【完結】ご懐妊から始まる溺愛〜お相手は宇宙人

七夜かなた

文字の大きさ
上 下
24 / 61

24 母の遺影

しおりを挟む
「一階が共有スペース、二階が客間、そして三階が燕様と和音様の居住スペースです」

階段を昇りながら、ルーラが大体の間取りを説明していく。
一階は台所や応接間、ダイニングルーム、ボールルーム、ゲームルームなどがある。
二階は客間でそれぞれ名前が付いていて、客のランクに合わせて使い分けられているという。
そして三階がプライベートルームで、主寝室を含めていくつか部屋があるそうだ。

「三階全部がですか?」
「はい。と言っても、今までは燕様だけでしたかから、東側の棟のみお使いで、それ以外は使われておりませんでした。これからは、ご夫婦としてお過ごしになる部屋を挟んで西側は和音様がお使いください」
「夫婦…え、ここ全部?」

案内された西棟には部屋が三つあった。そして中央には夫婦が使う部屋が更に三つ。反対側の東棟にも同じ数だけ部屋があるという。
もちろん、それぞれにバスルームもあるという。

「お子様が生まれたら子供部屋はあちらになります」
「もう子供部屋?」
「確かにお生まれになるまで三年はありますからね。でも必要になるのは間違いありませんから」

和音は自分のお腹を見て、そこに宿っているだろう子供のことを考える。
病院で診察を受けて依頼今のところ体調は安定している。
朝に夕にバイタルをチェックしてもらっているが、特に異常もない。
時折あの診断は本当だったのかと思うくらい何もない。

燕が和音に親切にしてくれるのも、キスしたりして甘やかしてくれるのも、すべて和音が彼の子を身ごもっているから。
可愛いとか、好きだと言ってくれるのも、和音に魅力があると思うほど自惚れてはいない。

「さあ、こちらがお部屋です」

そんな和音の不安に気づかす、ルーラは部屋の扉を開けて、中へ和音を案内した。

「わあ…」

続けて中に入った和音は、部屋の中を見て驚いた。
屋敷の大きさから想定して、部屋の広さも予想はできていたが、角部屋になっているそこは、明るい日差しが降り注いでいた。
開け放たれた窓からは優しい風が吹いて、カーテンを揺らしている。
天井には証明と一体型になったシーリングファンがゆっくりと周り、薄い花柄の壁紙に影を作っている。
花柄の布張りの付いたソファや光沢の美しいマホガニーの机、その上には色とりどりの花が生けられた花瓶が置かれている。
そして壁際の棚の上には、和音の母の遺影と位牌、そして骨壷が置かれていた。ご丁寧に小さな仏壇の中に収まっている。

「母の…」
「はい。二日前に届きました。作法がわからず、あそこに置かせていただきました」

母の笑顔が和音に向けられている。
遺影の写真は、和音が高校を卒業した時に校門の前で一緒に撮ったものを使った。
バタバタしていて、じっくり考える時間もなかったが、母が亡くなってまだ四十九日も済ませていないうちに、地球の裏側まで来てしまった事実に、今更ながら驚かされる。

「ありがとうございます」
「いえ、私共は燕様に指示された通りにさせていただいたまでです」
「でも、部屋に遺骨なんて、困りますよね」

和音に取っては唯一の母だったが、彼らにとっては会ったこともない他人の遺骨を置くなど、気持ち悪く思われても仕方がない。

「お気を遣われる必要はございません。燕様は私達の主。燕様には和音様の望みは出来得る限り叶えよと仰せつかっております。それに、お気持ちはわかります。それだけお母様を大切に思っていらっしゃる和音様は素晴らしいと思います」

母と近い年のルーラにそう言われ、和音は面映ゆい思いとともに、燕がそこまで気を遣ってくれていることに、先程のモヤモヤした気持ちが解消された。

「ここは居間です。あちらが寝室でその奥に浴室があります」

窓と反対側にある扉を指し示す。
ルーラに付いて奥へ向かうと、そこにはダブルベッドがあり、四隅に柱があって、上からカーテンが取り付けられたベッドがあった。

(あれって天蓋付きベッド? いわゆるプリンセスベッドってやつだ)

「水回りは最新のものに取り替えております。家具などはお気に召さなければ新しいのと交換せよと、燕様から仰せつかっております」
「そんな必要は…とても素敵です」
「それはようございました。何しろ急なことで、色々準備不足はお許しください」
「いえ、色々ありがとうございます。母のことまで…」
「これからはここが和音様の家です。私達は和音様に仕える者です。いちいちお礼は不要でございます」
「でも…」
「それより、移動でお疲れでしょう。入浴の用意が出来ております。お風呂に浸かってゆっくりされてはいかがでしょうか」

ルーラが奥の方へ歩いていくのに付いていく。
扉を開けるとそこは部屋と言ってもいいくらい広い洗面所になっていた。
大きな鏡が壁に取り付けられていて、何人も並んで使えるくらい広い洗面台があり、その奥のすりガラス向こうは浴室になっていた。
浴槽は昔母と行ったスーパー銭湯で見たことがある、ジャグジーだった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

処理中です...