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59 和音の選択
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和音は考えて、母の生命保険を元手に投資をすることに決めた。
もちろん投資についてはずぶの素人なので、そこは燕に協力してもらった。
そしてそれによって得た利益を奨学金という形で、無償援助することにした。
奨学金を受ける学生の選考と、支払いなど諸々の運営は、代理人を立てた。
奨学金の名称は「和奨学金」
母の「和美」と「和音」に共通する「和」を使った。
奨学金を受ける学生の選考は学力検査と、学校での生活態度、そして「将来の夢」というタイトルで小論文を提出してもらい、成績上位者に支援する。
そして第1期生のみ、その候補生をこちらから選抜した。
その中には和音の異母弟、城咲良介もいた。
直接の援助はしないし、会うつもりもなかった。
自分のことを彼がどう思っているか知らないし、そもそも和音のことを知っているかもわからない。
それに、父と浮気した末子供を妊娠した女性とも、会いたいとも思わない。
ただ、和音も駆け出しのひよっことは言え子を持つ母親。
親が子を思う気持ちはわからなくはない。
父が和音を愛してくれなかったとしても、和音まで彼と同じになりたくはない。
生まれてくる子に恥じない人間になりたいと思う。
それにもし本当に彼が父の言うように優秀であるなら、無事に獲得できるだろう。
和音の所に毎年候補生の応募状況や、選考結果、奨学生の成績状況などを送ってもらうことにした。
高校を卒業してすぐに働き出した和音だった。
大学に行って何をしたいということもなかったということもあるが、和音の高校卒業後の人生に、働くということ以外の選択肢はなかった。
母は最後までそのことを気にしていた。
気にしていないと和音が何度言っても、心のどこかで申し訳なく思っていたのを和音は知っている。
和音一人ならもちろん出来なかった。
燕がいて、彼に任せれば間違いないと確信があったから出来たことだ。
「母上の保険金大事に利用するよ。和音から任されたからには、絶対に損はさせない」
「よろしくお願いします」
そのために和音たちは日本を離れる時期を予定より一週間遅らせた。
和音が奨学金のことについて話すと、それを聞いた燕の対応は素早かった。
母の保険金を元手に投資を始め、速攻で奨学金の団体を立ち上げた。
「え、嘘・・・」
投資を始めてから一週間後、和音は燕の膝の上に座り、彼が見せたタブレットの画面を見て唖然とした。
そこには投資のために開設した口座の残高が表示されていた。
「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん・・・」
桁の数は一千万円の八桁から既に十桁になっていた。
「一千万円がなんで一週間で十億になっているの?」
千円が一万円とかのレベルではない。一体どんな魔法を使ったらこうなるのだろう。
元手が和音の母の生命保険金だから、和音のお金と言えるかも知れないが、桁が多すぎてもはや和音のお金に思えない。
でもこれで、上限を気にせずたくさんの人に支援できる。
「私の投資歴が何年だと思っている」
燕は今年五百歳。投資歴も百年は優に超えているのだろう。でも、年数をこなしているからと言っても、才能がなければこうはならない。
「君の夫は有能だということだ。惚れ直したか」
「はい。私の夫って凄い人だって改めて思いました」
本当に純粋に和音はそう思った。
「・・・・やばい。痺れた」
「え、何が?」
「今の和音の口から『夫』って・・それって、私のことだよな」
「そ、それはもちろん。私の夫は、燕だけです」
何気なく口から出た言葉だった。いつの間にか自分は彼のことを「夫」として受け入れていたことに気づく。
「嬉しいよ、和音。和音の口から『夫』という言葉を聞けて」
すかさず燕が唇を寄せてくる。最初軽く唇が触れるだけのキスが次第に深くなる。
背中を支えられ、キスをしたまま和音はソファに横たえられた。
この一週間、二人きりになるといつもこんな風だ。
和音は燕の手によってグズグズに蕩けて、すっかり骨抜きだ。
燕もそんな和音の反応を見て、極上の笑みを浮かべて色っぽく見つめてくる。
そんな燕の瞳に見つめられ、和音の肌が粟立つと同時に背筋を駆け上がる快感に身悶えする。
「そんな目で見ないで」
「そんな目って、どんな目?」
「何だか視線だけで犯されそう」
気のせいかも知れないが、燕に見つめられるだけで、丸裸にされている気になる。
