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239 審査の結果
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ラトゥーヤは何度も光の精霊を踊っているだけあって完璧だった。
ミリアムも踊りに対する自信に関してははったりではなかったようだ。
可愛そうなのは後の二人。陛下の威圧に圧され最初から失敗していた。
それでも最後まで踊りきったのはさすが、候補に上がっただけはある。
火の精霊のソロは三番目。早くに終えて後は群舞の部分だけだ。
ラトゥーヤの光の精霊のソロが終わり、審査が終了した。
パラパラとした拍手の中、礼をして下がる。
「審査の間、舞屋の主と共に待つように」
そう言われて最初の部屋まで戻らされた。
「もうダメだわ……」
失敗した三人が戻る途中で落ち込む。
「ラトゥーヤは決まったも同然ね。完璧だもの」
毎年踊っていれば当たり前だろうが、ラトゥーヤはどや顔で微笑む。
誰も私については何も言わない。讃えてくれるとは思わなかったが、ノーコメントもひどいと思う。
「ローリィ、遅かったのね、選考は無事に終わったの?」
元の部屋に戻ると待ちくたびれたティータさんたち舞屋の主が駆け寄ってきた。
「ずいぶん時間が掛かったみたいだけど、うまくいったの?」
メレディスさんがミリアムに訊ねる。
「それが……」
「審査の方法が変わって、どんなものになったかはレリアナが話してくれたけど、ローリィはどうなったの?」
「見本の躍りを見てから他の人たちは個人指導を受けたようです。私は個室で待機するように言われました」
「じゃあ、本当に一度見せてもらっただけで踊らされたの?」
話を聴いてティータさんがレリアナさんを睨む。
「それで?」
「なぜか、その…国王陛下が審査会場にいらっしゃいまして……」
「え、へ、陛下……」
他の舞屋の主たちが騒然となった。
「ラトゥーヤ、あなた、ちゃんと踊れたのでしょうね」
「心配しないで、私を誰だと思ってるの」
「そうね……」
自信満々のラトゥーヤの様子にレリアナさんも満足して微笑む。
「前回も踊った振り付けなんだから、踊れて当たり前じゃない」
風の精霊で失敗した子が皮肉を込めて言う。
「そうね、それに比べて私たちは本当に初めてだったのよ。ずるいわ」
土の精霊を踊った子もそうだと口をだす。
「ミリアムも、あなた前回も候補には上がったんだから、その時と同じ精霊なら楽勝よね」
一緒に踊った風の精霊の子がミリアムにも矛先を向ける。
「何とでも言いなさい。陛下の前で緊張して失敗したり、覚えきれなかったのは自分のせいでしょ。私が足を引っ掻けたわけじゃないんだから、逆恨みはみっともないわ」
「なんですって、そもそも、最初の審査のとおりにしていたらもっとうまくいったのに、ラトゥーヤたちが騒ぎ立てて、審査方法を変えたのも最初からあなたたち仕組んでいたんじゃない?」
二組目に土の精霊を踊った子が、ミリアム、ラトゥーヤ、そして私を指差す。
「な、言いがかりよ、こっちは迷惑したんだから!」
私が指を差されティータさんが憤慨した。
「最初に寝ぼけたことを言ったのはティータじゃない、それで、そのことはどうだったの?」
レリアナさんがラトゥーヤに訊ねた瞬間、辺りは水をうったように静かになった。
「どうしたの?やっぱり嘘……だったのよね」
レリアナさんの表情が強張る。
「ラトゥーヤ」
「ミリアム」
「あなたたち、どうなの?」
「まさか………」
沈黙が雄弁に語る。私が失敗、もしくはティータさんの言葉が誇大妄想からくる詭弁なら、彼女たちはこぞってそのことを告げていた筈だ。
「嘘でしょ……それに陛下までそれを目の当たりにされたなんて………」
「それどころか、誰がこんな不平等な審査を提案したのだと逆にお叱りになられていたわ」
誰かが言った言葉にレリアナさんが青ざめた。
「な、なんですって…」
「今頃は審査そっちのけでそんな話になっているかも知れないわね」
「本当なの、ラトゥーヤ……こ、国王陛下が……」
「静かに!」
そこへ審査が終わったことを告げに式部の役人がやってきた。
