出戻り王女の恋愛事情 人質ライフは意外と楽しい

七夜かなた

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第六章

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 全てを受け入れると言うユリウスの言葉を受けて、ジゼルは覚悟を決めた。

 腕を寝台について半身を起こすと、そっと裸のユリウスの胸に額を置いた。

「ジゼル?」
 
 彼の背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめる。自分から身を寄せたのは初めてだった。
 ただ、この人に触れたい。この人の温もりを感じたい。
 膨れ上がった己の欲に戸惑いつつも、ジゼルはユリウスに身を寄せ脈打つ鼓動を感じた。

「・・・!!!」

 ユリウスもジゼルを抱きしめ返し、頭頂部にチュッと音を立てて口づけをした。

「怖がらなくていい。俺に全てを委ねて、体の力を抜いて」
「はい」

 ドミニコとの時は、いつも体を硬くし緊張していた。それが悪かったのかも知れないと、今になって思う。
 でもドミニコはジゼルを見て、彼女の様子に気遣ってくれることもなかった。
 言葉を交わし、互いの反応を確認し合う。
 ただそれだけのことなのに、それが二人には足りなかった。

 ジゼルがテレーズから何を言われようと、ドミニコは一度もジゼルの側に立ってくれたことはなかった。
 少しでもバレッシオ公国の風潮に合わないことがあれば、ドミニコの母親はジゼルだけでなく、父や母のことを悪く言った。
 
 自分にも至らないことがあったのだ。自分が悪いのだ。
 そう思うほどにジゼルは萎縮していった。

 でもユリウスの側にいると、自然と緊張が緩みジゼルはジゼルでいられる気がした。

「あ、んんん」

 首筋をユリウスの舌が舐める。そのまま鎖骨に降りて、襟口ぎりぎりをなぞっていく。

 緩められた衣服がいつの間にか下ろされ、肩が剥き出しになり、ついに上半身は下着だけになった。
 昔はもっと本格的な硬いコルセットを着けなればならなかったが、ここ五十年で殆どコルセットを身につける人は減った。
 ジゼルが今身につけている簡易型コルセットが、今や主流となりつつある。 
 新しいコルセットは、中に芯を入れて二枚の布を合わせている。
 下から胸を押し上げるように身に着けたコルセットを、ユリウスは食い入るように見る。

「苦しくはないのか?」 
「少し苦しいですが、慣れました」
「では、楽にしてやろう」
 
 コルセットの結び目を丁寧に解いている間も、ユリウスはジゼルの肌に何度も啄むようなキスを落としていく。
 結び目が解けていくほどに、ジゼルは別の意味で息苦しくなっていった。
 殆ど息継ぎだけしか暇を与えられない口づけ。
 舌が絡みあい、吐息が混じり合い、唾液も零れ落ちる。
 ごくりとユリウスの喉が鳴る。
 どちらとも言えない、混じり合った互いの唾液を、ジゼルも飲み込んだ。
 目眩がするような口づけが続く中、すべての紐が解かれパサリと下着が腰の辺りまで落ち、押し潰されていたジゼルの両の乳房が現れた。
 まろび出たその胸を、ユリウスは両手で優しく包み込む。

「きれいだ。白い乳房に可愛らしい花の蕾のような乳首。想像以上だ」
「あ……」

 優しくゆっくりと揉みしだかれ、ジゼルから快感の吐息が漏れる。
 武人のゴツゴツしている手にもかかわらず、まるで壊れ物を扱うように慎重な手付きだった。乱暴に爪が喰い込むようなドミニコの手付きと、つい比べてしまう。
 ユリウスは円を描くように乳房を揺らしながら、中心にある蕾をキュと指二本で摘む。

「……!! あ、んん、はぁ」

 決して強い力ではない。しかし、敏感になったそこはそれだけで感じてしまう。
 人に触れられる時以外で、自分で触ったことはない。体を洗うときは海綿でそっと掠める程度だ。
 それでもこんな風に痺れるような感覚は感じない。
 なのに、ユリウスの指が僅かな力で摘んだだけで、ジゼルのお腹から下半身に向かって、甘い疼きが拡がった。

「感じるのは恥ずかしいことじゃない。素直に自分の反応を楽しんで。どんなあなたも美しい。美しく、妖艶で、そしてとても美味しそうだ」
「お、おいし…あ、」 

 実際に食べるわけではないのに、美味しそうだと言われジゼルが動揺しているうちに、ユリウスは右の乳房を口に含んだ。

 手とは違う温かく湿り気を帯びた口に含まれると、また違った刺激が体を走った。
 
「や、あ、はぁ…ユ、ユリウス、あ、そ、そんな」

 片方の乳房を口に含んで、チューッと吸い上げながら、舌で中心を押し潰され、もう一方の胸の頂をキュッと指で挟み込まれ、ビクンとジゼルの体が跳ねた。
 それと同時に体の奥からジュンッと脚の付け根に何かが流れていった。

「は、あ…あぁ」

 ユリウスの舌が乳首を転がし舐め回す。
 もう片方も挟んだり引っ張ったりされ、その度に奥からジワジワと何かが涌出て、ジゼルはいつの間にか足を擦り合わせた。
 その足が、ジゼルを跨いでいたユリウスの内腿に当たった瞬間、ジゼルの乳房を咥えたまま、ユリウスがちらりと彼女の顔を見た。
 わかっていると言いたげに細められた目の奥で、赤い瞳がギラつく。

「もう少し、我慢してくれ」
「や、そ…」
「う…」

 ユリウスが口を離すと、そこには唾液に塗れて光るピンと勃ち上がった自分の乳首が見えた。それを舌先で突かれ、ジゼルは痺れが全身に拡がり反射的に腰を浮かせた。脚の付け根に一気に何かが溢れ出て、ジゼルは喘いだ。
 浮かせた腰が、硬く張り詰めたユリウスの股間を軽く掠め、ユリウスが呻いた。

「ご、ごめん…」
「謝らなくていい。自然な反応だ。軽くイッたようだ」
「イ、イく?」

(イく? これが?)
 
 男性と褥を共にするのは初めてではなかったが、この感覚はジゼルにとっては初めての経験だった。
 
(でも、今、『軽く』って言っていなかった? この感覚に軽いとか重いとかがあるの?)
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