73 / 91
73 明らかになる真実②
しおりを挟む
「ところで、ミーシャはお前に何の話をしていたんだ?」
そう父に尋ねられ、作者発言について以外のことを、ギャレットは話した。
レーヌに対するエナンナたちがしたことについて、レーヌの虚言で自作自演だとは思わないのかと言っていたことを話すと、一堂は呆れていた。
「その件についても、オハイエ家の使用人たちから証言を得ている。すでに彼女たちに理不尽に解雇された者もいて、証拠は十分にある」
アベリー侯爵が言った。
「あなたのことについては、私に任せてくれるかしら? これは私が解決すべきことでもあるの。それに、彼女たちは父にも手を出していたの」
「オハイエ伯爵に?」
「エナンナと再婚した当初は、父はまだ私のことを気にかけてくれていたの。でも、次第に私を避けるようになって、どうやらエナンナが何か薬を飲ませて父を自分のいいように操っているのかも。彼女が体に良いからと、ある日から父に毎晩飲ませている薬があって、それをこっそり持ち出してもらったら、この国では珍しい幻覚剤だとわかったの」
小説では出てこなかった新たな事実に、ギャレットは目を見開いた。
「最近は部屋から一歩も出なくなって、エナンナ以外は誰も姿を見ていないそうなの。もしかしたらもう手遅れかも…でも、今からでも助けたい。オハイエ家のことは、私が何とかしないと」
「お腹の子のこともあるから、私やナディアも彼女を助けるつもり」
キャロラインとナディアが力強く頷きあう。
「それから、私の双子の兄のことも…」
「お兄さん、生死のわかっていない?」
「ギャレット、その子は多分、ジュストだ」
父が深呼吸してから、ギャレットに言った。
一瞬ギャレットは意味が理解できなかった。
「え、えええええ!」
部屋中にギャレットの声が響き渡った。
「驚くのも無理はない。だが、事実だ」
父がギャレットを落ち着かせようと、肩を叩く。
「私の家系に赤い瞳の者が生まれることは以前にもお話したと思いますが、私の双子の兄…オーランドもそれは見事な赤い瞳をしていました。そして、ジュスト様は、亡くなった祖父の若い頃に生き写しなのです」
「で、でも…え?」
小説ではジュストが孤児だったことしか書かれていなかったし、ギャレットもジュストも死亡エンドを迎えてしまったので、そこまでのことは深く考えたことはなかった。
でも、そう言われて、レーヌがジュストに深い関心を寄せていたことも、ジュストもレーヌに男女間のそれとは違う関心を持っていたことも、双子の兄妹だと言う事なら、納得がいく。
「ジュストは、知っていたの?」
「卒業パーティーでパートナーになった時に伝えました。彼も時折見覚えのない人物のことを夢に見ていたようです。それが自分の本当の家族ではないかとも思っていたそうです」
「しかし、両親は自分を捨てたか、既に亡くなっていると思っていたようだ。だから、敢えて口にはしなかったらしい」
「そんな…」
ずっと近くにいて、まったく気づかなかった。
ジュストとこのまま一緒にいられれば。
そんな浮かれ気分でいた。
実はそんな事実が隠されていたなんて。
事実は小説よりも奇なりとは、このことだ。
「私は、ジュスト…オーランドのことを公にして、彼をオハイエ家の当主に推そうと思っています。亡くなった母方の親族にも後押しを頼んでいます」
「王家もそのつもりだ。アベリー侯爵家もモヒナート家も、他にも味方は大勢いる」
王家の後押しに二つの侯爵家が味方になれば、誰もジュストの後継に異議を唱えることはないだろう。
「でも、じゃあ、エナンナやミーシャたちはどうなるの?」
「父のことが明らかになれば、罪に問われるのは確実です。それに、エナンナも、きっと祖父の肖像画を見て気づいてい筈です。だからギャレット様やモヒナート家を押さえ込むためにも今回のことを仕組んだのでしょう」
「ベルンの息子がジュストに対し敵意を持っていることは誰もが知っている。エナンナが彼を利用しようとしてもおかしくない。今のところ直接ベルン辺境伯とエナンナが接触した証拠はないが、他人を介して連絡を取る方法はいくらでもある」
「ジュストの件とギャレットの件、同時期に起ったのも我々の動きを封じるためだろう」
「我々の動き? あ、そう言えば、彼女、ジュストのことも何か知っている口ぶりでした」
このタイミングで起こったジュストの失踪事件。
まさか…
「学園にいる彼女がジュストのことを知るはずもない。今度のこと、やはり裏でつながっているようだ」
「ことはベルン辺境伯の領地近くで起こった。彼の息子とジュストは因縁がある。実は今回、私がシェルテーレに直接救援物資を届けることになったのも、以前からシェルテーレへ届ける我が国の物資のいくつかが、粗悪品とすり替わっているのがわかったからだ」
「それって…辺境伯が?」
王太子殿下が頷く。
「積み荷を運ぶ一行は、いつも彼の領地を通る。疑いはほぼ確信に近かった。それゆえ、視察と称して回ることを伝え、揺さぶりをかけた」
「表向きの視察に隠れて裏から密かに探るつもりだった。ステファンがその任の責任者で、後から合流する手筈だった」
「ステファンが居残りになったのって…」
「妊娠は本当だけど、ちょうどそれを口実にして、ステファンも向かったの」
