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68 罠③
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ジュストが行方不明?
一瞬ロバーツの言った意味が理解出来ず、その場でフリーズした。
「え…ど…」
どうして?
「今朝、伝令が王宮にそのことを伝えに来たそうです。帰国の途中の国境で襲われ、王太子殿下を逃がすために、ジュスト様と数人の護衛が取り残されたそうです。殿下が近くの領主に協力を仰がれて戻られた時には、数人がその場に重傷を負って倒れていたそうですが、ジュスト様は見当たらなかったと、ギャレット様!」
ふらりと体が揺れたのをロバーツが支える。
「だ、大丈夫…それで?」
「殿下はその場に残って捜索を続けるおつもりてしたが、周りが二次被害を懸念して、無理矢理殿下を連れ戻そうとしているそうです」
それは当然だ。襲撃を受けた王太子殿下の身に、また何かあっては一大事である。
「ギャレット様にお伝えすべきか、旦那様たちも意見が分かれたところですが、万が一のことを考えると…」
「万が一? 万が一って何?」
ロバーツに問い質したが、その意味をギャレットもわかっていた。
それが、ジュストの「死」を意味するということを。
「と、とにかく、アベリー家のステファン様が捜索に向かわれるということです。何か情報が入りましたらすぐに報告に参りますので、ギャレット様はこのまま学園でお過ごしくださいとの、旦那様からのお言葉です」
「無理だよ、ジュストが大変な目に合っているのに…」
「お気持ちはわかります。ですが、ジュスト様は御自分のことで、ギャレット様が学業を疎かにすることを、お喜びにはなりません」
ロバーツの言わんとすることはわかる。取り乱した自分にそう言えと、言われてきたのだろう。
「今はアベリー様にお任せしましょう。国王陛下も王太子殿下一行と知ってのことなら、外交問題になると、捜索隊をアベリー様にお任せになりました」
「そう…そうだね。ステファンなら…きっと…ところで誰が殿下やジュストたちを襲った 盗賊とか?」
ただの物取りの犯行か。
「それもまだはっきりとはわかっていません。襲ってきた者は間違いなくシェルテーレの者らしいと、ベルン辺境伯様が…」
「ベルン? 今ベルンって言った? イベルカイザとシェルテーレの国境を警備する、あのベルン辺境伯?」
「は、はい、そのように伺っております。王太子殿下が救援を求めたのもその方だと…」
ベルン辺境伯の息子とジュストは、二人が学園に在籍している間、一方的に彼がジュストを目の敵にしていた。
剣術大会でのギャレットとの諍いも原因のひとつではあると思う。
しかし、今回は王太子殿下の公務なのだから、個人的に何かあったとしても、それは持ち出すべき話ではない。
「わかった。ありがとう。何かわかったらすぐに知らせて」
そう言ってロバーツを見送ったが、頭の中は大混乱だった。
ジュスト、ジュスト、ジュスト、ジュスト
無事だろうか。
血の気が引き、指先が氷のように冷たい。
「モヒナート様」
おぼつかない足取りで廊下を歩いていると、女生徒に声をかけられた。
「なに?」
いつもはもっと愛想よく振る舞うギャレットも、今はそんな余裕はない。
素っ気なく答えると、女生徒は怯みながらも、シエナ=ドレーゲル嬢がダンスパーティーのことで相談があると言った。
「今は…いや、いいわかった」
今はダンスパーティーのことなど考えられないが、彼女には関係のないことだ。会って今はそれどころではないと伝えようと、彼女が待っていると言う部屋へと向かった。
「シエナ嬢、ギャレットです」
彼女が待っていると告げた場所は、学園の生徒があまり足を踏み入れない場所だった。
普段ならなぜこんなこところにと、不審に思うギャレットも、ジュストのことで注意欠陥になっていた。
「シエナ嬢?」
部屋の中は薄暗く、乱雑に物が置かれていた。
人の気配がして声をかけると、空気が動いてとこかで嗅いだことのある香りが漂ってきた。
「シ…」
名前を口に仕掛けて、ギャレットの顔が強張った。
そこにいたのは、シエナではなく、ミーシャだった。
一瞬ロバーツの言った意味が理解出来ず、その場でフリーズした。
「え…ど…」
どうして?
