【完結】TL小説の悪役令息は死にたくないので不憫系当て馬の義兄を今日もヨイショします

七夜かなた

文字の大きさ
上 下
32 / 91

32 勝負の行方②

しおりを挟む
準々決勝二回戦は王太子殿下の圧勝。
そして三回戦にジュストが登場した。

「きゃー」

王太子殿下にも応援団はいたが、ジュストの応援団もまた負けず劣らずの白熱ぶりだった。

「なんか増えてない?」
「ああ、なんかさっき対戦したナタリア=バーナディの応援団が丸々追加されたらしい」
「え、なんで?」
「なんでもナタリア嬢がジュストを応援すると決めたみたいで」
「ど、どうして?」
「それは、彼女がジュストのファンになったから。皆に彼を応援してくれって言ったらしい」
「へ、へえ」
「あらぁ、さっきの件かしらね。ジュストも隅に置けないわね」

そんな話をしている内に試合が始まった。

「やああああ!」

ガキン

気合が入った雄叫びと共にメリビルがジュストに斬りかかった。
遠目からでも相手は気合充分だ。
ジュストはその気合に気圧されながらも、応戦している。

「兄上、頑張れー」

観覧席の端ギリギリまで前に出て声を張り上げ応援する。

「はあっ!」

激しい打ち合いが続き、息を呑む展開に瞬きすら忘れる。

「さ、さすが準々決勝だな」
「てか、ステファンも出たじゃないか」
「負けたけどね」
「出るだけでもすごいよ。『参加することに意味がある』ってね」

有名なスポーツの祭典で使われるフレーズを口にする。

「なんだそれ」
「あ!」

そうこうしている内に対戦は重大局面を迎えた。

メリビルは最初勢い込み過ぎたのか、スタミナが切れそうになっている。
そこをジュストは見逃さなかった。

「はあっ!」

ガキン

ジュストが打ち払った剣でメリビルが剣を落とした。

「や、やったぁ~」
「勝者、モヒナート」

応援団からも悲鳴に似た歓声があがる。
次はいよいよ準決勝だ。
対戦相手はステファンを打ち負かした相手。
準決勝の二試合は同時に行われる。よく見える位置に陣取ろうと応援団がゾロゾロと場所を移動する。

休む時間もなく次の試合が始まった。

「頑張れー、兄上ぇー」

変わり映えのしない応援だったが、気持ちは誰よりも籠もっている。
 
ギャレットの祈りが通じたのか、ジュストの実力か。
ジュストはステファンを負かした相手に何とか勝つことが出来た。

ジュストが勝ったのを見て、気になってステファンを見た。

「そんな顔をしなくても、落ち込んでいないよ」

意外にあっさりとした表情でステファンが笑った。思ったよりヘコんでいなくて良かった。

そして王太子殿下との一騎打ち。

ジュストは健闘の末、見事に負けた。
そこに忖度は一切なかったと思いたい。

「僕、兄上のところに行ってきていいですか?」

きっとジュストは本日の初黒星に落ち込んでいるはず。

「おお、行ってこい」
「帰りにカレンのお見舞いに行きますから、早く帰って来るのよ」
「わかりました」

ギャレットは小走りにジュストの元へと走って行った。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

処理中です...