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25 剣術大会①
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王立学園は国の設立した学園ではあるが、王族や貴族の令息令嬢が通うので、かなりの寄付金が入ってくる。
そのせいで設備もとても立派だ。
小説でその広さは書かれていたが、どこぞの何とかランドばりに広大な敷地を誇っている。
剣術大会が開催される闘技場も、屋根付きの立派な建物だった。
「私が通っていた頃は屋根なんて付いていない屋外だったのよ」
「へえ、そうなんだ」
小説で読んでいても実際に見るとその大きさに圧倒される。
観客席はほぼ満員で、お目当ての生徒の登場を今か今かと待ち構えている。
「兄上は何番でしょうか」
「そうねぇ、剣術は成績順のクラスとは関係ないし、新入生だから意外と最初の方かもしれないわね」
こういう場合はランクが低い方から出場して、強い者は後からと決まっているようだ。
「母上、さっきの女性の方のことですけど」
「オハイエ伯爵令嬢のこと?」
「はい。あの腕の傷は自分のミスではないですよね」
彼女もそれはわかっていると言った。
「何とか出来ないのですか?」
「心配するのはわかるけど、難しいわね」
息子の問いかけにナディアは悲しそうに言った。
「他家のことには簡単には口出しできないわ。本人から相談されれば別ですけど、頑なにそうだと認めなかったもの、尚更よ」
「えっと、じゃあ、例えば彼女が兄上の婚約者になるとか」
「ジュストと?」
息子の提案にナディアが目を見開く。
我ながらいい考えだと思った。ステファンとどうにかなる前に、先に二人をくっつけてしまえばいい。
「そうです。婚約者にして保護するとか」
「それこそ、まずは両家の当主同士で先に話をしないと。あなたは子どもだからわからないでしょうけど、貴族同士の結婚は平民のようにはいかないのよ。家格というものもあるの。それにお相手のご令嬢に婚約者がいるかも」
「それはないです」
「どうしてわかるの?」
「う、そ、それは…」
小説では婚約者はいなかったので、つい口に出してしまった。
「あなた、何かジュストから聞いているの?」
「え、な、何かって?」
「たとえば、気になる女性がいるとか…」
「う、ううん、何も聞いていない」
学園での生活については色々手紙にも書いてきてくれるが、こちらから話題を振らないと、彼女のことは本当に何も言わない。なので情報もない。
興味がなさ過ぎる。
でもそれは彼女に限ってのことではない。
他の令嬢たちも、ジュストは笑顔ひとつ見せない。
「今は家族、特にあなたのことを一番大事に思っているみたいだけど、旦那様と私も学園で知り合ったのもあるから、ジュストもそうなるのかしらって、思っているの」
「え、お母様達、学園で知り合ったんですか」
意図せず両親の情報が入ってきた。
「言ってなかったかしら」
「知りませんでした」
「ステファンの両親もそうよ。学園に通うのは社交を学ぶため。ひいては婚約者のいない者が相手を探すためでもあるの」
学園ひとつが大きな婚活会場になっているとは思わなかった。
「先程のオハイエ伯爵令嬢の方はジュストにクラスメイト以上の関心があるように見えたのだけど、どうも恋愛という感じではなかったと思うの。あくまでも私の勘ですけど」
何かあると女としての第六感が働いたらしい。
「兄上は婚約についてどう思っているのでしょう」
そろそろ恋愛フラグが立ってもいいはず。今日は彼女の腕に虐められた証拠も見た。
今頃彼女のことが気になっているのではないだろうか。
そのせいで設備もとても立派だ。
小説でその広さは書かれていたが、どこぞの何とかランドばりに広大な敷地を誇っている。
剣術大会が開催される闘技場も、屋根付きの立派な建物だった。
「私が通っていた頃は屋根なんて付いていない屋外だったのよ」
「へえ、そうなんだ」
小説で読んでいても実際に見るとその大きさに圧倒される。
観客席はほぼ満員で、お目当ての生徒の登場を今か今かと待ち構えている。
「兄上は何番でしょうか」
「そうねぇ、剣術は成績順のクラスとは関係ないし、新入生だから意外と最初の方かもしれないわね」
こういう場合はランクが低い方から出場して、強い者は後からと決まっているようだ。
「母上、さっきの女性の方のことですけど」
「オハイエ伯爵令嬢のこと?」
「はい。あの腕の傷は自分のミスではないですよね」
彼女もそれはわかっていると言った。
「何とか出来ないのですか?」
「心配するのはわかるけど、難しいわね」
息子の問いかけにナディアは悲しそうに言った。
「他家のことには簡単には口出しできないわ。本人から相談されれば別ですけど、頑なにそうだと認めなかったもの、尚更よ」
「えっと、じゃあ、例えば彼女が兄上の婚約者になるとか」
「ジュストと?」
息子の提案にナディアが目を見開く。
我ながらいい考えだと思った。ステファンとどうにかなる前に、先に二人をくっつけてしまえばいい。
「そうです。婚約者にして保護するとか」
「それこそ、まずは両家の当主同士で先に話をしないと。あなたは子どもだからわからないでしょうけど、貴族同士の結婚は平民のようにはいかないのよ。家格というものもあるの。それにお相手のご令嬢に婚約者がいるかも」
「それはないです」
「どうしてわかるの?」
「う、そ、それは…」
小説では婚約者はいなかったので、つい口に出してしまった。
「あなた、何かジュストから聞いているの?」
「え、な、何かって?」
「たとえば、気になる女性がいるとか…」
「う、ううん、何も聞いていない」
学園での生活については色々手紙にも書いてきてくれるが、こちらから話題を振らないと、彼女のことは本当に何も言わない。なので情報もない。
興味がなさ過ぎる。
でもそれは彼女に限ってのことではない。
他の令嬢たちも、ジュストは笑顔ひとつ見せない。
「今は家族、特にあなたのことを一番大事に思っているみたいだけど、旦那様と私も学園で知り合ったのもあるから、ジュストもそうなるのかしらって、思っているの」
「え、お母様達、学園で知り合ったんですか」
意図せず両親の情報が入ってきた。
「言ってなかったかしら」
「知りませんでした」
「ステファンの両親もそうよ。学園に通うのは社交を学ぶため。ひいては婚約者のいない者が相手を探すためでもあるの」
学園ひとつが大きな婚活会場になっているとは思わなかった。
「先程のオハイエ伯爵令嬢の方はジュストにクラスメイト以上の関心があるように見えたのだけど、どうも恋愛という感じではなかったと思うの。あくまでも私の勘ですけど」
何かあると女としての第六感が働いたらしい。
「兄上は婚約についてどう思っているのでしょう」
そろそろ恋愛フラグが立ってもいいはず。今日は彼女の腕に虐められた証拠も見た。
今頃彼女のことが気になっているのではないだろうか。
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