転生して要人警護やってます

七夜かなた

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214 近衛騎士団

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王宮の敷地に第一近衛騎士団に詰所としてあてがわれている一棟にある会議室。

出席者は第一から第三近衛騎士団の団長及び副団長、書記官など。

その日の議題は祝賀行事の警備について。

開始時間ギリギリになって第三近衛騎士団団長ハロルド・ウォリスが滑り込んできた。

「申し訳ございません」

開始時刻には間に合ったものの、一番最後に入ってきたことに何人かは不機嫌を顕にし、第三近衛騎士団副団長アルフレッド・ボイルが青い顔をしている。

副団長のボイルは今日は午後からの出勤だったため、自宅から直接の王宮入りだった。

「ギリギリにやってくるとは、偉くなったものだな、ウォリス」

そう言って嫌味を言うのは会議の責任者である第一近衛騎士団団長ミハイル・アウグステン公爵だった。

平民出身で準男爵のウォリスと違い、彼は王族の血を引く生粋の貴族で公爵。ウォリスは仕事での関わりは別してこの公爵が苦手だった。
それは向こうも同じだと肌で感じているため、こういう場でなければ殆ど顔を会わせることもない。

「申し訳ございません。出掛けに来客があったものですから」

入り口で深々と頭を下げて再度詫びを告げる。

「まあ、いい。時間が惜しい。早く席につけ」
「承知いたしました」

会議室の机は全員の顔が良く見えるように円卓になっている。ウォリスは自分の部下の横に座る。

「全員揃ったようなので、早速会議を始める。レリク」
「はい」

アウグステン公爵はすぐ側に控えた事務官に声をかける。
名を呼ばれた男は手に持った書類を一人一人に配って回った。

「それは年明けに行われる祝賀の宴の全体的な流れと出席予定の諸侯の名前だ。陛下から昨日承認がおりた。横にある数字は共に出席する家族の人数だ」

書類について説明し、皆がざっと目を遠している間に公爵はお茶をひとくち飲む。

「気付いた者もいるだろうが、出席予定の者の中に今はキルヒライル様の名は入っていない。体調を見ながら出席を検討されるということだ」

「かなりお悪いのでしょうか」

隣に座る第一近衛騎士団副団長のサミュエル・イエーツ侯爵が訊ねる。

「それは我々が気に病むことではない。医師団が最善を尽くすべきもの。我々はただご回復を祈るだけ。そして殿下が出席となっても慌てることのないよう準備をしておくことだ。他に質問は?」

一切の感情のない言葉だった。
容態を心配するイエーツ侯爵の反応が当たり前の臣下としての言葉だ。

「卿は確か殿下とは年も近かったのでは?」

第二近衛騎士団団長のユリアス・ソーヤ伯爵が質問する。

「それが何か?私は書類について質問がないか訊ねているのであって、私の個人的な内容を質問しろとは言っていない。確かに私と殿下の年は近く小さな頃は共に学び遊ばせていただいたこともあるが、それは過去の話。己の立場もわからないバカな子どもの頃の話だ。他に質問は?」

公爵が皆を見渡す。

「宴の企画はいつも通りカーマリング侯爵のものですか?」

ハレス卿が訊ねる。

「そのように訊いているが、何か?」

「いえ別に………」

いつも通りの流れ。ある意味安定の定番どおりの宴。穿った言い方をすれば代わり映えのしない面白味のない企画。
変化を嫌う頭の固い者には好評価であろうが、若い者からすればそう受け取られるような企画。
諸侯が朗々と国王を讃える言葉を並べ、祝いの品を献上する。各地の名産品、自慢の一品が次々と並べられる。国王、王妃が皆に祝福を述べ、それから聖歌隊による歌が流れ、祝いの舞へと続き、そして料理が振る舞われる。

それからいくつか質問が投げ掛けられ、その一つ一つに意見が飛び交い、方針が決められていった。

「それでは今決定した事項に基づき各自準備に当たるように」

アウグステン公爵の言葉で会議が終了した。

「急いで戻るが、お前も一緒に行くか?」

ウォリスが部下に訊ねる。いつも第一近衛騎士団の詰所に長居はしないが、今日は特に急いでいる言い方だ。

「ここに来る前に来客があったと言っただろう?その件でドルグランから報告をもらうことになっている」

話を聞くと何か事件のように思えるが、楽しそうな団長の顔を見てボイルは訳がわからなかった。
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