【完結】TL小説の悪役令息は死にたくないので不憫系当て馬の義兄を今日もヨイショします

七夜かなた

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88 互いの想い②

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 ジュストはパチパチと目を瞬かせ、ギャレットの次の言葉を待つ。

「僕もジュストのこと、好きだよ」
「そ…」
「もちろん、弟としてではなく、ちゃんと恋愛感情だからね」

「それは兄としてか」とジュストが言おうとしたのがわかり、ギャレットは続け様に言った。

「ギャレット?」
「僕たち、両想いだね」

(両想いって、こんなに嬉しいんだ。初めてだけど、嬉しい)

 前世では味わったことのない喜びがギャレットの胸に広がった。
 それが顔に現れているのが、鏡を見なくてもわかる。
 
「え、ギャレット、俺のこと…」

 自分から先に告白したくせに、こんなギャレットの反応を想像していなかったのか、ジュストはしどろもどろになっている。

「なに驚いているのさ。先に告白したのはジュストでしょ」
「え、だって、ギャレットは…え」 

(わあ、ジュストって動揺するとこんなふうになるんだ。何だか可愛い)

 いつも完璧でかっこいいジュストが狼狽えている姿は、逆に萌ポイントでギャレットの心を擽った。
 ギャレットはジュストより歳下だけど、前世の年齢を足して底上げすれば、かなり歳上になる。
 まるでおばさまが年端もいかない青年を愛でるような、そんな気持ちになる。

「ジュスト」
「え?」

 気持ちが抑えきれず、ジュストの名前を呼んで、パクパクしている彼の唇を塞いだ。

 ヒュッとジュストが息を呑むのがわかった。

(わ、ジュストの唇って柔らかい)

 初めてのジュストとのキスに、胸の高鳴りと共に下半身に熱が集まった。

 唇同士を重ねただけの軽いキスをして、ギャレットが唇を離してジュストの顔を覗き込むと、大きく見開かれた瞳の奥で、何かが揺らめいた。

(あれ、いきなり過ぎたかな?)

 気が急いてしまって、目が覚めたばかりのジュストにいきなり過ぎたか。

「………!!!」

 そう思っていると、頭の後ろを掴まれてジュストが頭を上げて唇を重ねてきた。

「ん…んんん」

 舌がするりと割り込んできて、絡みつく。

(うそ、これ、ディープキス?)

 前世でも未経験の深いキスに、目がチカチカする。
 他人の唾液と混ざり合うとか信じられないと思っていたが、好きな人と何もかも共有したいという気持ちに、そんなことは気にならなかった。

(気持ちいい。これ)

 ジュストから伝わる熱が脳の奥を痺れさせる。
 後頭部から背中に手が下りていき、窪みに沿って上下する。

「ふ…あ」

 唇が離れて互いの間を唾液の糸が渡る。

「まだ夢の中か…ギャレットが俺とのキスでそんな顔をするなんて」
「そんな…顔?」

 どんな顔をしているのか。きっとブサイクになっているに違いない。

「ジュスト、夢じゃないよ。今、僕たちはキスした」

 人差し指を立てて、ジュストの唇をフニフニと押す。
 たった今キスした唇はしっとりとしていて、またキスしたくなった。

「もう一回…していい?」

 ムラッとした気持ちになり、おねだりする。

「ギャレットのお願いを、俺が断れるわけないだろう?」
 
 そう言って笑うジュストからは病み上がりにも関わらず、色気がダダ漏れだ。
 
「では遠慮なく」

 枕に頭を預けたジュストに、今度は自分から覆いかぶさって鼻先同士を擦り合わせてから、軽く唇を押し付けさっきのような深いキスをした。

「これが夢なら覚めないでほしい。それともこれは人生の最後に神様がくれたご褒美か。この世にこんな幸福があるなんて」

 キスの後でジュストが呟く。

「夢ではないし、ジュストの人生はこれで終わりじゃないよ。まだまだジュストは幸せになる。ジュストの幸せがこれっぽっちなわけない」
「ギャレットとのキスがこれっぽっちなんてわけない」
「そんなに喜んでくれて嬉しいけど、ジュストのことを大事に思っているのは、僕だけじゃないよ。父上たちも、ステファンもレーヌも、王太子殿下も、皆、ジュストを心配していた」 
「うん。そうだね。わかっている」
「でも、ジュストが生きて側にいてくれるのを、一番嬉しく思っているのは、やっぱり僕かな。僕にとっての一番はジュストだから」

 ジュストと同じ枕に頭を預け、惚れ惚れとした気持ちで顔を見つめる。

「俺にとっての一番もギャレットだ」

 ジュストさクルクルのギャレットの巻毛をもて遊び、愛おしげに目を細める。

「ねえ、いつから僕のこと、好きになったの?」
「最初から、ギャレットのことは好きだよ」
「そういう意味で聞いたんじゃない。それに、昔の僕のことは忘れてよ」
 
 昔のギャレットは、我儘でどうしようもないクズな義弟だったはず。ジュストを虐げてきたギャレットを好きになるはずがない。

「この気持ちが弟に対してのものじゃないと思いだしたのは、王太子殿下と留学から戻ってきた頃かな」
「え、それって…」
「久しぶりにギャレットと一緒に寝て、夜中に夢精したギャレットの世話をしただろ?」
「う、それ、覚えて…」

 自分に取って恥ずかしい思い出だ。

「かわいい弟が、お風呂で自慰する姿にときめいた」

 そう言いながら、ジュストはギャレットに微笑みかける。
 溢れる色気にギャレットの胸が高鳴る。

「ギャレット、愛している。俺の身も心もすべて君のものだ」

 ジュストがギャレットの頬に手を添える。

「俺の天使」
「僕も、ジュストが好き。生きててくれてありがとう。手遅れにならなくて良かった」

 見つめあい、どちらからともなく再び唇を重ねる。
 そして身を寄せ合って、二人でそのまま朝まで眠りについた。
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