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57 互いの成長②
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ジュストの予想どおり、次の週末ステファンとレーヌがモヒナート家にやってきた。
「ステファン、おめでとう」
「小さい頃から知っているあなたが婚約なんて、感慨深い」
「ありがとうございます、ラファイエ様、ナディア様」
「ありがとうございます」
モヒナート家の応接室ではなく居間に通したのは、それだけステファンがモヒナート家と近しい間柄だからだ。
二人は着いたときからピタリと身を寄せ合って、お互いを大切に思っているのがわかる。
「ねえ、ステファンのどこが良かったの?」
「ギャレット、いきなりその質問か」
「それは大事な質問ね。どうなの?」
ギャレットのいきなりの質問に、ステファンが顔を顰める。ナディアもその質問の答えには興味津々に乗り出した。
「家でも同じことを母に聞かれました。俺にではなく、彼女に聞くのはなぜですか」
「ステファンの意見はどうでもいいからだろ」
「言えてる」
「おいジュスト、お前も一緒になって俺を辱めるのか」
「あら、恥ずかしいことなの?」
「そ、そうじゃないけど…彼女は奥ゆかしいんです。そんな風に聞かれたら何も言えない」
「彼は、他人からの言葉ではなく、私自身を見ていつも接してくれます。どんなときも明るくて、私は彼のそんな明るさに何度も救われました」
小説の中でレーヌの心情として書かれていたから、ギャレットはもちろん予測できた答えだった。
「意外とまとも」
「どんな答えを期待していたのかな、ギャレット」
「もっと情熱的なのを期待してた」
「あなたの義理のお母様には何度かお会いしたことがあります。あちらは大丈夫でしたの?」
ステファンとの婚約は普通なら大歓迎な筈だが、相手はレーヌが幸せになることを望んでいない節がある。
手放しで喜んだとは思えない。
ちらりとレーヌがステファンを見る。それに対してステファンが大きく頷いた。
「義母は、私がアベリー侯爵家には相応しくないと反対しましたが、父の恩師であるカトリー卿が口添えしてくれて、父は賛成するしかなかったようです。母方の親族にもステファン様が根回ししてくれて、反対すれば父の事業にも影響が出るでしょう」
「つまり、脅し」
「ギャレット」
脅して伯爵に首を縦に振らせたと、言おうとしてジュストに口を塞がれた。
「構いません。悲しいことですが、それが真実です。そうでもしないと、父は彼との結婚を許してくれませでした」
「その・・他のご家族は?」
遠慮がちにナディアが訊ねると、無言で彼女は首を振った。
「そう、残念ね」
「仕方がありません。でも、私の家族は母と兄がいます。もうこの世にいませんが・・それに、ステファンと彼の家族がこれから私の家族ですから」
「おにい・・さん?」
レーヌに兄がいた? そんな設定あったかな。少なくとも小説の中には出てこなかった。
これもバグ?
「お母上が亡くなられたことは存じ上げておりますが、他にもご兄弟がいらっしゃるの?」
「双子の兄なのです。母と一緒に暴徒に襲われ生死はわかっておりません。母のように遺体はみつかりませんでしたから。でも状況から考えて父はもう亡くなっていると思っています」
もう亡くなっていて話の流れに関係ないから登場しなかったのか。
「ステファンの家族になるなら、我が家もあなたの家族よ。ねえ、あなた」
「そうだな。アベリー家とはずっと家族ぐるみでつきあいを続けている。ジュストと職場も同じだし、何かと縁がある。これからもよろしく」
「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします」
ここへ来たときは緊張していたレーヌの表情が少し緩んだが、ふと、悲しそうな表情を浮かべギャレットとジュストを見た。
「同じ義兄弟でも、こちらのご子息様達はとても仲が良くて、うらやましいです。父は義母と連れ子のことばかり気にして、血の繋がりって何でしょう」
「ギャレットも五歳までは何かとジュストに反発していましたよ。でも、ある日怪我をして目覚めてから急に人が変わったようになって、それからはこちらが呆れるくらいべったりになったの。今でもそうよ」
「お兄さんのこと、好き?」
