転生して要人警護やってます

七夜かなた

文字の大きさ
上 下
211 / 266

209 尾行

しおりを挟む
玄関口で慌ただしく挨拶だけして師匠と私は舞屋を後にした。

皆は中に入ってお茶でもと言ってくれたが、今回は挨拶だけと早々に辞した。
残念そうに絶対また来てね。と念を押されて近い内の訪問を約束させられた。

「王都の女は積極的だな……」

二人で子爵邸へ向かう道すがら師匠が頭を掻きながら言う。

「アイスヴァインでもお前を気にしてた子はいたけど、伯爵令嬢だということもあるのか、皆、遠巻きに見てただけだが、彼女たちはそれに比べるとかなり強引……悪いと言ってるんじゃないぞ。そのわりには男にモテないな。モテたと思ったら王弟殿下か。大物だな、お前」

殿下とはひと月会っていない。
ハレス卿から様子は聞いているし、側にいる道を断ったのは私だ。そのことは後悔していないが、会えないのはやっぱり寂しい。
夕べ殿下との思い出を語らされただけに、ますます会いたいと思ってしまった。
携帯やテレビ電話などのツールがないこの世界で、遠く離れた人との交流はとても難しい。

「それはそうと…………」

歩きながら師匠が何気ない様子を装いながら耳の側で囁いた。

「気付いてましたか?」

実は舞屋を出て少し歩きだしてから私たちの後をつけてくる人物がいることに気付いた。
師匠も気づいているらしく確認してきた。

「お前はこのまま真っ直ぐ行け。商店街の外れで路地に入って待っていろ。俺は次の角で曲がって先回りする」
「私が……」
「俺は第三近衛騎士団にいたんだぞ。王都の地理はよく知っている。お前は方向音痴なんだから、俺に任せておけ。それに多分、俺とお前なら間違いなくお前を追うだろう」

方向音痴を指摘されたら黙って従うしかない。
師匠がさりげなく手を振って私と別れ、私は通りを真っ直ぐすすんだ。時折立ち止まり通りに面した店のガラスに映る人物を観察する。

大抵の人は通りすぎる中に、私が止まれば止まり、常に一定の距離を保つ人物がいる。
狙いは私?
中肉中背の目立たないどこにでもいる男。年齢は師匠より少し若いようだ。

商店が建ち並ぶ通りの先は富裕層の屋敷。そしてその先に下級貴族の屋敷街になっている。

言われたとおり商業地区の外れで路地裏に入り、曲がってすぐ側に積まれていた木箱があったのでその陰に隠れた。

潜んでいると少し小走りに駆けてくる足音が聞こえ、私が隠れている所を過ぎたのを見て男の背後に立った。

「何か用ですか?」

後ろから声をかけられ男が飛び上がってこちらを振り返った。

「何のことかな………」

女だとわかり一瞬怯んだ後に男は強気に言い返す。

「つけてきたでしょ」
「勘違いだ。おれもこっちに用が……」
「どんな用かな」

男が私に注目している間に向こうから回り込んできた師匠が距離を詰めて立った。

しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ
恋愛
 女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。  大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。  親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。 「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」  その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。  召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。 「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」  今回は無事に帰れるのか…?  ご都合主義です。  誤字脱字お許しください。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

ヤンデレお兄様から、逃げられません!

夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。 エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。 それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?  ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。が、その結果こうして幸せになれたのかもしれない。

四季
恋愛
王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...