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70 もう一人の転生者②
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「ほんと、驚いたわ。ある日目覚めたら別人になっていたもの。多分、日本で私は死んだんだろうけどね。よりによって、レーヌじゃなかったなんて。しかも気が付いたのは彼女の結婚式よ。酷くない?」
何が酷いのか、誰に向かって文句を言っているのか。彼女は空を見上げている。
恐らくは自分や私をこの小説の世界に転生させた「神様」みたいな存在に言っているのだろう。
「ステファンも攻略できないし、ジュストとどうにかなろうにも、ミーシャ=オハイエでは、コンタクトも取れないし、向こうは最初からこっちのことなんて眼中にない感じで、私が主人公になれる糸口が全然なくて、嫌になるわ」
ブツブツ文句を言い続ける。
「ステファンもねぇ、どうなってるの? あんな一途にレーヌを大事にするなんて。彼はほら、もっとこう、彼女に出会うまでは色んな女性と浮名を流して、彼女が一番って気づくのよ」
それは彼の幼少期にギャレットが俺様な彼の鼻を折ってしまったからかも。
そう思いつつ、黙っていると、ミーシャがこちらをぎっと睨みつけた。
「どうなの? 私の推理は当たってる? ギャレット=モヒナート…もうひとつの名前は何かしら」
この小説を書いた作者だと名乗る彼女は、レーヌの結婚式で覚醒したと言っていた。
とすれば、ほんの一年前だ。まだまだ日は浅い。
こっちは十年以上だ。年季が違う。
そんな謎のマウントを取っていた。
しかし、ここで認めてしまっていいものだろうか。
彼女は今のところそうではないかと、疑っているくらいで、証拠は何もない。
しかし、前世の知識がない者が聞いたら、彼女の言っていることは荒唐無稽としか思えない。
気が触れたと思うだろう。
「言っている意味がわからない。それより、僕が君と婚約するような噂が流れているが、君の仕業か?」
ぎっと睨みつけると、彼女は悪びれもせず、すっと肩をすくめた。
「シラを切るならそれでもいいけど、そんな悠長なことを言っていられるかしら」
「どういう意味だ?」
「ジュスト=モヒナート、あなたのお兄様、今頃どうされているのかしらね」
含みのある言い方に、彼女がジュストの身に何が起こっているのか、既に知っているかのような口ぶりに聞こえる。
「それに、婚約の話は、あなたはそうせざるを得なくなるわ」
「ミーシャ=オハイエ、何を…」
彼女を問い詰めようと近寄った時、彼女の口角が弧を描き、ニタリと笑った。
「!!!!」
「きゃああああああ!」
彼女は自分の襟元を掴んで思い切り引き裂き、悲鳴を上げた。
「な!」
すると足音がしてこちらへ近づいてくるのが聞こえた。
「どうされたのですか!」
バンっと勢いよく扉が開かれ、淑女教育専門の講師のスマイレ夫人と、数人の女生徒が駆け込んできた。
「ギャレット様が…わ、私を…」
彼女は自分で引き裂いた胸元を、背中を丸めて腕で隠して涙ぐんでいる。
「まあ!な、なんてこと、学園内で破廉恥極まりないことです!」
スマイレ夫人は目を剥いて、ギャレットとミーシャに向かって鼻息荒く息巻いた。
状況から見ればギャレットがミーシャを襲った風にも取れる。
(や、やられた)
古典的か手口にギャレットは悔しさに唇を噛んだ。
逆セクハラやパワハラで女性が男性に性的接触を求めるケースは地球ではあり得る。痴女などというものもいる。
しかし、この世界ではまだまだ女性は被害者にしか成りえない。
この状況ではギャレットがミーシャに手を出したということはあっても、ミーシャが捏造したと思う人は殆どいないだろう。
「わ、私…私とギャレット様の婚約話など、ひと言も漏らしておりません。なのに、いい加減なことを言うなと…ギャレット様に問い詰められて…」
「モヒナート、どういうことですか!」
「違います、僕は彼女には指一本触れておりません。あれは彼女が自分で…」