レーヌがナディアの話を聞いてギャレットに尋ねた。
「はい」
力強いギャレットの返事に、レーヌが今度こそ心から微笑んだ。
「ステファン、おめでとう」
「小さい頃から知っているあなたが婚約なんて、感慨深い」
「ありがとうございます、ラファイエ様、ナディア様」
「ありがとうございます」
モヒナート家の応接室ではなく居間に通したのは、それだけステファンがモヒナート家と近しい間柄だからだ。
二人は着いたときからピタリと身を寄せ合って、お互いを大切に思っているのがわかる。
「ねえ、ステファンのどこが良かったの?」
「ギャレット、いきなりその質問か」
「それは大事な質問ね。どうなの?」
ギャレットのいきなりの質問に、ステファンが顔を顰める。ナディアもその質問の答えには興味津々に乗り出した。
「家でも同じことを母に聞かれました。俺にではなく、彼女に聞くのはなぜですか」
「ステファンの意見はどうでもいいからだろ」
「言えてる」
「おいジュスト、お前も一緒になって俺を辱めるのか」
「あら、恥ずかしいことなの?」
「そ、そうじゃないけど…彼女は奥ゆかしいんです。そんな風に聞かれたら何も言えない」
「彼は、他人からの言葉ではなく、私自身を見ていつも接してくれます。どんなときも明るくて、私は彼のそんな明るさに何度も救われました」
小説の中でレーヌの心情として書かれていたから、ギャレットはもちろん予測できた答えだった。
「意外とまとも」
「どんな答えを期待していたのかな、ギャレット」
「もっと情熱的なのを期待してた」
「あなたの義理のお母様には何度かお会いしたことがあります。あちらは大丈夫でしたの?」
ステファンとの婚約は普通なら大歓迎な筈だが、相手はレーヌが幸せになることを望んでいない節がある。
手放しで喜んだとは思えない。
ちらりとレーヌがステファンを見る。それに対してステファンが大きく頷いた。
「義母は、私がアベリー侯爵家には相応しくないと反対しましたが、父の恩師であるカトリー卿が口添えしてくれて、父は賛成するしかなかったようです。母方の親族にもステファン様が根回ししてくれて、反対すれば父の事業にも影響が出るでしょう」
「つまり、脅し」
「ギャレット」
脅して伯爵に首を縦に振らせたと、言おうとしてジュストに口を塞がれた。
「構いません。悲しいことですが、それが真実です。そうでもしないと、父は彼との結婚を許してくれませでした」
「その・・他のご家族は?」
遠慮がちにナディアが訊ねると、無言で彼女は首を振った。
「そう、残念ね」
「仕方がありません。でも、私の家族は母と兄がいます。もうこの世にいませんが・・それに、ステファンと彼の家族がこれから私の家族ですから」
「おにい・・さん?」
レーヌに兄がいた? そんな設定あったかな。少なくとも小説の中には出てこなかった。
これもバグ?
「お母上が亡くなられたことは存じ上げておりますが、他にもご兄弟がいらっしゃるの?」
「双子の兄なのです。母と一緒に暴徒に襲われ生死はわかっておりません。母のように遺体はみつかりませんでしたから。でも状況から考えて父はもう亡くなっていると思っています」
もう亡くなっていて話の流れに関係ないから登場しなかったのか。
「ステファンの家族になるなら、我が家もあなたの家族よ。ねえ、あなた」
「そうだな。アベリー家とはずっと家族ぐるみでつきあいを続けている。ジュストと職場も同じだし、何かと縁がある。これからもよろしく」
「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします」
ここへ来たときは緊張していたレーヌの表情が少し緩んだが、ふと、悲しそうな表情を浮かべギャレットとジュストを見た。
「同じ義兄弟でも、こちらのご子息様達はとても仲が良くて、うらやましいです。父は義母と連れ子のことばかり気にして、血の繋がりって何でしょう」
「ギャレットも五歳までは何かとジュストに反発していましたよ。でも、ある日怪我をして目覚めてから急に人が変わったようになって、それからはこちらが呆れるくらいべったりになったの。今でもそうよ」
「お兄さんのこと、好き?」
レーヌがナディアの話を聞いてギャレットに尋ねた。
「はい」
力強いギャレットの返事に、レーヌが今度こそ心から微笑んだ。
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