「畏れ多くも、陛下から直々に結果の発表がある。全員で審査会場まで来るように」
全員に緊張が走った。
ミリアムも踊りに対する自信に関してははったりではなかったようだ。
可愛そうなのは後の二人。陛下の威圧に圧され最初から失敗していた。
それでも最後まで踊りきったのはさすが、候補に上がっただけはある。
火の精霊のソロは三番目。早くに終えて後は群舞の部分だけだ。
ラトゥーヤの光の精霊のソロが終わり、審査が終了した。
パラパラとした拍手の中、礼をして下がる。
「審査の間、舞屋の主と共に待つように」
そう言われて最初の部屋まで戻らされた。
「もうダメだわ……」
失敗した三人が戻る途中で落ち込む。
「ラトゥーヤは決まったも同然ね。完璧だもの」
毎年踊っていれば当たり前だろうが、ラトゥーヤはどや顔で微笑む。
誰も私については何も言わない。讃えてくれるとは思わなかったが、ノーコメントもひどいと思う。
「ローリィ、遅かったのね、選考は無事に終わったの?」
元の部屋に戻ると待ちくたびれたティータさんたち舞屋の主が駆け寄ってきた。
「ずいぶん時間が掛かったみたいだけど、うまくいったの?」
メレディスさんがミリアムに訊ねる。
「それが……」
「審査の方法が変わって、どんなものになったかはレリアナが話してくれたけど、ローリィはどうなったの?」
「見本の躍りを見てから他の人たちは個人指導を受けたようです。私は個室で待機するように言われました」
「じゃあ、本当に一度見せてもらっただけで踊らされたの?」
話を聴いてティータさんがレリアナさんを睨む。
「それで?」
「なぜか、その…国王陛下が審査会場にいらっしゃいまして……」
「え、へ、陛下……」
他の舞屋の主たちが騒然となった。
「ラトゥーヤ、あなた、ちゃんと踊れたのでしょうね」
「心配しないで、私を誰だと思ってるの」
「そうね……」
自信満々のラトゥーヤの様子にレリアナさんも満足して微笑む。
「前回も踊った振り付けなんだから、踊れて当たり前じゃない」
風の精霊で失敗した子が皮肉を込めて言う。
「そうね、それに比べて私たちは本当に初めてだったのよ。ずるいわ」
土の精霊を踊った子もそうだと口をだす。
「ミリアムも、あなた前回も候補には上がったんだから、その時と同じ精霊なら楽勝よね」
一緒に踊った風の精霊の子がミリアムにも矛先を向ける。
「何とでも言いなさい。陛下の前で緊張して失敗したり、覚えきれなかったのは自分のせいでしょ。私が足を引っ掻けたわけじゃないんだから、逆恨みはみっともないわ」
「なんですって、そもそも、最初の審査のとおりにしていたらもっとうまくいったのに、ラトゥーヤたちが騒ぎ立てて、審査方法を変えたのも最初からあなたたち仕組んでいたんじゃない?」
二組目に土の精霊を踊った子が、ミリアム、ラトゥーヤ、そして私を指差す。
「な、言いがかりよ、こっちは迷惑したんだから!」
私が指を差されティータさんが憤慨した。
「最初に寝ぼけたことを言ったのはティータじゃない、それで、そのことはどうだったの?」
レリアナさんがラトゥーヤに訊ねた瞬間、辺りは水をうったように静かになった。
「どうしたの?やっぱり嘘……だったのよね」
レリアナさんの表情が強張る。
「ラトゥーヤ」
「ミリアム」
「あなたたち、どうなの?」
「まさか………」
沈黙が雄弁に語る。私が失敗、もしくはティータさんの言葉が誇大妄想からくる詭弁なら、彼女たちはこぞってそのことを告げていた筈だ。
「嘘でしょ……それに陛下までそれを目の当たりにされたなんて………」
「それどころか、誰がこんな不平等な審査を提案したのだと逆にお叱りになられていたわ」
誰かが言った言葉にレリアナさんが青ざめた。
「な、なんですって…」
「今頃は審査そっちのけでそんな話になっているかも知れないわね」
「本当なの、ラトゥーヤ……こ、国王陛下が……」
「静かに!」
そこへ審査が終わったことを告げに式部の役人がやってきた。
「畏れ多くも、陛下から直々に結果の発表がある。全員で審査会場まで来るように」
全員に緊張が走った。
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