「今朝、伝令が王宮にそのことを伝えに来たそうです。帰国の途中の国境で襲われ、王太子殿下を逃がすために、ジュスト様と数人の護衛が取り残されたそうです。殿下が近くの領主に協力を仰がれて戻られた時には、数人がその場に重傷を負って倒れていたそうですが、ジュスト様は見当たらなかったと、ギャレット様!」
ふらりと体が揺れたのをロバーツが支える。
「だ、大丈夫…それで?」
「殿下はその場に残って捜索を続けるおつもりてしたが、周りが二次被害を懸念して、無理矢理殿下を連れ戻そうとしているそうです」
それは当然だ。襲撃を受けた王太子殿下の身に、また何かあっては一大事である。
「ギャレット様にお伝えすべきか、旦那様たちも意見が分かれたところですが、万が一のことを考えると…」
「万が一? 万が一って何?」
ロバーツに問い質したが、その意味をギャレットもわかっていた。
それが、ジュストの「死」を意味するということを。
「と、とにかく、アベリー家のステファン様が捜索に向かわれるということです。何か情報が入りましたらすぐに報告に参りますので、ギャレット様はこのまま学園でお過ごしくださいとの、旦那様からのお言葉です」
「無理だよ、ジュストが大変な目に合っているのに…」
「お気持ちはわかります。ですが、ジュスト様は御自分のことで、ギャレット様が学業を疎かにすることを、お喜びにはなりません」
ロバーツの言わんとすることはわかる。取り乱した自分にそう言えと、言われてきたのだろう。
「今はアベリー様にお任せしましょう。国王陛下も王太子殿下一行と知ってのことなら、外交問題になると、捜索隊をアベリー様にお任せになりました」
「そう…そうだね。ステファンなら…きっと…ところで誰が殿下やジュストたちを襲った 盗賊とか?」
ただの物取りの犯行か。
「それもまだはっきりとはわかっていません。襲ってきた者は間違いなくシェルテーレの者らしいと、ベルン辺境伯様が…」
「ベルン? 今ベルンって言った? イベルカイザとシェルテーレの国境を警備する、あのベルン辺境伯?」
「は、はい、そのように伺っております。王太子殿下が救援を求めたのもその方だと…」
ベルン辺境伯の息子とジュストは、二人が学園に在籍している間、一方的に彼がジュストを目の敵にしていた。
剣術大会でのギャレットとの諍いも原因のひとつではあると思う。
しかし、今回は王太子殿下の公務なのだから、個人的に何かあったとしても、それは持ち出すべき話ではない。
「わかった。ありがとう。何かわかったらすぐに知らせて」
そう言ってロバーツを見送ったが、頭の中は大混乱だった。
ジュスト、ジュスト、ジュスト、ジュスト
無事だろうか。
血の気が引き、指先が氷のように冷たい。
「モヒナート様」
おぼつかない足取りで廊下を歩いていると、女生徒に声をかけられた。
「なに?」
いつもはもっと愛想よく振る舞うギャレットも、今はそんな余裕はない。
素っ気なく答えると、女生徒は怯みながらも、シエナ=ドレーゲル嬢がダンスパーティーのことで相談があると言った。
「今は…いや、いいわかった」
今はダンスパーティーのことなど考えられないが、彼女には関係のないことだ。会って今はそれどころではないと伝えようと、彼女が待っていると言う部屋へと向かった。
「シエナ嬢、ギャレットです」
彼女が待っていると告げた場所は、学園の生徒があまり足を踏み入れない場所だった。
普段ならなぜこんなこところにと、不審に思うギャレットも、ジュストのことで注意欠陥になっていた。
「シエナ嬢?」
部屋の中は薄暗く、乱雑に物が置かれていた。
人の気配がして声をかけると、空気が動いてとこかで嗅いだことのある香りが漂ってきた。
「シ…」
名前を口に仕掛けて、ギャレットの顔が強張った。
そこにいたのは、シエナではなく、ミーシャだった。
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