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232 よろしくね
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「落ち着いてください、ティータさん」
三人がにらみ合う中を割って入った。
「えっと……レリアナさんでしたよね。すいません。私のせい……ですよね」
ことの発端は私がラトゥーヤさんを知らないことだったはずだと謝った。
「違うわ、きっかけはそうだったかもしれないけれど、レリアナの態度は昔から気に入らなかったのよ」
「そうよ!ちょっと自分のところが私たちのところより大きいからって、現役のときは私たちより劣ってたくせに」
いつの間にかメレディスさんもティータさんとタッグを組んだみたいになっている。
周りを見渡せば皆面白そうに遠巻きに眺めている。
本気の喧嘩は止められても女同士のいがみ合いはまた別だ。
女はとかくあのときはああだった、こうだったと細かいことを覚えているものだ。
三人には私の知らない過去があり、確執もあるのかもしれない。
「いつまでも昔の栄光にすがってみっともないわね。所詮は負け犬の遠吠え。結果的に王都で上位に入る舞屋の主になっているのは私よ」
ホホホと勝ち誇ったように笑うレリアナさんにティータ、メレディス組はぐぬぬと唸る。
「た、確かに大きさでは負けるけど、りょ、量より質よ!」
「そうよ!メレディス良いこと言うわ、人数じゃない、どれだけ優秀な踊り子がいるかで」
「うちのラトゥーヤはここ数年選ばれてるわよ」
「うっ」
墓穴を掘るとはこういうことか。レリアナさんの言葉にまたもや二人が撃沈する。
「た、たまたまよ。今年もそうとは限らないわ」
「そうね、メレディス……うちのロ……クレアはすごいのよ。なんたって一度見ただけでどんな振り付けも覚えちゃうんだから」
どや顔でティータさんが言い放つと、一瞬その場が水を打ったように静かになった。
「え、なにそれ……」
皆の視線が私に集まる。
「そんな人間いるわけないでしょ」
後ろから声が聞こえて振り返ると、その声はラトゥーヤだった。
「そうよ、ティータ……悔しいからっていくらなんでも……」
「そりゃあ、覚えるのが早い子は多いけど……」
「さすがに一見でって…」
メレディスさんも信じられないと一歩下がる。
「ティータ……いくら悔しいからってそんなすぐばれる嘘をつかなくても」
ティータ、メレディス同盟はあっけなく決裂した。
「嘘じゃないわよ、実際に"英雄の舞"だって一度見て覚えたし」
「なに、それ……」
ラトゥーヤが私に近づいて顔を覗き込む。
「二人で皆を騙そうとしてるの」
「騙そうとしているなんて」
「色仕掛けに加えて嘘まで……何でもありね」
またミリアムも加わる。
「色仕掛け……ああ、あれね」
ラトゥーヤも何のことかわかったのか、うっすらと笑う。
「そっちの方はさておき、一見で振り付けを覚えるかどうかはすぐにわかることだわ」
「そうね」
「いいわよ、嘘じゃないってこと証明すればいいんでしょ!今に見てなさい」
人差し指をビシッと立てて、反対の手を腰にあてて高らかにティータさんが全員を舐めるように指差す。
「よろしくね、クレア」
最後にティータさんが私を仰ぎ見た。
三人がにらみ合う中を割って入った。
「えっと……レリアナさんでしたよね。すいません。私のせい……ですよね」
ことの発端は私がラトゥーヤさんを知らないことだったはずだと謝った。
「違うわ、きっかけはそうだったかもしれないけれど、レリアナの態度は昔から気に入らなかったのよ」
「そうよ!ちょっと自分のところが私たちのところより大きいからって、現役のときは私たちより劣ってたくせに」
いつの間にかメレディスさんもティータさんとタッグを組んだみたいになっている。
周りを見渡せば皆面白そうに遠巻きに眺めている。
本気の喧嘩は止められても女同士のいがみ合いはまた別だ。
女はとかくあのときはああだった、こうだったと細かいことを覚えているものだ。
三人には私の知らない過去があり、確執もあるのかもしれない。
「いつまでも昔の栄光にすがってみっともないわね。所詮は負け犬の遠吠え。結果的に王都で上位に入る舞屋の主になっているのは私よ」
ホホホと勝ち誇ったように笑うレリアナさんにティータ、メレディス組はぐぬぬと唸る。
「た、確かに大きさでは負けるけど、りょ、量より質よ!」
「そうよ!メレディス良いこと言うわ、人数じゃない、どれだけ優秀な踊り子がいるかで」
「うちのラトゥーヤはここ数年選ばれてるわよ」
「うっ」
墓穴を掘るとはこういうことか。レリアナさんの言葉にまたもや二人が撃沈する。
「た、たまたまよ。今年もそうとは限らないわ」
「そうね、メレディス……うちのロ……クレアはすごいのよ。なんたって一度見ただけでどんな振り付けも覚えちゃうんだから」
どや顔でティータさんが言い放つと、一瞬その場が水を打ったように静かになった。
「え、なにそれ……」
皆の視線が私に集まる。
「そんな人間いるわけないでしょ」
後ろから声が聞こえて振り返ると、その声はラトゥーヤだった。
「そうよ、ティータ……悔しいからっていくらなんでも……」
「そりゃあ、覚えるのが早い子は多いけど……」
「さすがに一見でって…」
メレディスさんも信じられないと一歩下がる。
「ティータ……いくら悔しいからってそんなすぐばれる嘘をつかなくても」
ティータ、メレディス同盟はあっけなく決裂した。
「嘘じゃないわよ、実際に"英雄の舞"だって一度見て覚えたし」
「なに、それ……」
ラトゥーヤが私に近づいて顔を覗き込む。
「二人で皆を騙そうとしてるの」
「騙そうとしているなんて」
「色仕掛けに加えて嘘まで……何でもありね」
またミリアムも加わる。
「色仕掛け……ああ、あれね」
ラトゥーヤも何のことかわかったのか、うっすらと笑う。
「そっちの方はさておき、一見で振り付けを覚えるかどうかはすぐにわかることだわ」
「そうね」
「いいわよ、嘘じゃないってこと証明すればいいんでしょ!今に見てなさい」
人差し指をビシッと立てて、反対の手を腰にあてて高らかにティータさんが全員を舐めるように指差す。
「よろしくね、クレア」
最後にティータさんが私を仰ぎ見た。
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