に解体していく。解体が終わるとライムが内蔵などの部位を綺麗にしていく。血の臭いが強いので、マーブルが風魔法で吹き飛ばす。処理が終わった部位を私が空間収納に入れる。戦闘を含めてここまで30分くらいだった。その手際の良さを見ていたウルヴは唖然とする。
「アイス様のお供達って凄いんですね、、、。戦闘もそうでしたが。」
「うん、マーブル達は私の自慢の猫達だよ。」
マーブル達は嬉しそうに私に駆け寄ってきたのでモフモフする。うーん、至福。
「まあ、ウルヴ達も私の自慢の配下だ。これからも頼むよ。」
「はい! これからも精進して、さらにアイス様が自慢できるようになります!」
その言葉を聞いて、私はウルヴをスカウトしてよかったと改めて思った。また、愛想を尽かされないようにこちらも精進しなくてはと思いながらトリニトに戻った。もちろん木騎馬の訓練も兼ねているから速度をしっかり上げてね。
というわけで、臭いを消す魔導具と大を処理する魔導具の2種類について話し合った。細かい内容については、他の人の意見も参考にしようということで、ウルヴとアインにも参加してもらった。具体的な会話については割愛する。話し合った結果、大については肥料になるように圧力と火でどうにかするように決まった。自分のやつを肥料にすることに多少の抵抗があった、私だけは。他の3人は特に抵抗がなかったので、そうすることにした。圧力を強めて硝石にしようかとも考えたが、魔法のある世界に火薬を持ち込むのはどうかと思ったので、硝石案は却下となった。私魔法使えないけどね(泣)。
これらの魔導具は順番を飛ばして最優先で作成することにした。最終的には臭いを消す魔導具と、大などを肥料にする魔導具、完成した肥料を貯め込む魔導具の3つが作られることになった。その3種類ならラヒラスも可能、とのことだったので、早速頑張ってもらうことにした。これらの魔導具はそれほど魔力を必要としないらしく、昨日手に入れた魔樹の魔石で300年は余裕とのこと。こいつ、どれだけ凄いんだよ、と改めて思った。
こうしている間にも、拡張工事は順調に行われており、2日で3人の部屋とトイレが完成した。3人の部屋が完成すると、ラヒラスは早速部屋に籠もって作成に集中することになった。籠もるとはいえ、小説などでよくある、籠もったらほとんど部屋から出てこなくなる、というわけではなく、ある程度目処が立つと部屋から出てきて、ウルヴの配合してくれたお茶を飲んだりするし、食事の時間になると普通に部屋から出て一緒に食事を摂る。ちなみに同じお茶でも好みが分かれているところが面白い。しかもそれに対応して見事に配分して用意できるウルヴも侮れない。
そんなこんなで、木の馬のような魔導具、名付けて木騎馬の試作第一号が完成した。魔力を流す量によって速度が変わるらしいが、実際に試してみないと性能はわからないとのことだったので、早速試し乗りをしてみることにした。ちなみに私には魔力がないから乗れないが、こちらは水術で足下と接地面を凍らせて滑って移動することが可能なので速度的には大丈夫だろう。まあ、一騎しかできあがっていないので、私は乗らないのだけど。一応、マーブル達と一緒に乗ることによって彼らの魔力でどうにかできるが。
出来上がった木騎馬は一旦収納にしまっておく。というか、トリニト領内では乗る予定はない。トリニトを出てから木騎馬を出してウルヴに乗ってもらう。魔力を流すと木騎馬が動き出した。
「アイス様、これは凄い乗り物ですね。魔力を流すと思い通りに動いてくれます。」
「おお、それはよかった。これでウルヴも戦闘で活躍できそうだね。」
「はい、これで活躍して見せますよ。しかし、木で出来ているから正直不安な面もありましたが、素材もいいのでしょうが、これはかなり頑丈に作られておりますね。」
ウルヴが言ったように、素材はいいものを使っている。ブラックオークだ。ブラックオークは木材にすると普通の木の色より少し濃い感じの色になる。ダークトレントは少し白っぽいと、種類によって色は微妙に異なっていたりする。しかし、この木騎馬は漆黒ともいうべき黒い色をしている。ラヒラス、実は知っているんじゃなかろうか? やはりあの知謀は侮れない。敢えて言わなかったが、ウルヴは平たくいうと、超イケメンで金髪のロン毛だ。こんな出で立ちをしていて、木騎馬も黒と来たら、鎧も黒くしないといけない。これは様式美だ。これは現実的には起こりそうもないが、万が一アニメ化という運びになったら間違いなくテーマ曲が流れることは想像に難くない。もちろん『デッデッデデデデッ、カーン』から始まるあの曲である。様式美を知らない方達は荘厳な曲に痺れ、知っている方達は笑いを禁じ得ない状態になるのは確定的だ。
