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幕間〜二人何があっても

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レオポルドと再会したのは夏の始め。
それから暑い夏を通り越して今はもう秋になりつつある。

今年の夏は本当に色々あった。

私の人生の中で一番悲しい出来事は母の死だった。

近しい人の死なんて、人生でまったく経験しない人なんていない。

でも悲しみの真っ只中に嵌ると、この世でこんなに不幸なのは自分だけだと思いこんでしまう。

ただ私の場合はそうはいかなかった。

父を奮い立たせ、トレイシーとルディを慰め、家を切り盛りしなければならなかった。

大変なこともあったけど、目まぐるしく日々は過ぎた。

レオポルドとの出会いと再会は私の人生に新しい風を運んできた。

その風は幸せだけを運んできたわけではない。
竜巻のように色々なものを巻き込んで、それらは私にぶつかってきた。

他の人だったらもっとうまく避けられたのだろうか。

飛んできた障害物にぶつからず、レオポルドをこんなふうに落ち込ませることもなかったのでは。

レオポルドに気の利いたことは何ひとつ言えなかった自分の至らなさを後悔した。

「確かに怖い目にもあいました。でも、それ以上にレオポルドと出会えなかった人生は考えられません」
「コリーナ」
「この世の中にどれほどの人間がいるか。そしてその中でレオポルドとの出会ったことを、私は後悔していません。レオポルドが同じように思っているかはわかりませんけど」
「いいや。私も同じ気持ちだ。君以上だといってもいい。だからこそ、君を危ない目にあわせたことで、これまで感じたことの無い恐怖を感じた。君を失っていたかと思うと、今でも時々悪夢を見る」

どうやらレオポルドの疲れた表情は、その悪夢のせいのようだ。

「あんなことは滅多にあることではないわ。たまたま」
「たまたま、たまたまで二度も・・・しかも二度目は自ら危険に飛び込むようなことをした」
「ちゃんと対策はしていたわ。ただ黙って待っていることが出来なかったの」
「君があんなことをしなくても、いずれルブラン公やパライン卿が何とかしてくれた」
「彼らはあなたを痛めつけたかった。そしてその方法として私に目を付けていた。ルブラン公やパライン卿がどんなに優秀でも、アンセンヌ伯爵たちは彼らに尻尾を出さなかったと・・」
「わかっている」
レオポルドが声を荒げて私の言葉を遮った。苛立っているのがわかる。軽率な行動を取った私になのか、自分に向けてなのか。その苛立ちを身の内に燻らせ、どこにも吐き出せないで苦しんでいる。
「すまない。八つ当たりだ」
「いいえ」
自分と出会わなければ私は危ない目にあうことはなかった。その思いが彼を追い詰めている。
「君はもっと怒っていい。怒るべきだ」
「怒る?」
「そうだ。『あなたのせいで私は酷い目にあった』って」
「私が怒れば、何かが変わるのですか?」

怒れと言われて、女優でもない私には難しい。

「・・・そうだな。何も変わらない」

私の質問にレオポルドは頷いて、それから軽く頭を振った。

「無理なことを言った。忘れてくれ」
「レオポルド」

下を向いていたレオポルドの顔に触れ、自分の方に向かせそっと唇を重ねた。

「コリーナ」

レオポルドが驚いて目を丸くする。
男女の駆け引きについて熟練とは言い難い素人同然の私が、二十八歳にして初めて自分から仕掛けた口づけ。
数度経験しただけの私では満足してもらえないかもしれない。
でも、私の精一杯の思いを込めて彼の唇に触れた。
驚いたままのレオポルドにもう一度キスをする。
強固なようでいて意外に柔らかい唇。舌先でやや薄いその唇をなぞれば、薄く隙間が開いて舌を誘い込む。
美しく生え揃った前歯に沿って舌先を動かし、端まで行くと今度は舌先を曲げて歯列の裏を舐めた。

「ん…」

喉の奥が鳴り、唾を飲み込む音がする。
彼の舌が動き、歯列をなぞる私の舌の裏に当たった。

口づけが深まるにつれ、レオポルドの手が背中から前に移動し、お腹から胸へと伸びた。

「あ…」

指先が先端の蕾に当たった瞬間、痺れが走りお腹に力が入った。じわりと蜜が奥から湧き出てくるのがわかり、その部分が疼いた。
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