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第3章 日々勉強

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 さすがに陰核を噛めとは言われなかったが、噛んだりもするのだと聞いて、イヴォンヌは驚いた。

「膣口の内側に位置している輪状の組織が処女膜。マリーベルにはもうないが、通常、腟口を囲むように位置している。処女膜は最初の性交で破れることで出血する場合が多いが、稀に膜が柔軟で破れないこともある。だから、出血しなかったと言って、処女ではないと責めるのは、間違っている」
「そういえば、同じ娼婦でもそんな子がいて、そのせいで恋人に責られたって言っていたわ」
「それは世間一般の常識だから、そう思っても仕方がないが、可哀想なことだ」 
「それは男も悪いと思う。俺の客は殆どがもう処女は捨てた人達だが、一方的な性行為を押し付けて、自分だけ満足して終わりという奴が多い。自分たちが最低な性行為しか出来ないのを棚に上げて、相手を責める奴がどんなに多いか」

 エイドリアンも男なのに、同じ男性に対して憤慨する。

「だからあんたのような男に、奥様達は大金を払って貢ぐんだろ。満たされない欲求を求めて」
「まあ、そう言うことだな」
「ざっと、外性器と呼ばれるものはこんな感じだ。内性器は流石に見るのは無理だけど、全体で1つの経路を形成している。性交時には精子が放出され、出産時に胎児が体外に出てくる通り道の腟。その奥に子宮がある。精子はこの経路を上っていき、卵子と出会って子が出来る」
「へえ、そんな仕組みなんだ。初めて知った」
「ただ、どこかに異常があれば、子供は出来ない。残念ながら子供が出来ないと、大抵は女性が悪いと考える者が多い」
「男は特に、認めたがらないからな」

 それに対し、マリーベルも大いに同意する。

「まあ、知識はこれくらいにして、ほら、イビィ、今度はマリーベルをいかせてみなさい」
「え、わ、私がですか?」
「そうだよ。さっきエイドリアンをいかせたみたいに、マリーベルもいかせられたら、本物だ」
「ふふ、面白そうね。私はエイドリアンみたいに単純じゃないわよ」
「俺が単純だと?」

 マリーベルの挑発に、エイドリアンがむっとする。

「だって、素人の女の子に触られただけでいくなんて、童貞でもあるまいし、単純じゃない?」
「面白い。おいイビィ、マリーベルをヒンヒン啼かせて、善がらせてやれ」
「え、そ、そんな…」

 エイドリアンにはっばをかけられ、イヴォンヌは困った顔で助けを求めてアネカを振り返った。
 実地訓練なのだから、マリーベルに触れるのは構わないが、必ずいかせられるかは自信はない。
 
「これは勝負じゃなく、真面目な仕事なんだけど」

 アネカが腕を組んで、ふうっと溜め息を吐く。
 
「もし出来たら面白いね。頑張りなさいイビィ。口でやり方は教えるから」
「え、ええええ」
 
 この展開を何とかしてくれると思ったアネカも、面白がって親指を立てて、イヴォンヌを励ます。

「そ、そんなぁ、む、無理です。さっきのはたまたまで…」
「おい、俺の名誉が掛かっているんだ。たまたまなんて言葉で片付けないでほしい」
「まったく、大人げないわねぇ、素直に負けを認めなさい」
「う、うるさい。俺はいかせることはあっても、自分がいくなんてことは滅多にないんだ。ただの性欲の塊じゃなく、矜持を持ってやっている」
「まあまあ、そうムキにならないで、エイドリアンが優秀だってことは、私がよく知っている。でもこういうのは、相性もあるから、エイドリアンとイビィの馬があったか、たまたまか、それとも…まあ、どちらにしろ、イビィの勉強のためには、やる必要があるんだから、さあ、イビィ」

 三人の変なやる気に満ちた目に、イヴォンヌは泣きそうになりながら、マリーベルの方に向き直った。

「わかり…ました。でも、出来なくても、がっかりしないでくださいね」

 昔から彼女は出来て当たり前と、変な期待を寄せられてきた。その結果、うまく出来ないと落胆され、なぜ出来ないのだと責められた。
 もう二度とあんな思いはしたくない。

「わかっている。出来なければ出来なかったでいい。いかせるのは結局、その人の相棒なんだから。まずは本で読んだ通りにやってみなさい」

 取り敢えず出来なくても構わないと、言質を取れた。イヴォンヌは、大きく深呼吸して、指を曲げたり伸ばしたりを数回繰り返した。

「えっと、では、よろしくお願いします」
「いつでもどうぞ」

 ゴクリと唾を呑んで、イヴォンヌはマリーベルの陰部に手を伸ばした。 
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