話がそれてしまったが、今ここにいるのは、私とマーブル達とウルヴのみである。アインは大工さんの手伝いを頼んでおり、ラヒラスは木騎馬の量産を頼んでいる。もちろん、材料の木材と魔石はたっぷりと置いてきてあるので張り切って作成していることだろう。とりあえず、まずは平原を走ってもらう。ついでに魔物がいたら試しに戦ってもらうつもりだ。もちろん武器は馬上槍を持たせている。ウルヴって剣術スキルないんだよね。槍の形はギャ○を思い浮かべて欲しい。あるいは攻撃を喰らうと鎧が全部脱げてしまう某人気アクションゲームの初期投擲武器だと思ってくれればいいと思う。そのうち、ラヒラスに投擲できるように魔導具を作ってもらいましょう。
木騎馬の性能だけど、予想以上に凄かった。ウルヴの魔力がまだ低かったり、慣れていない部分もあるけども、私の水術での加速移動についてきていた。これならいろんな任務をこなせるだろう。おあつらえ向きにブルホーンという牛の魔物を探知できたので、そちらに向かう。数は15くらいかな。昨日の魔樹討伐で私のレベルも結構上がったので、探知できる範囲が広がっていた。では、作戦準備といきましょうか。
「今、前方1キロくらいにブルホーンという牛の魔物を探知しました。数は15くらいです。ブルホーンですが、DランクかCランクといった魔物です。牛ですので牛肉が手に入りますが、他にも皮や角が冒険者ギルドで売れると思いますので、皆さん張り切って狩りましょう。」
「ミャッ!」
「キュウ(牛肉? 頑張って狩るです)!」
マーブルとジェミニはやる気だが、ウルヴは及び腰だった。
「ア、アイス様、ブルホーンってCかDランクの魔物ですよね? 私では歯が立ちませんよ!」
「いや、ウルヴ、確かに通常では歯が立たない。けど、今の君は木騎馬に乗っている状態だから問題なく狩れるよ。君が乗っている馬を信じて試しに攻撃してみて欲しい。」
「アイス様がそこまで仰るならやってみますが、無理そうなら退却しますがよろしいですか?」
「うん、それでいいよ。無理して怪我したり命を落とす必要はないからね。とりあえず木騎馬に乗った状態で戦う訓練だと思って挑んで欲しい。」
「わかりました。では、アイス様、指示お願いします。」
よし、やる気になってくれたか。実際木騎馬に乗っていないのであれば話は別だが、木騎馬に乗っている状態であれば、あの程度楽勝に勝てるはず。これで自信を付けて欲しいと思う。ちなみにアインだったら真っ向勝負でいけそうな気がする。
「では、今回の作戦ですが、牛肉をいただくのはもちろんですが、ウルヴの騎乗戦闘訓練が第一にありますので、その点をしっかりと認識して下さい。では、ウルヴ隊員には先陣を切ってもらいます。とりあえず最初の一体に集中してくれればいいです。マーブル隊員とジェミニ隊員はウルヴ隊員の補助をお願いします。ライム隊員はブルホーンを倒した後に重要な任務が待っておりますので待機です。私は氷の塊で周りを狙っていきます。」
「ミャッ!」
「キュウ(了解です!)!」
「ピー!」
「ハッ!」
全員が敬礼でもって応えた。魔物の群れはどんどん近づいてくる。近づいてくるたびにウルヴは震えが止まらなくなってきていた。
「ウルヴ、落ち着いて、まずはとにかく一撃を与えることに専念して。馬を信じてこう動いて欲しいと思えば馬は応えてくれるから。周りは大丈夫だから、自分が攻撃したい一体に集中してくれればいいから。」
「アイス様、、、、。本来なら御身を護る立場であるのに申し訳ありません。」
「そう思っているのなら、ここでしっかりと戦闘に慣れていって欲しい。ここから君の本来の強さが発揮される場面なのだから。最悪自分が生き残るにはどうすればいいか考えて欲しい。」
いろいろ思うところがあったのだろう、震えていた体であったが、震えが止まり、目には強い決意が表れていた。よし、間に合った、これならいけそうだな。いや、問題は私の方かな。香木以外に使い途がありそうもなかったダークアルラウネの木片からスリングショットを作ってみたので、それを今回試してみる。さて、上手くいくだろうか。