「よくわかっているじゃないか」
冗談で言ったつもりだったが、あっさりと肯定されて和音は言葉を失った。
もちろん投資についてはずぶの素人なので、そこは燕に協力してもらった。
そしてそれによって得た利益を奨学金という形で、無償援助することにした。
奨学金を受ける学生の選考と、支払いなど諸々の運営は、代理人を立てた。
奨学金の名称は「和奨学金」
母の「和美」と「和音」に共通する「和」を使った。
奨学金を受ける学生の選考は学力検査と、学校での生活態度、そして「将来の夢」というタイトルで小論文を提出してもらい、成績上位者に支援する。
そして第1期生のみ、その候補生をこちらから選抜した。
その中には和音の異母弟、城咲良介もいた。
直接の援助はしないし、会うつもりもなかった。
自分のことを彼がどう思っているか知らないし、そもそも和音のことを知っているかもわからない。
それに、父と浮気した末子供を妊娠した女性とも、会いたいとも思わない。
ただ、和音も駆け出しのひよっことは言え子を持つ母親。
親が子を思う気持ちはわからなくはない。
父が和音を愛してくれなかったとしても、和音まで彼と同じになりたくはない。
生まれてくる子に恥じない人間になりたいと思う。
それにもし本当に彼が父の言うように優秀であるなら、無事に獲得できるだろう。
和音の所に毎年候補生の応募状況や、選考結果、奨学生の成績状況などを送ってもらうことにした。
高校を卒業してすぐに働き出した和音だった。
大学に行って何をしたいということもなかったということもあるが、和音の高校卒業後の人生に、働くということ以外の選択肢はなかった。
母は最後までそのことを気にしていた。
気にしていないと和音が何度言っても、心のどこかで申し訳なく思っていたのを和音は知っている。
和音一人ならもちろん出来なかった。
燕がいて、彼に任せれば間違いないと確信があったから出来たことだ。
「母上の保険金大事に利用するよ。和音から任されたからには、絶対に損はさせない」
「よろしくお願いします」
そのために和音たちは日本を離れる時期を予定より一週間遅らせた。
和音が奨学金のことについて話すと、それを聞いた燕の対応は素早かった。
母の保険金を元手に投資を始め、速攻で奨学金の団体を立ち上げた。
「え、嘘・・・」
投資を始めてから一週間後、和音は燕の膝の上に座り、彼が見せたタブレットの画面を見て唖然とした。
そこには投資のために開設した口座の残高が表示されていた。
「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん・・・」
桁の数は一千万円の八桁から既に十桁になっていた。
「一千万円がなんで一週間で十億になっているの?」
千円が一万円とかのレベルではない。一体どんな魔法を使ったらこうなるのだろう。
元手が和音の母の生命保険金だから、和音のお金と言えるかも知れないが、桁が多すぎてもはや和音のお金に思えない。
でもこれで、上限を気にせずたくさんの人に支援できる。
「私の投資歴が何年だと思っている」
燕は今年五百歳。投資歴も百年は優に超えているのだろう。でも、年数をこなしているからと言っても、才能がなければこうはならない。
「君の夫は有能だということだ。惚れ直したか」
「はい。私の夫って凄い人だって改めて思いました」
本当に純粋に和音はそう思った。
「・・・・やばい。痺れた」
「え、何が?」
「今の和音の口から『夫』って・・それって、私のことだよな」
「そ、それはもちろん。私の夫は、燕だけです」
何気なく口から出た言葉だった。いつの間にか自分は彼のことを「夫」として受け入れていたことに気づく。
「嬉しいよ、和音。和音の口から『夫』という言葉を聞けて」
すかさず燕が唇を寄せてくる。最初軽く唇が触れるだけのキスが次第に深くなる。
背中を支えられ、キスをしたまま和音はソファに横たえられた。
この一週間、二人きりになるといつもこんな風だ。
和音は燕の手によってグズグズに蕩けて、すっかり骨抜きだ。
燕もそんな和音の反応を見て、極上の笑みを浮かべて色っぽく見つめてくる。
そんな燕の瞳に見つめられ、和音の肌が粟立つと同時に背筋を駆け上がる快感に身悶えする。
「そんな目で見ないで」
「そんな目って、どんな目?」
「何だか視線だけで犯されそう」
気のせいかも知れないが、燕に見つめられるだけで、丸裸にされている気になる。
「よくわかっているじゃないか」
冗談で言ったつもりだったが、あっさりと肯定されて和音は言葉を失った。
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