「しかし、ベルンも何かを察して先手を打ってきた。襲撃は予想できたが、こちらの予想より遥かに多い人数を使ってきた。しかも、殆どが騎士などではなく、農民などだったため、私達も躊躇してしまった」
鍛えられた騎士なら王太子殿下たちも戦う覚悟はできていたが、相手が素人同然の農民ともなると、勝手が違ったようだ。
「農民…」
ギャレットの頭の中で、例のカルト教団のことが過った。
そう父に尋ねられ、作者発言について以外のことを、ギャレットは話した。
レーヌに対するエナンナたちがしたことについて、レーヌの虚言で自作自演だとは思わないのかと言っていたことを話すと、一堂は呆れていた。
「その件についても、オハイエ家の使用人たちから証言を得ている。すでに彼女たちに理不尽に解雇された者もいて、証拠は十分にある」
アベリー侯爵が言った。
「あなたのことについては、私に任せてくれるかしら? これは私が解決すべきことでもあるの。それに、彼女たちは父にも手を出していたの」
「オハイエ伯爵に?」
「エナンナと再婚した当初は、父はまだ私のことを気にかけてくれていたの。でも、次第に私を避けるようになって、どうやらエナンナが何か薬を飲ませて父を自分のいいように操っているのかも。彼女が体に良いからと、ある日から父に毎晩飲ませている薬があって、それをこっそり持ち出してもらったら、この国では珍しい幻覚剤だとわかったの」
小説では出てこなかった新たな事実に、ギャレットは目を見開いた。
「最近は部屋から一歩も出なくなって、エナンナ以外は誰も姿を見ていないそうなの。もしかしたらもう手遅れかも…でも、今からでも助けたい。オハイエ家のことは、私が何とかしないと」
「お腹の子のこともあるから、私やナディアも彼女を助けるつもり」
キャロラインとナディアが力強く頷きあう。
「それから、私の双子の兄のことも…」
「お兄さん、生死のわかっていない?」
「ギャレット、その子は多分、ジュストだ」
父が深呼吸してから、ギャレットに言った。
一瞬ギャレットは意味が理解できなかった。
「え、えええええ!」
部屋中にギャレットの声が響き渡った。
「驚くのも無理はない。だが、事実だ」
父がギャレットを落ち着かせようと、肩を叩く。
「私の家系に赤い瞳の者が生まれることは以前にもお話したと思いますが、私の双子の兄…オーランドもそれは見事な赤い瞳をしていました。そして、ジュスト様は、亡くなった祖父の若い頃に生き写しなのです」
「で、でも…え?」
小説ではジュストが孤児だったことしか書かれていなかったし、ギャレットもジュストも死亡エンドを迎えてしまったので、そこまでのことは深く考えたことはなかった。
でも、そう言われて、レーヌがジュストに深い関心を寄せていたことも、ジュストもレーヌに男女間のそれとは違う関心を持っていたことも、双子の兄妹だと言う事なら、納得がいく。
「ジュストは、知っていたの?」
「卒業パーティーでパートナーになった時に伝えました。彼も時折見覚えのない人物のことを夢に見ていたようです。それが自分の本当の家族ではないかとも思っていたそうです」
「しかし、両親は自分を捨てたか、既に亡くなっていると思っていたようだ。だから、敢えて口にはしなかったらしい」
「そんな…」
ずっと近くにいて、まったく気づかなかった。
ジュストとこのまま一緒にいられれば。
そんな浮かれ気分でいた。
実はそんな事実が隠されていたなんて。
事実は小説よりも奇なりとは、このことだ。
「私は、ジュスト…オーランドのことを公にして、彼をオハイエ家の当主に推そうと思っています。亡くなった母方の親族にも後押しを頼んでいます」
「王家もそのつもりだ。アベリー侯爵家もモヒナート家も、他にも味方は大勢いる」
王家の後押しに二つの侯爵家が味方になれば、誰もジュストの後継に異議を唱えることはないだろう。
「でも、じゃあ、エナンナやミーシャたちはどうなるの?」
「父のことが明らかになれば、罪に問われるのは確実です。それに、エナンナも、きっと祖父の肖像画を見て気づいてい筈です。だからギャレット様やモヒナート家を押さえ込むためにも今回のことを仕組んだのでしょう」
「ベルンの息子がジュストに対し敵意を持っていることは誰もが知っている。エナンナが彼を利用しようとしてもおかしくない。今のところ直接ベルン辺境伯とエナンナが接触した証拠はないが、他人を介して連絡を取る方法はいくらでもある」
「ジュストの件とギャレットの件、同時期に起ったのも我々の動きを封じるためだろう」
「我々の動き? あ、そう言えば、彼女、ジュストのことも何か知っている口ぶりでした」
このタイミングで起こったジュストの失踪事件。
まさか…
「学園にいる彼女がジュストのことを知るはずもない。今度のこと、やはり裏でつながっているようだ」
「ことはベルン辺境伯の領地近くで起こった。彼の息子とジュストは因縁がある。実は今回、私がシェルテーレに直接救援物資を届けることになったのも、以前からシェルテーレへ届ける我が国の物資のいくつかが、粗悪品とすり替わっているのがわかったからだ」
「それって…辺境伯が?」
王太子殿下が頷く。
「積み荷を運ぶ一行は、いつも彼の領地を通る。疑いはほぼ確信に近かった。それゆえ、視察と称して回ることを伝え、揺さぶりをかけた」
「表向きの視察に隠れて裏から密かに探るつもりだった。ステファンがその任の責任者で、後から合流する手筈だった」
