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53 美神
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エイラが和音達を案内したのは、一番奥の部屋だった。
「こちらでお召し替えください」
銭湯の男湯女湯のように別々の入り口があり、和音は左側に案内された。
「お召し替え?」
「お手伝いいたします」
「頼む。じゃあ和音、また後で」
何をするのかわからないまま、和音は燕と別れ、エイラと共に中へ入った。
「あの、エイラさん」
「エイラです。和音様、今着ているものをすべてお脱ぎください」
「え、ぜ、全部?」
「はい」
驚いて和音は自分の胸の前で腕を交差し、エイラから一歩引いた。
「は、裸になるんですか?」
「いえ、これを身に着けてください」
彼女は戸惑う和音の前に白い柔らかい布地のガウンのようなものを取り出した。
裸ではいことにホッとしたが、次の言葉を聞いてまた驚いた。
「下着もすべてお脱ぎください」
「し、下着を?」
下着も脱がないといけないことを考えると、エイラの持っている服の生地の薄さでは、大事な部分がすべて透けて見えてしまいそうだ。
「ほ、他にないんですか?」
「これを着られないとなると、裸しかありませんが…」
目の前の薄いシーツのような服を着るか裸にか。和音に選択の余地はなかった。
「これ、丈が短くありませんか?」
彼女の手伝いを丁寧に断り、自分で着たのはいいが、胸の辺りもV字に切り込みが入り、袖もなく、ギリシャ神話に出てくる女性の衣装に似ているが、丈は脚の付け根ぎりぎりまで短い。
「それが普通です」
恥ずかしがる和音のことなどまるで気にしてせず、エイラは和音の手を取って入ってきた入り口と違う扉から出た。
「和音」
扉の先は少し広い空間になっていて、燕が和音と同じような素材の服を着て立っていた。
彼は和音が現れるとさっと近づき、エイラから和音の手を引き継いだ。
燕は長い髪を頭の高い位置でひとつにまとめ、その姿はまさにギリシャ神話の神の様だった。
ここまで肌を露出している彼を見るのは初めてで、いつも服の隙間から見える鱗がキラキラとはっきり見えた。
そして抱きしめられたりしていたので、そうだろうとは思っていたが、想像していたとおり、マッチョではないものの、綺麗に均整の取れた体をしている。
和音は燕のそんな姿に見惚れるとともに、自分の方も同じように見られていることに気づき、途端に彼の視線が気になった。
「み、見ないで」
背中を向け、更に胸を隠した。
「どうして?」
「だ、だって、恥ずかしい」
「恥ずかしい? エイラ、すまないが、後は私がするので、君は外してくれ」
「畏まりました」
燕に言われてエイラがいなくなった。
「エイラには外してもらった。これで恥ずかしくないだろう?」
「え?」
「ここには私だけだ。さあ」
燕が和音の肩を掴み自分の方を向けさせる。
「え、燕、何か勘違いしていない?」
「勘違い?」
「私が恥ずかしいと言ったのは、エイラさんにじゃなくて…燕に言ったのだけど」
「私? どうして?」
「どうしてって…そんな、美神みたいな燕の前で裸に近い格好で恥ずかしいに決まっているでしょ」
「それは、私のことを異性として意識してくれているということか?」
「あ、当たり前でしょ。え、燕は…最初から…お、男の人」
まじまじと見つめられて和音はだんだん声が小さくなった。
頭から爪先まで、穴の空くほど見つめられてどうしてもじもじしてしまう。
「あ、あの、それで、こんな格好をして、何をするの? お腹の子のためだって言ってたけど」
話題を変えようと、ここに来た本来の目的について尋ねた。
この格好と子供のことと、どんな関係があるのか。
「ここはトゥールラーク人の療養所だと言ったね」
「ええ」
「ここには、トゥールラーク人の生気を補うのに適した浴場がある」
「浴場? お風呂?」
「少し違うな。ここはトゥールラーク人に取って必要な生気を供給するところ。点滴のようなものがある」
「点滴? あの、注射して入れる?」
「の、ようなものだ。とりあえず見ればわかる」
「え、あ、」
