【完結】TL小説の悪役令息は死にたくないので不憫系当て馬の義兄を今日もヨイショします

七夜かなた

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32 勝負の行方②

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準々決勝二回戦は王太子殿下の圧勝。
そして三回戦にジュストが登場した。

「きゃー」

王太子殿下にも応援団はいたが、ジュストの応援団もまた負けず劣らずの白熱ぶりだった。

「なんか増えてない?」
「ああ、なんかさっき対戦したナタリア=バーナディの応援団が丸々追加されたらしい」
「え、なんで?」
「なんでもナタリア嬢がジュストを応援すると決めたみたいで」
「ど、どうして?」
「それは、彼女がジュストのファンになったから。皆に彼を応援してくれって言ったらしい」
「へ、へえ」
「あらぁ、さっきの件かしらね。ジュストも隅に置けないわね」

そんな話をしている内に試合が始まった。

「やああああ!」

ガキン

気合が入った雄叫びと共にメリビルがジュストに斬りかかった。
遠目からでも相手は気合充分だ。
ジュストはその気合に気圧されながらも、応戦している。

「兄上、頑張れー」

観覧席の端ギリギリまで前に出て声を張り上げ応援する。

「はあっ!」

激しい打ち合いが続き、息を呑む展開に瞬きすら忘れる。

「さ、さすが準々決勝だな」
「てか、ステファンも出たじゃないか」
「負けたけどね」
「出るだけでもすごいよ。『参加することに意味がある』ってね」

有名なスポーツの祭典で使われるフレーズを口にする。

「なんだそれ」
「あ!」

そうこうしている内に対戦は重大局面を迎えた。

メリビルは最初勢い込み過ぎたのか、スタミナが切れそうになっている。
そこをジュストは見逃さなかった。

「はあっ!」

ガキン

ジュストが打ち払った剣でメリビルが剣を落とした。

「や、やったぁ~」
「勝者、モヒナート」

応援団からも悲鳴に似た歓声があがる。
次はいよいよ準決勝だ。
対戦相手はステファンを打ち負かした相手。
準決勝の二試合は同時に行われる。よく見える位置に陣取ろうと応援団がゾロゾロと場所を移動する。

休む時間もなく次の試合が始まった。

「頑張れー、兄上ぇー」

変わり映えのしない応援だったが、気持ちは誰よりも籠もっている。
 
ギャレットの祈りが通じたのか、ジュストの実力か。
ジュストはステファンを負かした相手に何とか勝つことが出来た。

ジュストが勝ったのを見て、気になってステファンを見た。

「そんな顔をしなくても、落ち込んでいないよ」

意外にあっさりとした表情でステファンが笑った。思ったよりヘコんでいなくて良かった。

そして王太子殿下との一騎打ち。

ジュストは健闘の末、見事に負けた。
そこに忖度は一切なかったと思いたい。

「僕、兄上のところに行ってきていいですか?」

きっとジュストは本日の初黒星に落ち込んでいるはず。

「おお、行ってこい」
「帰りにカレンのお見舞いに行きますから、早く帰って来るのよ」
「わかりました」

ギャレットは小走りにジュストの元へと走って行った。
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