「お黙りなさい! この子達があなたが彼女を呼び出したのを見たと言っています」
「え?」
夫人の後ろに控えていた女生徒たちが、青ざめた顔でコクリと頷いた。
何が酷いのか、誰に向かって文句を言っているのか。彼女は空を見上げている。
恐らくは自分や私をこの小説の世界に転生させた「神様」みたいな存在に言っているのだろう。
「ステファンも攻略できないし、ジュストとどうにかなろうにも、ミーシャ=オハイエでは、コンタクトも取れないし、向こうは最初からこっちのことなんて眼中にない感じで、私が主人公になれる糸口が全然なくて、嫌になるわ」
ブツブツ文句を言い続ける。
「ステファンもねぇ、どうなってるの? あんな一途にレーヌを大事にするなんて。彼はほら、もっとこう、彼女に出会うまでは色んな女性と浮名を流して、彼女が一番って気づくのよ」
それは彼の幼少期にギャレットが俺様な彼の鼻を折ってしまったからかも。
そう思いつつ、黙っていると、ミーシャがこちらをぎっと睨みつけた。
「どうなの? 私の推理は当たってる? ギャレット=モヒナート…もうひとつの名前は何かしら」
この小説を書いた作者だと名乗る彼女は、レーヌの結婚式で覚醒したと言っていた。
とすれば、ほんの一年前だ。まだまだ日は浅い。
こっちは十年以上だ。年季が違う。
そんな謎のマウントを取っていた。
しかし、ここで認めてしまっていいものだろうか。
彼女は今のところそうではないかと、疑っているくらいで、証拠は何もない。
しかし、前世の知識がない者が聞いたら、彼女の言っていることは荒唐無稽としか思えない。
気が触れたと思うだろう。
「言っている意味がわからない。それより、僕が君と婚約するような噂が流れているが、君の仕業か?」
ぎっと睨みつけると、彼女は悪びれもせず、すっと肩をすくめた。
「シラを切るならそれでもいいけど、そんな悠長なことを言っていられるかしら」
「どういう意味だ?」
「ジュスト=モヒナート、あなたのお兄様、今頃どうされているのかしらね」
含みのある言い方に、彼女がジュストの身に何が起こっているのか、既に知っているかのような口ぶりに聞こえる。
「それに、婚約の話は、あなたはそうせざるを得なくなるわ」
「ミーシャ=オハイエ、何を…」
彼女を問い詰めようと近寄った時、彼女の口角が弧を描き、ニタリと笑った。
「!!!!」
「きゃああああああ!」
彼女は自分の襟元を掴んで思い切り引き裂き、悲鳴を上げた。
「な!」
すると足音がしてこちらへ近づいてくるのが聞こえた。
「どうされたのですか!」
バンっと勢いよく扉が開かれ、淑女教育専門の講師のスマイレ夫人と、数人の女生徒が駆け込んできた。
「ギャレット様が…わ、私を…」
彼女は自分で引き裂いた胸元を、背中を丸めて腕で隠して涙ぐんでいる。
「まあ!な、なんてこと、学園内で破廉恥極まりないことです!」
スマイレ夫人は目を剥いて、ギャレットとミーシャに向かって鼻息荒く息巻いた。
状況から見ればギャレットがミーシャを襲った風にも取れる。
(や、やられた)
古典的か手口にギャレットは悔しさに唇を噛んだ。
逆セクハラやパワハラで女性が男性に性的接触を求めるケースは地球ではあり得る。痴女などというものもいる。
しかし、この世界ではまだまだ女性は被害者にしか成りえない。
この状況ではギャレットがミーシャに手を出したということはあっても、ミーシャが捏造したと思う人は殆どいないだろう。
「わ、私…私とギャレット様の婚約話など、ひと言も漏らしておりません。なのに、いい加減なことを言うなと…ギャレット様に問い詰められて…」
「モヒナート、どういうことですか!」
「違います、僕は彼女には指一本触れておりません。あれは彼女が自分で…」
「お黙りなさい! この子達があなたが彼女を呼び出したのを見たと言っています」
「え?」
夫人の後ろに控えていた女生徒たちが、青ざめた顔でコクリと頷いた。
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