【完結】TL小説の悪役令息は死にたくないので不憫系当て馬の義兄を今日もヨイショします

七夜かなた

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46 卒業後の人生①

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何て言ったの?と聞きたかったが、翌朝目が覚めると、ジュストはもう学園に向けて出発していた。 
どんな顔をすればいいか、ちょっと気不味くもあったので、少しホッとした。

背中に感じたジュストのがっしりとした胸板と温かさ。
添えた手の大きさ。包み込まれる安心感。
優しく耳元で上手だよ。そうだよ。と囁くジュストの声が耳に残っている。

「わぁー」

一人で思い出して頭を抱えて寝台でジタバタする。
兄が、若しくは父親が思春期を迎えた少年に教えるのは普通のことなんだろうか。
しかし、純粋にそれだけ?
死亡フラグから何か違うフラグが立ちそうだ。
でも、それは自分だけだろう。
ジュストには誰か思う人がいる。
それは昨晩の話の中ではっきりと感じたことだ。
レーヌなのか、それとも留学先で知り合った誰かギャレットの知らない人なのか。
弟として、いつかは誰かと一緒に人生を歩むジュストを祝福する時が来るのか。

ジタバタするのをやめて、一人寝台に仰向けになり上を見上げながら、そうなったら素直におめでとうと言えるか自問する。

「兄上最高!」
「兄上すごい!」
「兄上大好き!」

そうヨイショしてきたが、いつの間にかジュストを目で負い、彼の良いところばかり見るようになり、そして彼のことが大好きになった。

いや、最初から、小説を読んでいたころから彼のことが気になっていたのかも。
小説の主人公はレーヌとステファン。読者は当然二人に肩入れし共感し、二人の幸せに涙する。TL小説なら二人のエッチなシーンもドキドキする。
捨てる神あれば拾う神あり。
小説では捨てられた側のギャレットやジュストにも、こうして人生があり、生きていく時間軸が存在する。
主人公が捨てた男主人公以外との未来。 
別の誰かと歩む人生があったっていい。
 
トゥクン

心臓が跳ねる。

「やだな、ジュストは兄だよ」

ジュストのあの優しさは、慕ってくる弟に向けたもの。
恋人にはもっと違う優しさを見せるんだろう。

ジュストを大事に思えば思うほど、自分以外の誰かとの未来が開けていると考えると、胸が苦しくなった。

******

一年半の留学から学園に復学したジュストたち。
しかし、その半年後には、もう卒業式だ。
ちなみにその年の剣術大会は留学中だったため、二人は出場できていない。その前の年も留学準備で忙しくて参加を辞退していた。
だから、あの剣術大会以降、学園にギャレットが行くことはなかった。

在学生で王太子の側近だったのはジュストとステファンだけ。
彼らは卒業後は王宮内で役職を与えられ、王太子の側近として働く。
これから貴族として自領の領地経営に勤しむか、それとも騎士の道へ進むのか。国の機関で職を得て働くのか。卒業後の人生は様々。
女性なら家に戻り、花嫁修業をしたり、すぐに結婚という人もいる。
中には女官などになり、王妃様や王女様に仕える人もいるが、それはほんの僅かな人たちに過ぎないらしい。
ギャレットの母親もステファンの母親も、卒業時にはすでに結婚相手が決まっていた。

レーヌはどうなんだろう。
そう思いながらも、情報はなかった。

そして、年が明けてあっという間に日は過ぎて、ジュストたちの卒業式になった。
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