出戻り王女の恋愛事情 人質ライフは意外と楽しい

七夜かなた

文字の大きさ
上 下
9 / 102
第一章

8

しおりを挟む
 年の瀬も押し詰まってきた。明日から二泊三日の旅に出る。行き先は、海に面した洞窟風呂のある温泉旅館。何年ぶりだろう?子供の頃、家族旅行で来て気に入り、結婚してから家人を誘って二人で来た。今回は、その後生まれた子も一緒。車で行きにくいので、家人は乗り気ではない様子だが、一度、野外活動クラブの合宿で泊まったことがある我が子は、「あ~あそこ?」と喜んでいる。
 宿泊先の近くにある世界遺産に登録されたところにも行きたい。子供の頃、訪れた時には、「滝なんか見たってつまらない」と思ったものだが、その滝をもう一度見たい。同じく、「何で、家族旅行で神社?」と思った神社も見てみたい。今の瑠紅が、その滝を、そしてその神社を見たら、どんな感想を抱くだろう?そんなところへ家族を連れて行った、今は亡き父親の気持ちが、今の瑠紅なら分かるだろうか?色々と楽しみである。瑠紅の過去と現在、そして未来をつなぐ旅路になればいいと思う。
 なんでそんなこと考えるかというと、来月、異動があるからだ。異動先の発表は、年明けになる。勤務先が受託しているところとの契約が他社に取られ、我らは新年早々追い出しを食らう。他の受託しているところに割り振られるのだが、結構な人数、動くので、希望先に行けるかどうか分からないし、誰と一緒に動かされるかも分からない。続けるかどうかは異動先が決まってから決めるなんて人もいれば、すでに退職の意を伝え、有休消化に入った人もいる。遠方の職場を打診されたため、転職を決めてきた人もいる。なんて潔い。すがすがしささえ感じる。
 で、「人の人生掛かってるんだから、ゲーム感覚で他社のシマをとるんじゃねえ!」と相手をドヤしたいところだが、「大コケしたらいいのに」とポソッとつぶやくくらいしか出来ない瑠紅は、居残りを表明し、ガチャッと当たりが出るのを待っている。その一方で、世の中、どんな仕事があるか、ネットで探してみたりもする。そこで、気づいたのだが……。
 アルファポリスで、自分の投稿チェックをしていると、画面に広告が出るんだけど、それ、転職サイトのものなんだよね。狙ってる?瑠紅のこと。「ふんふん、どれどれ?」とタップして見てはいるが、これ、「物書きはあきらめて、定職に就きなさい」ってこと?それ、真綿で首を絞めるようなものだね?確かに、前月の確定スコア「2」とかだけどね。来月は「15」かな。桃トラのおかげで、スコア7.5倍増し……って、これで、生活できますか?悪いこと言わないから定職、探しなさいって?いや、定職には就いてるけどね。異動が……。横取りされたんだけど、他社に……。コケてしまえ!えいっ!(←闇魔法かけるの図)
 でも、近頃は、面白い仕事があるんだね。Vチューバーのマネージャー、なんてある。漫画家っていうのもあった。そういうの、求人サイトで探すんだ……。
 情報収集が好きな瑠紅は、条件を変え、あれこれ探す。そこで働いている人は、どんな人なのだろうと考えながら。ふふ、何だか、ぴゅー太になったみたい。そうそう、今回、お蔵入りしていたお話をリメイクし、アルファポリスにUPした。フレンチブルドッグのぴゅう太目線で語られる「ぴゅう太の庭」というお話だ。一時期住んでいたことのある宝塚市を舞台に、その頃に見た情景を交えて描いた作品で、恋愛~婚約~新居探しという男女が出会い結婚に至るまでの一連の流れを疑似体験できるものとなっている。カテゴリーが違う気もするが、恋愛でもライト文芸でもないように思うので、ひとまずキャラ文芸に上げてみた。これで、何スコア貰えるだろうか?
 「行け!ぴゅう太!これでスコア取ってこい!」ジロッ!……あ、すいません。何卒、よろしくお願いします(←低姿勢)。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

処理中です...