嫁き遅れ令嬢の私がまさかの朝チュン 相手が誰か記憶がありません

七夜かなた

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幕間〜ロクサーヌ

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腰の高さまでの大きさの火の灯されていない暖炉を凝視する。
あの先にレオポルドがいる。

「さっき、お前がここにいることをロクサーヌがわざわざ言ったのは、奴に聞かせるためさ」
「レ、レオポルド!」

彼の無事を確かめたくて叫んだ。

「おっと、声をかけても無駄だ。奴は口を塞がれて話せないし、鎖で拘束されているから…」

ジャラジャラ、ガンガンと言う音がした。
ジャラジャラというのは多分彼を拘束している鎖の音。ガンガンというのは壁に何かを打ち付けたのかもしれない。

「地団駄を踏むやつの姿が目に浮かぶわ」

伯爵はそれだけですでに興奮しているのか、さっきより息があがっている。

「おもしろいことを教えてやろう」
「や!」

伯爵が耳の側で囁いた。暖炉に意識が向いていて油断した。吐く息が耳にかかり寒気が走った。

「あいつのところに今ごろロクサーヌが向かっている」
「え…ひゃあ!」

距離を取ろうとする私の顎を掴んだ伯爵が耳を舐めた。

「ロクサーヌは私より趣味が悪い。拘束した男が一人でくのを見て楽しむんだ」

伯爵の言っていることが理解できない。
彼女は一体レオポルドに何をすると言うの。

「大抵の男は目の前にロクサーヌの裸体を見せつけられただけで勃つ。それから道具をつかってとことんイジメ抜くそうだ。私も一度見たが…まあ、私の趣味ではなかった。安心しろ。私はそんなものはなくてもこの手と口とあそこで天国にかせてやる」

そう言って私の脇腹に硬くなった下半身を押し付けてきた。
悪趣味としか言いようがない。

「レオポルド、さあ、お楽しみの時間よ」

くぐもったロクサーヌさんの声が聞こえ、同時にジャラジャラと鎖を揺り動かす音がする。

「どうやらロクサーヌが着いたようだ」

「狂ってる…」
「ん?」

私は利き手である右手に短剣を握りしめた。

「そう…快楽は…人を狂わせる」

暖炉から更に鎖が激しく擦れる音と、うめき声が聞こえてきた。

「始まったようだ。さあ、我々も楽しもう」

伯爵がもう一度私の肩に手を触れた瞬間、彼に体当たりした。軽く膝立ちになっていた彼はバランスを崩して寝台に倒れ込んだ。

「動かないで」
私は鞘から短剣を抜いて彼の首筋に剣先を押しつけた。
「おま…こんなもの…いつの間に持って…ぎゅえ!」

伯爵の顔が一気に青ざめ踏み潰された蛙のような声を上げた。
 
仰向けになった伯爵の下半身を私が膝をつかって押しつぶしたからだ。

「い、いた…イ…ムム」

起き上がろうとして剣先が顎下に突き刺さった。突かれた痛みとあそこを押し潰された痛みで伯爵が絶叫しかけたのを手で塞いだ。

「地下室はどこ?教えないと大事なところを潰すから」

剣先が軽く刺さった所から血が滲みでて、伯爵の喉を伝っていく。

人の急所は何ヶ所かある。
男性の場合は今私が膝で押しつぶしている睾丸もそのひとつ。
ルディの剣の師匠には力で適わない女が勝つために必要なことを教えてもらった。
的確に急所を攻める。
心臓を狙ったり喉を掻き切ったりすれば死ぬ。
こめかみに鼻の下、耳の裏、顎、喉仏。鳩尾に腎臓のあたりも強打すれば混沌させたり痛めつけることはできる。

「叫んだらどうなるかわかるでしょ」

伯爵がブルブルと震え目で助けてくれと訴えている。

「こ、こここ…ここを出て…み、右…突き当たり…と、とと扉…」

今後のためを思えば伯爵のあそこは役に立たなくなっても構わない。
そう思うと膝に込める力が余計に入った。

「鍵は?」
「う…上着…」

「ありがとう」

ガツン、ガチッ

短剣の柄で伯爵のこめかみを思い切り叩いた。一度では気絶しなかったので二度叩いてやっと白目をむいて伯爵は気絶した。

すえた匂いがして伯爵の上から動くと、ズボンのあそこの辺りが濡れていた。
失禁と射精を同時にしたみたいだ。

ゴソゴソと伯爵の上着を物色して鍵を引っ張り出した。

ここに暫く誰も近づくなと伯爵が命令したお陰で部屋の周囲には誰もいなかった。

けれど伯爵と私の所から何の気配もしなかったらきっとロクサーヌさんが不審に思って戻ってくるかもしれない。

いざというときに相手に突出すつもりで短剣を隠し持ち、私は地下室へと向かった。
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