ブルホーンの群れを視認できたので、気合を入れ直す。
「では、作戦開始!」
私の合図と共に、騎乗のウルヴが速度を上げて突っ込んでいった。今回は無理そうだけど、次回以降で慣れてきたら突撃前に「イクゾー」というかけ声は欲しいな。茶化す気はそれほどないけど、そう言いたくなるほどその姿は様になっていた。私も負けていられない。作り出した氷の塊をダークアルラウネの木片から作ったスリングショット(これ以降は略して『アルラウネスリング』、さらに略して『アルスリ』としますか)にセットして外側にいるブルホーンを狙って撃っていく。普通にぶつけていても倒せないので急所っぽい眉間を狙っていく。投擲スキルも順調に上がっているみたいで、面白いように命中する。ただ、運良く一撃で倒せたのは一体のみで、残りは怯ませることに成功したけど、倒すまでには至らなかった。
マーブルとジェミニはウルヴの近くにいるブルホーンを攻撃していた。マーブルは風魔法で、ジェミニは自慢の刃を使ってあっさりとブルホーンの首をはねていく。ウルヴは一瞬驚いていたが、気を取り直すと先頭にいるブルホーンめがけて槍を突きつける。とはいえ、正面から突いては自分にも甚大な被害を受けることを理解していたのか、突進するブルホーンを見事に躱して側頭部を狙って槍を突き出していた。戦闘にいた牛は横に吹き飛ばされた上にあっさりと仕留められた。ウルヴはそれを気にすることなく次々にすれ違った牛めがけて槍を突いていった。
ウルヴとマーブルとジェミニはブルホーンの群れに向かって行ったが、私はもちろん遠くから攻撃するようにしていた。だって、飛び道具で攻撃するのに必要以上に近づいてどうするの? と、それは置いておいて、先程命名したアルスリを使った投擲だけど、自分の腕で投げるのよりも飛距離が3倍くらい伸びていたし、命中率もかなりよかった。あとはどう威力を上げていくかだけど、塊を大きくするのも一つの手ではあるが、ここは塊ではなくつららのようなもので投擲しようと思い、実際にそうしてみた。つららの形状は通常の形とドリル型の2種類で試してみた。通常の形もドリル型の形も狙い通りに眉間に刺さったが、通常の形では刺さりきらずに動きが止まる程度だったが、ドリル型は奥まで到達してしっかりと仕留めることができていた。しかしドリル型については射程距離が多少短い感じがした。具体的には通常型の3分の2、つまり普通に投げるより2倍の射程がある感じかな。これは状況によって使い分けますか。ちなみに塊のままだと4倍くらいの射程だった。
ウルヴはブルホーンを自分で倒したことにより誇らしげな表情でこちらに戻ってきた。
「アイス様の仰ったとおり、自分でどうにかできました。自分でも確かな手応えを感じました。」
「うんうん、ウルヴ、初討伐おめでとう! これからもこの調子で頑張って欲しい。」
「ハッ! これからも精進します!!」
そんなこんなでブルホーンの群れを倒す。結果はウルヴ3体、マーブルとジェミニが5体ずつだった。ちなみに私は2体でした(泣)。倒した後は早速ライムがまず血を吸い取りブルホーンを綺麗にする。その後でジェミニがブルホーンを部位毎に解体していく。解体が終わるとライムが内蔵などの部位を綺麗にしていく。血の臭いが強いので、マーブルが風魔法で吹き飛ばす。処理が終わった部位を私が空間収納に入れる。戦闘を含めてここまで30分くらいだった。その手際の良さを見ていたウルヴは唖然とする。
「アイス様のお供達って凄いんですね、、、。戦闘もそうでしたが。」
「うん、マーブル達は私の自慢の猫達だよ。」
マーブル達は嬉しそうに私に駆け寄ってきたのでモフモフする。うーん、至福。
「まあ、ウルヴ達も私の自慢の配下だ。これからも頼むよ。」
「はい! これからも精進して、さらにアイス様が自慢できるようになります!」
その言葉を聞いて、私はウルヴをスカウトしてよかったと改めて思った。また、愛想を尽かされないようにこちらも精進しなくてはと思いながらトリニトに戻った。もちろん木騎馬の訓練も兼ねているから速度をしっかり上げてね。
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