転生して要人警護やってます

七夜かなた

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228 色仕掛け?

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二日後、王宮の敷地の一角。ティータさんと共に案内された建物にある部屋には既に何組かの人たちが待機していた。

前回案内された部屋の倍くらいの広さはある。

私たちが入ると次は誰が来たのかと皆が興味津々でこちらを見る。

ざっと見て十人くらい。二人ずつ固まっているのは舞屋の主とそこの踊り子なのだろう。

室内に充満する化粧の香りでむせ変える。

「ティータ」

部屋の中央には長い大きなテーブルと椅子が並べられ、二人でどの辺りへ座ろうかと話をしていると、ティータさんに近付いてくる人がいた。

「メレディス、あなたの所も呼ばれたのね」

ティータさんより少し背が低くぽっちゃり体型のダークブラウンの髪をアップにした女性だった。

「候補にはね、何度かあがるんだけど、やっぱり舞屋の規模が違うと難しいわ」

踊り子の人数が多いと層も厚くなり優秀な人材も集めやすい。ティータさんの舞屋は小規模な方で、メレディスさんの所も似たような規模らしい。

「そちらが候補に上がった?」

ティータさんの脇にいる私に目を止めてメレディスがじろじろと眺める。

その目は自分の踊り子とライバルになる者を明らかに値踏みしている。

「クレアと言います」

軽く頭を下げて挨拶する。私の方が背が高いので、メレディスさんは軽く見上げる。

「ふ~ん。意外に背が高いのね。あら、もしかしてこの前マリアのところと競い舞をした……」

メレディスさんが意外に大きな声でそう言うと、それまでこちらをちらほら盗み見ていただけの他の人たちが一斉にこちらを見た。

「マリアのところもめっきり仕事がなくなったからね。もともと変なやつと付き合いがあったみたいだから遅かれ早かれ潰れただろうけど」

ボロロ一家がキルヒライル様の屋敷を襲い、そのことが原因で彼らは取り潰しとなった。
マリアさんの所もミリイたちにしていたような嫌がらせをボロロ一家に頼んで他の舞屋に対してやっていたことがばれて王都に居られなくなって舞屋を畳んだと聞いている。

「この子はミリアム。うちの踊り子。今日はライバルだけど、よろしくね」

メレディスさんはティータさんと仲がいいのか気さくに話しかけてくる。

ミリアムと言う名の踊り子は、ヘーゼルナッツを思わせる髪色に淡い水色の瞳で、全体的に色素が薄い。色も白く、ビスクドールのようだった。

背もそんなに高くなく、私の肩に頭がようやく届く感じだった。

「よろしく……」
「あんなの、踊りが評価されたんじゃなく、同情を買っただけでしょ」

私が挨拶しかけると、彼女は私を睨み付けてきた。

「こら!ミリアム」

メレディスさんが慌てて彼女の口を手で押さえたが、彼女はその手から逃れてなおも言い放った。

「みんな言ってるわ!王弟殿下に色目を使ったって。今回もだから候補になったんでしょ」

部屋中に響き渡る声でミリアムが叫んだ。

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