嫁き遅れ令嬢の私がまさかの朝チュン 相手が誰か記憶がありません

七夜かなた

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レオポルド〜君に出会ってから

★レオポルドside6

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二年半の外国での任期が開け、ようやく自国、メディデーシアに戻ってきた。

王都シャルブレの門を潜り、実家のスタニエス家でなくルブラン公の邸へ向かった。

会うのは二年半ぶりだった。

「お久しぶりです。閣下」

「息災だったか?」

「はい」

「希望を叶えてやれなくてすまなかった。だが、そなたほどの人材がなかなかみつからなかった」

友好国、イグレントに赴任して一年目。イグレント内の政情が怪しくなった。
イグレントはメディデーシアと同じく王権制をしいている。
イグレントは上質な貴金属が採掘されていて、それらは全て国が管理している。
王家の独占だと声高に叫ぶ者が現れ、国が荒れた。
そのせいで一時国交が途絶え、国境も封鎖された。

王権を覆そうとした首謀者も捕らえられ、政情が落ち着くのに一年かかった。

ようやく後任が赴任して引き継ぎを終えるのに、さらに半年がかかった。

「仕方ありません」

それが運命だったのだ。

帰国の準備を進めている時に、ルビウス公から届いた手紙には、二年半の間にルーファスに子どもが生まれ、そしてコリーナの父が再婚し、今度は弟が結婚するということが書かれていた。

彼女自身の結婚の噂は幸いなことに耳に入ってきていない。
聞くところによると、夜会にも滅多に顔を出さないらしい。

だからと言って、彼女が今も自分の言葉を信じて待っていてくれると楽観視もできない。

人の心の中までは誰にも探ることもできない。他に意中の相手が出来ていない保証はどこにもない。

ルビウス公への挨拶を終え、自宅へ帰りついた。

二年半の間、ほとんど連絡がなかった息子だったが、両親は温かく迎えてくれた。
ルブラン公が手を回し、無事なことを先に伝えてくれていたからだ。

それでもほんの少し前まで心配させていたことは事実だった。

息子のことを信じて取り乱すこと無く、冷静に受け止めてくれていた両親の賢明な対応が有り難かった。

彼らならコリーナのことも快く迎えてくれるだろう。

対応に困ったのは自分の世話係だったクラレスの方だった。

「若様……若様から何も便りが無く、クラレスは毎日毎日心配で心配で……体を壊していないか、何か危険なめにあっていないかと生きた心地がしませんでした」

確かに彼女は二年半前よりかなりやつれ、十歳は老け込んでいた。

「便りがないのは元気な証拠だと言うでしょうと、旦那様も奥さまも私が何度申し上げても何もおっしゃってくれなくて……」
「すまなかった。しかし、父上たちの言うことは間違っていない。何かあれば連絡は来ただろう」
「連絡が来てからでは遅いのです!」

クラレスがヒステリックに叫び、宥めるのが大変だった。
昔から自分に対する思い入れが強いと思っていたが、それだけ愛情深いのだと軽視していた。

「もう二度とこんなことはなさらないでください」

「クラレスの気持ちはわかるが、それは約束できない」

「若様!」

「クラレス、やめておけ。レオポルドをそれ以上困らせるな」
「そうよ。こうして無事に帰って来たのだから」
「旦那様も奥さまも、薄情過ぎます。大事なスタニエス家の若様に何かあったら……」
「我が息子はそんなやわではない。自分の身は自分で護れる。私たちは彼を信じている」
「レオポルドのことを私たちもあなた以上に心配していました。でも、こうして無事な姿を見られたのですから、それで納得してちょうだい。責めるのはレオポルドを追い込むだけよ」
「父上、母上……私を信じていただきありがとうございます。クラレス、悪かったと思っているが、どうか怒りを収めてくれ」

「怒っているわけでは……どうか頭を上げてください。私ごときにそのような……若様を困らせたいわけではございません」

頭を下げたことで、クラレスもようやく口を閉じた。

「クラレスにも困ったものね。あれでまじめに働いてくれるから無理に暇を出すこともできないし」
「少々レオポルドに対して過剰に反応しすぎる」
「私が……キャリーのことにかまけて、彼女に任せきりだったのが悪いんです。レオポルドにも悪いことをしたわ」

クラレスのことについて、両親が顔を曇らせる。

「キャリーのことは仕方ありません。妹を失うことになったかもしれないことを思えば、あれで良かったのだと思います。クラレスには折を見て話してみます」
「帰ったばかりですまない」
「いえ、母上もお気になさらず。今さら母親が恋しかったと泣くほど幼くはありません。私なりに父上と母上は尊敬し、敬愛しております」

「そう思っていてくれていると知って嬉しいわ。あなたは……そういうことを、あまり顔や態度に表さないから……」
「それは……私としては自然に振る舞っているつもりでしたが……」

家族愛というほどではないが、両親や姉妹のことは血の繋がった家族として、人並みの情愛は持っている。それをはっきり示さないだけだ。
両親に誤解させていたことを今になって知った。

「それで、これからどうする?」
「ルブラン公の計らいで、外務大臣補佐官の任をいただくことになりました。明日にも辞令が下りるでしょう」
「そうか……しばらくは落ち着いていられるのか?」
「はい。今回のようなことは恐らくもうないかと……長期間の出張ということで、一、二ヶ月の訪問はあるかと思いますが」

「まあ、それでは……花嫁となるご令嬢を探してもいいかしら。あなたにちょうどいいお相手が五人ほどいらっしゃるのですけど。歳も身分も問題なくて、世間の評判もいいのよ」
「そのことですが、私の希望を申し上げてもよろしいでしょうか」

「なんだ? 言ってみろ」

「じつは……ずっと思っている女性がおります」

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