燕は和音を縦抱きにすると、そのまま真っすぐに歩いて行き、途中で地下へと続く階段を下りていった。
「こちらでお召し替えください」
銭湯の男湯女湯のように別々の入り口があり、和音は左側に案内された。
「お召し替え?」
「お手伝いいたします」
「頼む。じゃあ和音、また後で」
何をするのかわからないまま、和音は燕と別れ、エイラと共に中へ入った。
「あの、エイラさん」
「エイラです。和音様、今着ているものをすべてお脱ぎください」
「え、ぜ、全部?」
「はい」
驚いて和音は自分の胸の前で腕を交差し、エイラから一歩引いた。
「は、裸になるんですか?」
「いえ、これを身に着けてください」
彼女は戸惑う和音の前に白い柔らかい布地のガウンのようなものを取り出した。
裸ではいことにホッとしたが、次の言葉を聞いてまた驚いた。
「下着もすべてお脱ぎください」
「し、下着を?」
下着も脱がないといけないことを考えると、エイラの持っている服の生地の薄さでは、大事な部分がすべて透けて見えてしまいそうだ。
「ほ、他にないんですか?」
「これを着られないとなると、裸しかありませんが…」
目の前の薄いシーツのような服を着るか裸にか。和音に選択の余地はなかった。
「これ、丈が短くありませんか?」
彼女の手伝いを丁寧に断り、自分で着たのはいいが、胸の辺りもV字に切り込みが入り、袖もなく、ギリシャ神話に出てくる女性の衣装に似ているが、丈は脚の付け根ぎりぎりまで短い。
「それが普通です」
恥ずかしがる和音のことなどまるで気にしてせず、エイラは和音の手を取って入ってきた入り口と違う扉から出た。
「和音」
扉の先は少し広い空間になっていて、燕が和音と同じような素材の服を着て立っていた。
彼は和音が現れるとさっと近づき、エイラから和音の手を引き継いだ。
燕は長い髪を頭の高い位置でひとつにまとめ、その姿はまさにギリシャ神話の神の様だった。
ここまで肌を露出している彼を見るのは初めてで、いつも服の隙間から見える鱗がキラキラとはっきり見えた。
そして抱きしめられたりしていたので、そうだろうとは思っていたが、想像していたとおり、マッチョではないものの、綺麗に均整の取れた体をしている。
和音は燕のそんな姿に見惚れるとともに、自分の方も同じように見られていることに気づき、途端に彼の視線が気になった。
「み、見ないで」
背中を向け、更に胸を隠した。
「どうして?」
「だ、だって、恥ずかしい」
「恥ずかしい? エイラ、すまないが、後は私がするので、君は外してくれ」
「畏まりました」
燕に言われてエイラがいなくなった。
「エイラには外してもらった。これで恥ずかしくないだろう?」
「え?」
「ここには私だけだ。さあ」
燕が和音の肩を掴み自分の方を向けさせる。
「え、燕、何か勘違いしていない?」
「勘違い?」
「私が恥ずかしいと言ったのは、エイラさんにじゃなくて…燕に言ったのだけど」
「私? どうして?」
「どうしてって…そんな、美神みたいな燕の前で裸に近い格好で恥ずかしいに決まっているでしょ」
「それは、私のことを異性として意識してくれているということか?」
「あ、当たり前でしょ。え、燕は…最初から…お、男の人」
まじまじと見つめられて和音はだんだん声が小さくなった。
頭から爪先まで、穴の空くほど見つめられてどうしてもじもじしてしまう。
「あ、あの、それで、こんな格好をして、何をするの? お腹の子のためだって言ってたけど」
話題を変えようと、ここに来た本来の目的について尋ねた。
この格好と子供のことと、どんな関係があるのか。
「ここはトゥールラーク人の療養所だと言ったね」
「ええ」
「ここには、トゥールラーク人の生気を補うのに適した浴場がある」
「浴場? お風呂?」
「少し違うな。ここはトゥールラーク人に取って必要な生気を供給するところ。点滴のようなものがある」
「点滴? あの、注射して入れる?」
「の、ようなものだ。とりあえず見ればわかる」
「え、あ、」
燕は和音を縦抱きにすると、そのまま真っすぐに歩いて行き、途中で地下へと続く階段を下りていった。
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