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64 新たな展開②
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「ギャレット様、ご自宅へお帰りですか?」
クリスやマルセル、ラエルたちが家に帰るのを見送り、モヒナート家から来る迎えの馬車を待っていると、ミーシャ=オハイエがが声を掛けてきた。
少し離れた場所では彼女の取り巻きである令息二人が控えている。何を勘違いしているのか、彼女の外面に騙されているご令息達がいることは耳にしていた。
「はあ~」
ギャレットはあからさまに大きなため息を吐いた。礼儀正しい態度でないことはわかっている。
「僕のことは放っておいてくれないか。ご友人方が待っているよ」
「ああ、彼らは、なぜか私の側にいたいと仰るので仕方なく・・私が頼んだわけではありません」
「そう。僕も君に話しかけてほしいと頼んだ覚えはない」
つんと顔を逸らし、素っ気なく答える。
ミーシャの笑顔が少しひきつる。大方自分がもてることをアピールしたいのだろうけど、彼女に興味も無いし、話し相手がいるならそっちの方へ行ってほしいと思う。
「ギャレット様は、私が存じ上げているギャレット様とは、随分違うのですね」
「君は僕の何を知っているの」
漂う香水の薫りが鼻腔に突き刺さるようだ。ポケットからハンカチを取り出し鼻を覆った。これで自分がどれほど臭いか悟ってくれるといいのだが。
向こうから馬車が近づいてくる。ようやくモヒナート家の馬車が来た。
「はっきり言わないと解ってもらえないようだから、言う。悪いけど、僕は君と関わる気は無い。君のことはこれっぽっちも興味が無いし、この先出来れば関わりたくないと思っている」
目の前で馬車が止まる。御者台からロバーツが慌てて降りてきた。
「失礼、馬車が来たようだ」
「も、申し訳ございません、ギャレット様。早くに出たのですが、途中で馬の蹄鉄が外れてしまって。急いで鍛冶屋に寄って直してもらっていたので」
「ロバーツ、大丈夫だよ」
ロバーツは先に馬車の扉を開けてから、地面に置いてあった鞄を持ち上げ、馬車の後ろに取り付ける。
「ギャレット様はお優しいのですね。私なら待たされたことに怒っているところですわ。主人を待たせるなどあり得ませんもの」
馬車の足台に片方の足をかけたギャレットに、ミーシャが言った。
「怒る? これくらいのことで怒ることはしません。彼だって怠けていたわけではなく、ちゃんと理由がありますから」
「それだって嘘かも知れませんわ。使用人に甘い顔をしてはつけあがります。こういうときはきちんと叱らないと」
「それは体罰を与えろと言うことですか」
「そうですわ。使用人はすぐに怠けようとしますし」
「オハイエ家は使用人をそんな風に扱うのですね。それとも使用人だけですか?」
いい加減彼女との会話はうんざりしてギャレットが少し声を荒げた。
「どういう意味ですの?」
一瞬彼女の顔が強張る。しかしすぐに何も解りませんと言った無害な振りをする。
「体罰を与えるのは使用人だけでないのでは?」
全てを知っているぞという意味を込めて彼女を見据える。
「そ、それは・・」
「これが最後です。今後、不用意に僕に話しかけないでいただきたい。貴女が万が一、僕と同じクラスになったなら、その時はクラスメイトとして最低限のお付き合いはさせていただきます。しかし、それ以外はご遠慮願いたい」
今の彼女の実力から特進に上り詰めるのは無理だとわかっていて、そう言った。
「な・・・」
「私の言葉は通じていますか」
ふるふると震えるミーシャの様子から、ようやく話が通じたとほっとして、馬車に乗り込んだ。
「悪役令息のくせに」
馬車が出発する直前、ミーシャからそんな言葉が聞こえた。
「え?」
振り返って彼女を見た。そこにはきつい眼差しで此方を見るミーシャの姿があった。
(悪役令息?)
クリスやマルセル、ラエルたちが家に帰るのを見送り、モヒナート家から来る迎えの馬車を待っていると、ミーシャ=オハイエがが声を掛けてきた。
少し離れた場所では彼女の取り巻きである令息二人が控えている。何を勘違いしているのか、彼女の外面に騙されているご令息達がいることは耳にしていた。
「はあ~」
ギャレットはあからさまに大きなため息を吐いた。礼儀正しい態度でないことはわかっている。
「僕のことは放っておいてくれないか。ご友人方が待っているよ」
「ああ、彼らは、なぜか私の側にいたいと仰るので仕方なく・・私が頼んだわけではありません」
「そう。僕も君に話しかけてほしいと頼んだ覚えはない」
つんと顔を逸らし、素っ気なく答える。
ミーシャの笑顔が少しひきつる。大方自分がもてることをアピールしたいのだろうけど、彼女に興味も無いし、話し相手がいるならそっちの方へ行ってほしいと思う。
「ギャレット様は、私が存じ上げているギャレット様とは、随分違うのですね」
「君は僕の何を知っているの」
漂う香水の薫りが鼻腔に突き刺さるようだ。ポケットからハンカチを取り出し鼻を覆った。これで自分がどれほど臭いか悟ってくれるといいのだが。
向こうから馬車が近づいてくる。ようやくモヒナート家の馬車が来た。
「はっきり言わないと解ってもらえないようだから、言う。悪いけど、僕は君と関わる気は無い。君のことはこれっぽっちも興味が無いし、この先出来れば関わりたくないと思っている」
目の前で馬車が止まる。御者台からロバーツが慌てて降りてきた。
「失礼、馬車が来たようだ」
「も、申し訳ございません、ギャレット様。早くに出たのですが、途中で馬の蹄鉄が外れてしまって。急いで鍛冶屋に寄って直してもらっていたので」
「ロバーツ、大丈夫だよ」
ロバーツは先に馬車の扉を開けてから、地面に置いてあった鞄を持ち上げ、馬車の後ろに取り付ける。
「ギャレット様はお優しいのですね。私なら待たされたことに怒っているところですわ。主人を待たせるなどあり得ませんもの」
馬車の足台に片方の足をかけたギャレットに、ミーシャが言った。
「怒る? これくらいのことで怒ることはしません。彼だって怠けていたわけではなく、ちゃんと理由がありますから」
「それだって嘘かも知れませんわ。使用人に甘い顔をしてはつけあがります。こういうときはきちんと叱らないと」
「それは体罰を与えろと言うことですか」
「そうですわ。使用人はすぐに怠けようとしますし」
「オハイエ家は使用人をそんな風に扱うのですね。それとも使用人だけですか?」
いい加減彼女との会話はうんざりしてギャレットが少し声を荒げた。
「どういう意味ですの?」
一瞬彼女の顔が強張る。しかしすぐに何も解りませんと言った無害な振りをする。
「体罰を与えるのは使用人だけでないのでは?」
全てを知っているぞという意味を込めて彼女を見据える。
「そ、それは・・」
「これが最後です。今後、不用意に僕に話しかけないでいただきたい。貴女が万が一、僕と同じクラスになったなら、その時はクラスメイトとして最低限のお付き合いはさせていただきます。しかし、それ以外はご遠慮願いたい」
今の彼女の実力から特進に上り詰めるのは無理だとわかっていて、そう言った。
「な・・・」
「私の言葉は通じていますか」
ふるふると震えるミーシャの様子から、ようやく話が通じたとほっとして、馬車に乗り込んだ。
「悪役令息のくせに」
馬車が出発する直前、ミーシャからそんな言葉が聞こえた。
「え?」
振り返って彼女を見た。そこにはきつい眼差しで此方を見るミーシャの姿があった。
(悪役令息?)
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