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18 ニューヨーク観光

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宝石商は和音の指のサイズを測って帰った。
ちなみに燕は以前からのお得意様なので、彼のサイズはすでに知っているそうだ。
出来上がりは三日後だということで、三日後、指輪を受け取ってから燕の家へ行くことになった。

宝石商が帰ると、ちょうどお昼ということで、部屋に昼食が運ばれてきた。
 
いつの間に頼んでいたのか、ルームサービスで運ばれてきた昼食は、サラダとクラブハウスサンドだったが、ボリュームが日本と違った。
それほどお腹が空いていなかった和音は、ほんの少し食べてお腹がいっぱいになった。
燕に心配されたが、桃田と坂口から問題ないという診断をもらって燕も納得したようだった。

「体調に問題なければ、さっき言っていた自由の女神を見に行きますか?」
「本当ですか!」
「ええ、手配が出来たと先程連絡がありました」

初めての海外での観光に和音は浮かれた。
テレビなどで良く見かけた自由の女神像。
鎌倉の大仏くらいしか大きな像を見たことがないので、どれほどの大きさだろうかと期待に胸を膨らませた。
しかし、和音はふとあることが気になった。

「あの、一応確認しますけど、燕の能力で行くとかではないですよね?」

初めて彼に会った時に、彼が能力の一部であるテレポートを使ったのを思い出して尋ねた。

「まさか、そんなことをしたら、たちまち大騒ぎです」
「そ、そうですよね。変なことを聞いてすみません」
「いいえ」

などと安心していたのだが…

「え、あの…これで、行くのですか?」

和音が護衛に付き添われて燕とホテルを出て連れて行かれたのは、とあるビルの屋上で、そこにはヘリコプターが待機していた。

「ええ」

てっきり車が何かで行って観光するものと思っていた和音は驚いた。

「これで空からニューヨークを回ります。気に入りませんか? あ、それとも高い所は苦手だった?」

和音の戸惑いを彼は高所恐怖症と思ったようだ。

「あ、いえ…その、気に入らないとかではなく、ヘリコプターなんて想像していなかったので。それに、得意じゃないけど怖くはありません。東京タワーからの景色を見ても足はすくみませんでしたから」
「そうか、良かった。先に確認するべきでしたね。自分が大丈夫だから、和音も大丈夫だと思っていました。すみません。こういう観光も人気があるそうで、コンシェルジュが勧めてくれたので、勝手に手配してしまいました。歩いて回るのもいいですが、人も多いし和音はなんと言っても普通の体ではないんです」

ニューヨークと聞いて自由の女神しか思いつかなかったので、ヘリ観光が人気があるのかどうかわからなかったが、せっかく燕が手配してくれたのだし、ここは彼の好意に甘えようと思った。

念の為坂口も同乗し、ヘッドホンを付けてシートベルトを装着した。
燕はパイロットと護衛の人たちと何やら打ち合わせをしている。

「ヘリコプターで観光なんて、私も初めてです。貴重な体験をさせていただけてありがとうございます」

坂口看護師はいたくご満悦でニコニコと言った。

「やっぱり、すごいんですか?」
「よくわかりませんが、普通の人も日本よりは免許を取っている人も多いと思います。何しろ広大なところですからね。ヘリ観光も、オプションで利用される人もいるみたいですから。私の友人もいつか乗りたいと言っていました」
「そうなんですね」
「和音様は幸運ですね。初めてでこんな特別な体験が出来るんですから」
「そう思いますか?」
「ええ、羨ましいですわ。何より和音様のことを大事に思われているのがわかります。素敵な旦那様ですね。ハンサムでスタイルもいいし、眼福ですわ」

和音はちらりとこちらに背を向けている燕を見た。

長い銀髪が陽の光を受けて光り輝いている。
何度見てもエルフにしか見えないが、先祖帰りの鱗は竜人に近い。
体型は地球人と変わらないが、背も高くスタイルもいい。
坂口の言うように、確かにかっこいい。
彼と比べれば和音は全然美人でもないし、平凡過ぎる。
遺伝子レベルでは彼の子どもを産むのに適しているらしいが、それ以外はまったく見劣りすると言っていいレベルだ。
なのに、彼はそんな和音を口説こうとしてくる。
和音を甘やかし、何よりも彼女とお腹の子どもが優先事項だと言ってくれる。
トゥールラーク人と地球の歴史との関わりなど、驚かされてばかりだし、彼と出会ってから、彼が和音にしてくれたことも、何もかも想定外なものだったが、和音にはとても優しい。
視線を感じたのか、燕が振り向いてこちらを見た。
和音が自分の方を見ているのがわかると、燕はふっと顔を綻ばせ、こちらへ向かって歩いてきた。

「間もなく出発します。体調はどうですか?」
「はい、大丈夫です」

和音の隣に乗り込み、彼もヘッドホンをつける。操縦士も乗り込んできて、エンジンが掛かった。

「所要一時間もかからないと思いますが、気分が悪くなったらすぐに言ってください」

和音の手に触れ指を絡めて燕が言った。
まさか乗っている間ずっと握っているつもりなのだろうか、と和音は焦った。

(やだ、手汗かいたらどうしよう)

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