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34 闇の天使②
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「ありがとうギャレット。母上たちのところへ行ったら、こっちへ来ていると聞いたんだ。俺がお前を見落とすはずがないのに、どこですれ違ったのか」
「闇の天使?」
ギャレットがそう聞き返すとジュストは表情を固くし「チッ」と舌打ちした。
「気にするな」
そう言って此方に向けるジュストの顔は口は笑っているが、目が笑っていない。
「え、でも…闇の天使って、兄上のこと、だよね?」
「だから気にするな」
「だって…」
「勝手に周りが言っているだけで、俺は認めて」
「カッコいい」
「え?」
「カッコいいよ、兄上、『闇の天使』って、兄上が天使みたいだってことだよね。しかも『闇の』なんて何だか特別っぽいね」
ジュストの反応を見るに、そう呼ばれることが嫌いらしい。
「そう思うか?」
「うん」
「そうか…ジュストが気に入ってくれたなら、それも悪くないな」
ジュストがそう言って優しく頭を撫でて笑う。
「きゃあ~、え、笑顔」
「み、見ました?」
ジュストがギャレットの頭を撫でて微笑むのを目撃した人たちから、悲鳴があがる。
「あ、えっと、人混みに飲まれそうになって、あの人に助けて貰ったんだ」
振り返ってレーヌのことを説明する。
「オハイエ嬢が?」
ジュストは疑わしい目を彼女に向けた。
ここへ連れてこられたのは人目を避けるためだが、彼女が引っ張ってきたのは間違いではない。
「それで、君は俺の弟に何か?」
「あの…」
ジュストが義兄弟だということを確認し、侯爵家に引き取られるまでのことを聞き出そうとしていたのを、話すべきだろうか。
ちらりと彼女を見ると、ジュストに向ける彼女の視線は好きな人に向けるような熱の籠もったものでなく、どこかノスタルジックさを感じさせるものだった。
(ジュストに関心がないわけじゃないことはわかる。でも、まだ少し余所余所しいな)
「おめでとうって言いたいけど、恥ずかしくって言えないって言ってたよ」
ここは僕がひと肌脱いで、キューピットになって二人の仲を進展させてあげよう。
「え!」
「オハイエ嬢が?」
明らかに驚くレーヌとジュスト。そんなことひと言も言っていない台詞を、あたかも彼女が言っていたと言われたのだから彼女が驚くのはわかるが、ジュストが驚くとは思わなかった。
「そんなに驚くこと?」
「い、いや」
明らかにジュストは動揺している。
これは、彼も彼女のことを気にしている?
「あの、準優勝おめでとう」
「ありがとう。でも準優勝だ。最後は優勝は出来なかった」
「そんなこと、王太子様は昨年の優勝者で、一番の優勝候補でしたもの。一年でここまで頑張れたのは凄いわ」
「そうだよ、兄上。やっぱり兄上は凄いよ」
「ギャレットにそんな風に言ってもらえて、嬉しい」
「ふん、一年のくせに調子に乗って」
二人でジュストの功績を褒め称えていると、どこからかそんな声が聞こえてきた。
声がした方を振り返ると、予選の一回戦でジュストに負けた人物が他に仲間らしき男性たちを五人ほど連れて立っていた。
「ベルン先輩、俺になにか?」
ジュストはギャレットを自分の背中に庇い、レーヌにも手で、後ろへと促す。
遠巻きに見ていたジュストのファンクラブ(?)の人たちもザワつく。
「『闇の天使』だか何か知らないが、女達にキャーキャー言われて、いいご身分だな」
見たところ全員体育会系のムチマッチョな人たちばかり。その相貌はいかつい面々ばかり。
負けた腹いせと、キャーキャー騒がれるジュストへいちゃもんをつけに来たのが丸わかりだった。
「闇の天使?」
ギャレットがそう聞き返すとジュストは表情を固くし「チッ」と舌打ちした。
「気にするな」
そう言って此方に向けるジュストの顔は口は笑っているが、目が笑っていない。
「え、でも…闇の天使って、兄上のこと、だよね?」
「だから気にするな」
「だって…」
「勝手に周りが言っているだけで、俺は認めて」
「カッコいい」
「え?」
「カッコいいよ、兄上、『闇の天使』って、兄上が天使みたいだってことだよね。しかも『闇の』なんて何だか特別っぽいね」
ジュストの反応を見るに、そう呼ばれることが嫌いらしい。
「そう思うか?」
「うん」
「そうか…ジュストが気に入ってくれたなら、それも悪くないな」
ジュストがそう言って優しく頭を撫でて笑う。
「きゃあ~、え、笑顔」
「み、見ました?」
ジュストがギャレットの頭を撫でて微笑むのを目撃した人たちから、悲鳴があがる。
「あ、えっと、人混みに飲まれそうになって、あの人に助けて貰ったんだ」
振り返ってレーヌのことを説明する。
「オハイエ嬢が?」
ジュストは疑わしい目を彼女に向けた。
ここへ連れてこられたのは人目を避けるためだが、彼女が引っ張ってきたのは間違いではない。
「それで、君は俺の弟に何か?」
「あの…」
ジュストが義兄弟だということを確認し、侯爵家に引き取られるまでのことを聞き出そうとしていたのを、話すべきだろうか。
ちらりと彼女を見ると、ジュストに向ける彼女の視線は好きな人に向けるような熱の籠もったものでなく、どこかノスタルジックさを感じさせるものだった。
(ジュストに関心がないわけじゃないことはわかる。でも、まだ少し余所余所しいな)
「おめでとうって言いたいけど、恥ずかしくって言えないって言ってたよ」
ここは僕がひと肌脱いで、キューピットになって二人の仲を進展させてあげよう。
「え!」
「オハイエ嬢が?」
明らかに驚くレーヌとジュスト。そんなことひと言も言っていない台詞を、あたかも彼女が言っていたと言われたのだから彼女が驚くのはわかるが、ジュストが驚くとは思わなかった。
「そんなに驚くこと?」
「い、いや」
明らかにジュストは動揺している。
これは、彼も彼女のことを気にしている?
「あの、準優勝おめでとう」
「ありがとう。でも準優勝だ。最後は優勝は出来なかった」
「そんなこと、王太子様は昨年の優勝者で、一番の優勝候補でしたもの。一年でここまで頑張れたのは凄いわ」
「そうだよ、兄上。やっぱり兄上は凄いよ」
「ギャレットにそんな風に言ってもらえて、嬉しい」
「ふん、一年のくせに調子に乗って」
二人でジュストの功績を褒め称えていると、どこからかそんな声が聞こえてきた。
声がした方を振り返ると、予選の一回戦でジュストに負けた人物が他に仲間らしき男性たちを五人ほど連れて立っていた。
「ベルン先輩、俺になにか?」
ジュストはギャレットを自分の背中に庇い、レーヌにも手で、後ろへと促す。
遠巻きに見ていたジュストのファンクラブ(?)の人たちもザワつく。
「『闇の天使』だか何か知らないが、女達にキャーキャー言われて、いいご身分だな」
見たところ全員体育会系のムチマッチョな人たちばかり。その相貌はいかつい面々ばかり。
負けた腹いせと、キャーキャー騒がれるジュストへいちゃもんをつけに来たのが丸わかりだった。
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