「ステファンが居残りになったのって…」
「妊娠は本当だけど、ちょうどそれを口実にして、ステファンも向かったの」
「しかし、ベルンも何かを察して先手を打ってきた。襲撃は予想できたが、こちらの予想より遥かに多い人数を使ってきた。しかも、殆どが騎士などではなく、農民などだったため、私達も躊躇してしまった」
鍛えられた騎士なら王太子殿下たちも戦う覚悟はできていたが、相手が素人同然の農民ともなると、勝手が違ったようだ。
「農民…」
ギャレットの頭の中で、例のカルト教団のことが過った。
28
お気に入りに追加
1,000
あなたにおすすめの小説
モラトリアムは物書きライフを満喫します。
星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息
就職に失敗。
アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。
自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。
あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。
30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。
しかし……待てよ。
悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!?
☆
※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。
【完結】両性を持つ魔性の王が唯一手に入れられないのは、千年族の男の心
たかつじ楓*LINEマンガ連載中!
BL
【美形の王×異種族の青年の、主従・寿命差・執着愛】ハーディス王国の王ナギリは、両性を持ち、魔性の銀の瞳と中性的な美貌で人々を魅了し、大勢の側室を囲っている王であった。
幼い頃、家臣から謀反を起こされ命の危機にさらされた時、救ってくれた「千年族」。その名も”青銅の蝋燭立て”という名の黒髪の男に十年ぶりに再会する。
人間の十分の一の速さでゆっくりと心臓が鼓動するため、十倍長生きをする千年族。感情表現はほとんどなく、動きや言葉が緩慢で、不思議な雰囲気を纏っている。
彼から剣を学び、傍にいるうちに、幼いナギリは次第に彼に惹かれていき、城が再建し自分が王になった時に傍にいてくれと頼む。
しかし、それを断り青銅の蝋燭立ては去って行ってしまった。
命の恩人である彼と久々に過ごし、生まれて初めて心からの恋をするが―――。
一世一代の告白にも、王の想いには応えられないと、去っていってしまう青銅の蝋燭立て。
拒絶された悲しさに打ちひしがれるが、愛しの彼の本心を知った時、王の取る行動とは……。
王国を守り、子孫を残さねばならない王としての使命と、種族の違う彼への恋心に揺れる、両性具有の魔性の王×ミステリアスな異種族の青年のせつない恋愛ファンタジー。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい
オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。
今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時―――
「ちょっと待ったー!」
乱入者の声が響き渡った。
これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、
白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい
そんなお話
※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り)
※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります
※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください
※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています
※小説家になろうさんでも同時公開中
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.
天使の声と魔女の呪い
狼蝶
BL
長年王家を支えてきたホワイトローズ公爵家の三男、リリー=ホワイトローズは社交界で“氷のプリンセス”と呼ばれており、悪役令息的存在とされていた。それは誰が相手でも口を開かず冷たい視線を向けるだけで、側にはいつも二人の兄が護るように寄り添っていることから付けられた名だった。
ある日、ホワイトローズ家とライバル関係にあるブロッサム家の令嬢、フラウリーゼ=ブロッサムに心寄せる青年、アランがリリーに対し苛立ちながら学園内を歩いていると、偶然リリーが喋る場に遭遇してしまう。
『も、もぉやら・・・・・・』
『っ!!?』
果たして、リリーが隠していた彼の秘密とは――!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる