転生して要人警護やってます

七夜かなた

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225 彼の目的

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椅子から人がずっこけるのを初めて見た。

いきなりの大男の出現に彼は悲鳴と共に椅子からずっこけた。
師匠がいることはわかっていた筈のティータさんさえ、密かにビクッとした。

「だ、大丈夫ですか?」

ティータさんと私は慌てて倒れたジルベルトさんを助け起こした。

「お恥ずかしい……驚いて椅子から落ちるなど」

幸い彼は尻餅はついたが怪我もなく、驚いて椅子から落ちたことをとても恥ずかしがった。

「いや…いきなり飛び込んで驚かせたのは俺だ。すまない」

師匠もペコペコと謝る。

「それであなたは?舞屋に客以外の男は出入りできないはずですが」
「俺はクレアの……父です」
「そうでしたか………」

師匠が私の父だと名乗って取りあえずは納得したようだが、どうして父親がという顔をしている。

「娘を探している人物がいると聞いて、親バカだと思われるでしょうがどんな人物かわからず心配で付き添ってきたまで。気にしないでください」
「まあ、我々も人を介して探すしかなかったので、怪しまれても仕方ない部分もあるが、そもそもそちらが早く彼女に会わせてくれればここまで苦労しませんでした」

そう言って恨みがましそうにティータさんを見つめる。

「ティータさんは悪くありません。私が暫く王都から離れていましたので、連絡がつかなかったのです」

連絡が取れなかったのはティータさんのせいではない。行き先をはっきり言わずエドワルド公爵邸の護衛で雇われ、そのまま公爵領へ行ってしまった。

「そういうことなら仕方ないですが、それで、私どもの依頼を受けてもらえるのですか」

無駄な話は無用とばかり本題に戻る。

「それは、とても名誉で有難い話ではありますが……」

まだ彼の話の内容が理解できていないのは私だけのようで、その様子を察したティータさんが私に説明をしてくれた。

そもそも式部とは王宮内の祭礼を取り扱う部署で、ジルベルト氏はそこの役人(役人風だと思ったが本当にそうだった)だと言うことはわかった。

彼が言った祝賀の舞とは、新年に王宮で催される祝賀の宴において披露される舞のことだ。

王都では良く知られているが地方の私は知らなかった。
祝賀の宴と聞いて思い出すのは皇居で行われる天皇陛下の参賀しか知らない。

「祝賀の舞は五人の踊り子が踊る舞だけど、これはどこの舞屋でも通常は踊ることが許されていないの。毎年式部の審査で選ばれた一部の踊り子だけが集められて踊ることを許されるの。選ばれることはとても名誉なのよ。ジルベルトさん、彼女がその踊り子の一人として候補に上がったということですよね」

ティータさんが彼に確認した内容は、私には予想もつかない話だった。

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