1 / 23
アニエス編
1
しおりを挟む
「それでは、お休みなさい」
いつものようにラファエルはアニエスを抱き、一度精を放つと、さっとガウンを羽織り自室へと戻ろうとした。
「あ、あの…ラファエル」
そんな彼の背中を、いつもは黙って見送っていたアニエスは、その日初めて呼び止めた。
「どうかしましたか?」
二人の寝室を繋ぐ扉を半分開けた状態で、ラファエルは足を止めて振り返った。
「えっと…その…ここでの生活は…どうですか?」
我ながら下手な聞き方だと思ったが、言ってしまったものは仕方がない。
「……特に不満はありません」
「そ、そう…」
答えの前に少し間があったのが気になったが、顔半分が扉の影になっていて、暗がりだということもあり、彼がどんな表情でその言葉を口にしたのかアニエスにはわからなかった。
「用はそれだけですか?」
「え、あ、ええ、呼び止めてごめんなさい」
「いいえ。それでは、ゆっくりお休みください。また明日」
ラファエルが扉の向こうに消え、パタンと閉まる。
「はあ~、私ってこんなに意気地なしだったの…」
聞きたいことをはっきり切り出せなかった己の不甲斐なさに、自己嫌悪に陥る。
結婚して一年半。
初夜から今日まで、騎士団での勤めと家長としての勤めで忙しいアニエスと夫のラファエルとは、彼女の騎士団での仕事が休みの前の日、週一回の営みを続けてきた。
普段は別々の寝室を使い、その時だけラファエルが彼女の部屋を訪れる。そして彼は彼女の中に一度だけ精を放ち、自分の寝室に引き上げる。まるで仕事のような夫婦の営み。
しかし、時折休日返上で働くこともあり、それすらも出来ない日もあった。
子供をつくるためだけの行為。
それが世の中の夫婦の生活だと、アニエスは思っていたのだが、それが勘違いであったことを彼女はつい最近知った。
いつものようにラファエルはアニエスを抱き、一度精を放つと、さっとガウンを羽織り自室へと戻ろうとした。
「あ、あの…ラファエル」
そんな彼の背中を、いつもは黙って見送っていたアニエスは、その日初めて呼び止めた。
「どうかしましたか?」
二人の寝室を繋ぐ扉を半分開けた状態で、ラファエルは足を止めて振り返った。
「えっと…その…ここでの生活は…どうですか?」
我ながら下手な聞き方だと思ったが、言ってしまったものは仕方がない。
「……特に不満はありません」
「そ、そう…」
答えの前に少し間があったのが気になったが、顔半分が扉の影になっていて、暗がりだということもあり、彼がどんな表情でその言葉を口にしたのかアニエスにはわからなかった。
「用はそれだけですか?」
「え、あ、ええ、呼び止めてごめんなさい」
「いいえ。それでは、ゆっくりお休みください。また明日」
ラファエルが扉の向こうに消え、パタンと閉まる。
「はあ~、私ってこんなに意気地なしだったの…」
聞きたいことをはっきり切り出せなかった己の不甲斐なさに、自己嫌悪に陥る。
結婚して一年半。
初夜から今日まで、騎士団での勤めと家長としての勤めで忙しいアニエスと夫のラファエルとは、彼女の騎士団での仕事が休みの前の日、週一回の営みを続けてきた。
普段は別々の寝室を使い、その時だけラファエルが彼女の部屋を訪れる。そして彼は彼女の中に一度だけ精を放ち、自分の寝室に引き上げる。まるで仕事のような夫婦の営み。
しかし、時折休日返上で働くこともあり、それすらも出来ない日もあった。
子供をつくるためだけの行為。
それが世の中の夫婦の生活だと、アニエスは思っていたのだが、それが勘違いであったことを彼女はつい最近知った。
170
お気に入りに追加
415
あなたにおすすめの小説



今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

ワケあってこっそり歩いていた王宮で愛妾にされました。
しゃーりん
恋愛
ルーチェは夫を亡くして実家に戻り、気持ち的に肩身の狭い思いをしていた。
そこに、王宮から仕事を依頼したいと言われ、実家から出られるのであればと安易に引き受けてしまった。
王宮を訪れたルーチェに指示された仕事とは、第二王子殿下の閨教育だった。
断りきれず、ルーチェは一度限りという条件で了承することになった。
閨教育の夜、第二王子殿下のもとへ向かう途中のルーチェを連れ去ったのは王太子殿下で……
ルーチェを逃がさないように愛妾にした王太子殿下のお話です。

密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる