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59 湧き上がる不安②
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夢を見た。
これまでギャレットが見てきた夢は、小説どおりにジュストに殺される夢だった。
だが、その夜は違った。
どこを探してもジュストが見つからないという夢だった。
いなくなったどころか、ギャレットだけがジュストを覚えていて、誰もジュストを覚えていなくてジュストの部屋も空っぽ、ジュストの存在を示すものが何もなかった。
まるでジュスト=モヒナートなど最初からこの世にいなかったかのように。
早く見つけないと、ギャレットもジュストを忘れてしまうのではないか。そんな恐怖にかられてあちこち探し回っているうちに、ジュストをようやく見つけた。
『ジュスト!』
ギャレットが声を掛けた。
しかしジュストは聞こえなかったのか、振り向いてくれなかった。
それどころか、さっさとギャレットに背中を向けたまま歩き去って行く。
『ジュスト、僕だよ、ギャレットだよ』
追いかけようとしたが、なぜか体が重くて足が動かない。
必死で叫び続けたが、どんどんジュストは遠ざかり、やがて見えなくなった。
そこで目が覚めた。
そしてすぐ目の前にジュストの整った顔があって驚いた。
(そっか、昨夜はジュストの部屋で寝たんだ)
いつの間にかジュストに体を寄せて彼の腕を枕にして寝ていたようだ。
夢の中で体が動かなかったのもわかる。ジュストの腕がギャレットの体を抱き込んでいる。
(いつの間に寝ちゃったんだろ)
「ギャレット?」
ジュストの腕から抜け出そうとした際に起こしてしまった。
「ご、ごめん、ジュスト。重かったね」
「大丈夫だ。ちっとも重くない」
「え、それって頭が空っぽってこと?」
「そうとも言うな」
「ひ、酷いよ」
優しい笑顔でそう言うので、冗談だとわかっているが、一応怒った振りをする。
「あ、あのさ、寝てる時、僕、何か言ってた?」
「何か?」
「うん、その…寝言」
「さあ、どうだろう。俺もずっと起きていたわけじゃないから」
「そ、そう」
夢の中で叫ぶと寝言になったりする。
変なことを口走ったりしなかったかと心配したが、どうやら大丈夫らしい。
「嫌な夢でも見たのか、顔色が悪いぞ」
ジュストが手を伸ばし、前髪を掻き分けて額に手をやる。そのままこめかみを通り、頬へと滑り落ちる。
「大丈夫」
「本当か? 昔みたいに高熱が出て何日も寝込むとか、もうしていないな」
「もう、何年前の話だよ」
「八年前か。俺が学園に入った年だ」
「よく覚えているね」
ギャレットも覚えていたが、それは自分のことだからだ。
ジュストがそんな昔のことをはっきり覚えているとは思わなかった。
「ギャレットのことなら、なんだって覚えている」
「僕もジュストのことなら何だって覚えている。ジュスト検定があったら間違いなく一番の成績だね」
「ジュスト検定、何だそれ。ギャレットは面白いことを言うな」
微笑むジュストの笑顔にほっとする。
さっきの夢では、ジュストはいくら呼んでもこちらを振り向いてはくれなかった。
今目の前で横たわりこちらを向いているジュストが本物で、あれは夢だ。
ジュストがギャレットを無視するわけがない。
ギャレットそう心の中で何度も言い聞かせた。
「ジュスト、僕を忘れないでね」
「俺がギャレットを忘れる? どうしてそんなことを思う?」
「……ただ、さっき見た夢の中で、いくら呼んでも、ジュストは振り向いてくれなかったから」
「単なる夢だ。気にするな。こうすれば安心するか?」
ジュストがギュッとギャレットを強く抱きしめる。
伝わるジュストの体温と、鼓動がギャレットの不安を掻き消した。
兄弟以上に仲がいい二人の関係は、ずっとこのままなのか、それてもこれから先で大きな変化が訪れるのか。
