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220 肩ならし

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次の日の朝早く、師匠が子爵邸を訪れた。
夕べの話は聞いていたので、どうなったか気にはなっていたから、こちらから出向くつもりだった。

「子爵にお会いしたい」

師匠が厳しい顔をして私に囁き、ハレス卿との面会を求めてきた。

執事のジベルさんが子爵に取り次ぎし、朝食の席にいる子爵から書斎で待てとの伝言を伝えてくれた。

ジベルさんは子爵の出勤が遅れることを伝えるために第二近衛騎士団のに使いを送る手配をするため、私たちに子爵の伝言を伝えて姿を消した。

子爵を待つ間、師匠は椅子に座り膝に肘を立てて額を手に置いてずっと無言だった。

何も言わなくても夕べの話が上手くいかなかったことがわかる。

「待たせた」

子爵が書斎に入ってきて、二人で立ち上がって出迎えた。

「こちらこそ、朝早くから申し訳ありません」
「その表情……夕べの話し合いはうまくいかなかったのだな」

子爵も師匠の顔色を見て察したらしく、師匠に腰を下ろすよう促し、自分も私たちの向かい側に座った。

「まず、酒場での話し合いは上手くいきませんでした。相手は仕事の内容は直接本人に話すからと、それで仕方なく事前に決めていたもうひとつの案を伝えました」
「向こうもそれだけ用心深いということだ」

三人の間に暫く沈黙が流れる。
クレアを探す相手の素性を知るために残された方法はひとつ。

「クレアの出番……ということですね」
「出来れば使いたくない手だったが……」

子爵もそれしかないとわかっている。

「ウィリアムが用意した家でクレアになってそこから舞屋へ行こう。ハレス卿、申し訳ありませんが、彼女を暫く借ります」
「それは構わない。アンジェリーナにはうまく言っておこう。他にこちらで何かしておくことはないか?」

そう言いながらも、子爵はまだ少し不安げに呟いた。

「お気遣いありがとうございます。ウィリアムたちにも仕事がありますし、私とローリイで何とかやってみます」
「すいません。師匠……」
「気にするなと言っているだろう、今夜に備えてどこかで肩慣らしでもしておくかな」
「師匠、果たし合いになるとは限りません」

そう言って師匠は肩をぐるぐると回し戦う気満々だ。

「常に万全の態勢で挑まなければな。まだまだ若い者に引けは取らん」
「なら、我が家の者といかがですか?いつも彼女と剣を交えている者たちです。ドルグラン殿に相手をしてもらえるとなれば喜びます」
「それはありがたい、是非お願いしたい。」

師匠の表情ががらりと変わった。

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