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67 罠②
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ミーシャ=オハイエが婚約者候補?
よりによって彼女の名前を聞くとは思わなかった。
どこかの名前も聞いたことのないご令嬢の名前を聞くほうが、余程ましだった。
「シエナ嬢はその噂を信じていらっしゃるのですか?」
声が怒りに震える。だが、怒るべき相手は彼女ではない。彼女はただ噂話を教えてくれているだけだ。
「最初は信じていましたけど、パートナーとして何度かご一緒して、単なる噂で事実無根だと理解しましたわ。ギャレット様の口から彼女のお名前すら出てきませんもの」
何度か会って共に過ごす内にその噂が真実とはかけ離れていると、彼女は理解してくれた。
しかし、裏を返せば、ギャレットと親しくない人は、その噂を信じているということだ。
「まだ決まったわけではないけれど、ここだけの話だから、誰にも言わないでね。貴女だけに話すわ。と言って五人のご令嬢から同じ話を聞きました」
ここだけ。
あなただけ。
他には内緒。
という前置きが、いかに信用できないものか。人の噂に戸は立てられない。
それとも、拡散を狙って流したのだろうか。
「絶対、天地が返っても彼女との婚約も結婚も有りえません」
強く言い放つ。
「なら、早目に手を打たれた方がよろしいと思いますわ。噂が独り歩きして、本当のことになる前に」
「そうします。教えていただきありがとうございます」
「いえ、私もきちんと否定できずすみません」
その後、シエナとダンスの練習を始めたが、ギャレットは半分上の空だった。
モヒナート家側からそんな話を持ち出すことなどもちろんない。
噂はきっとオハイエ家側からだろう。
念の為、家にも確認してみた。自分と誰かの婚約話が進んでいるのか。
もしくは王命か何かなのか。
それに対する母からの返事は、そういう話はないが、母も茶会の席で、ご子息のお相手が決まったみたいですね。残念です。我が家とご縁を結んでほしかった。などと何人かに言われたらしい。
「私も旦那様もあなたの意見を聞かずに話を進めることはありません。まして、オハイエ家との縁は、レーヌの件を考えれば、あり得ないことだ」
そう手紙には書かれていた。
母が耳にした話が一体誰から出たものか。
母も噂の出処について確認して見るとも書いてあった。
「私もご令嬢たちに聞いて見るわ」
「僕たちも協力するよ」
「ありがとう、皆」
ラエルもクリスたちも、心配してくれた。
そして当のミーシャ=オハイエはと言えば、避けているのか諦めたのか、ギャレットの前を彷徨くことはなくなっていた。
またわざとらしく近づいてきたら、今度こそ文句のひとつも言ってやろうと思っていただけに、拍子抜けした。
「モヒナート君、家から使いの者が来ています」
次の授業は剣術だったので、着替えて闘技場へ向かう途中で、ギャレットは事務員に呼び止められた。
「使い…ですか?」
思い当たるのは母からのこの前の手紙の内容だった。
もしかしたら、婚約の噂のことで何か知らせてくれたのだろうか。
それでも手紙でも良かったのに、人を寄越すなんて。
「何か大変なことが起こったのか、とても慌てている様子でしたよ」
「わかりました。ありがとうございます。ごめん、クリス、遅れるって先生に伝えておいてもらえるかな」
「わかった」
急いで玄関に向かうと、そこにはロバーツがそわそわした様子で待っていた。
「ロバーツ、どうしたんだ?」
「ああ、ギャレット様、大変です」
ロバーツは青ざめた顔でギャレットに駆け寄って来た。
「ジュスト様が」
「え、兄上が?」
「何者かに襲われて行方不明なのです」
「え!」
よりによって彼女の名前を聞くとは思わなかった。
どこかの名前も聞いたことのないご令嬢の名前を聞くほうが、余程ましだった。
「シエナ嬢はその噂を信じていらっしゃるのですか?」
声が怒りに震える。だが、怒るべき相手は彼女ではない。彼女はただ噂話を教えてくれているだけだ。
「最初は信じていましたけど、パートナーとして何度かご一緒して、単なる噂で事実無根だと理解しましたわ。ギャレット様の口から彼女のお名前すら出てきませんもの」
何度か会って共に過ごす内にその噂が真実とはかけ離れていると、彼女は理解してくれた。
しかし、裏を返せば、ギャレットと親しくない人は、その噂を信じているということだ。
「まだ決まったわけではないけれど、ここだけの話だから、誰にも言わないでね。貴女だけに話すわ。と言って五人のご令嬢から同じ話を聞きました」
ここだけ。
あなただけ。
他には内緒。
という前置きが、いかに信用できないものか。人の噂に戸は立てられない。
それとも、拡散を狙って流したのだろうか。
「絶対、天地が返っても彼女との婚約も結婚も有りえません」
強く言い放つ。
「なら、早目に手を打たれた方がよろしいと思いますわ。噂が独り歩きして、本当のことになる前に」
「そうします。教えていただきありがとうございます」
「いえ、私もきちんと否定できずすみません」
その後、シエナとダンスの練習を始めたが、ギャレットは半分上の空だった。
モヒナート家側からそんな話を持ち出すことなどもちろんない。
噂はきっとオハイエ家側からだろう。
念の為、家にも確認してみた。自分と誰かの婚約話が進んでいるのか。
もしくは王命か何かなのか。
それに対する母からの返事は、そういう話はないが、母も茶会の席で、ご子息のお相手が決まったみたいですね。残念です。我が家とご縁を結んでほしかった。などと何人かに言われたらしい。
「私も旦那様もあなたの意見を聞かずに話を進めることはありません。まして、オハイエ家との縁は、レーヌの件を考えれば、あり得ないことだ」
そう手紙には書かれていた。
母が耳にした話が一体誰から出たものか。
母も噂の出処について確認して見るとも書いてあった。
「私もご令嬢たちに聞いて見るわ」
「僕たちも協力するよ」
「ありがとう、皆」
ラエルもクリスたちも、心配してくれた。
そして当のミーシャ=オハイエはと言えば、避けているのか諦めたのか、ギャレットの前を彷徨くことはなくなっていた。
またわざとらしく近づいてきたら、今度こそ文句のひとつも言ってやろうと思っていただけに、拍子抜けした。
「モヒナート君、家から使いの者が来ています」
次の授業は剣術だったので、着替えて闘技場へ向かう途中で、ギャレットは事務員に呼び止められた。
「使い…ですか?」
思い当たるのは母からのこの前の手紙の内容だった。
もしかしたら、婚約の噂のことで何か知らせてくれたのだろうか。
それでも手紙でも良かったのに、人を寄越すなんて。
「何か大変なことが起こったのか、とても慌てている様子でしたよ」
「わかりました。ありがとうございます。ごめん、クリス、遅れるって先生に伝えておいてもらえるかな」
「わかった」
急いで玄関に向かうと、そこにはロバーツがそわそわした様子で待っていた。
「ロバーツ、どうしたんだ?」
「ああ、ギャレット様、大変です」
ロバーツは青ざめた顔でギャレットに駆け寄って来た。
「ジュスト様が」
「え、兄上が?」
「何者かに襲われて行方不明なのです」
「え!」
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