外はようやく空が白み始めていた。
これまでギャレットが見てきた夢は、小説どおりにジュストに殺される夢だった。
だが、その夜は違った。
どこを探してもジュストが見つからないという夢だった。
いなくなったどころか、ギャレットだけがジュストを覚えていて、誰もジュストを覚えていなくてジュストの部屋も空っぽ、ジュストの存在を示すものが何もなかった。
まるでジュスト=モヒナートなど最初からこの世にいなかったかのように。
早く見つけないと、ギャレットもジュストを忘れてしまうのではないか。そんな恐怖にかられてあちこち探し回っているうちに、ジュストをようやく見つけた。
『ジュスト!』
ギャレットが声を掛けた。
しかしジュストは聞こえなかったのか、振り向いてくれなかった。
それどころか、さっさとギャレットに背中を向けたまま歩き去って行く。
『ジュスト、僕だよ、ギャレットだよ』
追いかけようとしたが、なぜか体が重くて足が動かない。
必死で叫び続けたが、どんどんジュストは遠ざかり、やがて見えなくなった。
そこで目が覚めた。
そしてすぐ目の前にジュストの整った顔があって驚いた。
(そっか、昨夜はジュストの部屋で寝たんだ)
いつの間にかジュストに体を寄せて彼の腕を枕にして寝ていたようだ。
夢の中で体が動かなかったのもわかる。ジュストの腕がギャレットの体を抱き込んでいる。
(いつの間に寝ちゃったんだろ)
「ギャレット?」
ジュストの腕から抜け出そうとした際に起こしてしまった。
「ご、ごめん、ジュスト。重かったね」
「大丈夫だ。ちっとも重くない」
「え、それって頭が空っぽってこと?」
「そうとも言うな」
「ひ、酷いよ」
優しい笑顔でそう言うので、冗談だとわかっているが、一応怒った振りをする。
「あ、あのさ、寝てる時、僕、何か言ってた?」
「何か?」
「うん、その…寝言」
「さあ、どうだろう。俺もずっと起きていたわけじゃないから」
「そ、そう」
夢の中で叫ぶと寝言になったりする。
変なことを口走ったりしなかったかと心配したが、どうやら大丈夫らしい。
「嫌な夢でも見たのか、顔色が悪いぞ」
ジュストが手を伸ばし、前髪を掻き分けて額に手をやる。そのままこめかみを通り、頬へと滑り落ちる。
「大丈夫」
「本当か? 昔みたいに高熱が出て何日も寝込むとか、もうしていないな」
「もう、何年前の話だよ」
「八年前か。俺が学園に入った年だ」
「よく覚えているね」
ギャレットも覚えていたが、それは自分のことだからだ。
ジュストがそんな昔のことをはっきり覚えているとは思わなかった。
「ギャレットのことなら、なんだって覚えている」
「僕もジュストのことなら何だって覚えている。ジュスト検定があったら間違いなく一番の成績だね」
「ジュスト検定、何だそれ。ギャレットは面白いことを言うな」
微笑むジュストの笑顔にほっとする。
さっきの夢では、ジュストはいくら呼んでもこちらを振り向いてはくれなかった。
今目の前で横たわりこちらを向いているジュストが本物で、あれは夢だ。
ジュストがギャレットを無視するわけがない。
ギャレットそう心の中で何度も言い聞かせた。
「ジュスト、僕を忘れないでね」
「俺がギャレットを忘れる? どうしてそんなことを思う?」
「……ただ、さっき見た夢の中で、いくら呼んでも、ジュストは振り向いてくれなかったから」
「単なる夢だ。気にするな。こうすれば安心するか?」
ジュストがギュッとギャレットを強く抱きしめる。
伝わるジュストの体温と、鼓動がギャレットの不安を掻き消した。
兄弟以上に仲がいい二人の関係は、ずっとこのままなのか、それてもこれから先で大きな変化が訪れるのか。
外はようやく空が白み始めていた。
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