転生して要人警護やってます

七夜かなた

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196 弟と兄2

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「焦る気持ちはわかるが、不調のままではいざというときそれが命取りになるぞ」

病気療養を理由に離宮に引きこもり、密かに街へ出て自分も捜索に加わる予定だ。

「悪かったと思っている。しかし、そなたも悪いのだぞ、これまで人並みに女性に興味をもって早くに婚約者でも作っていたならここまで余もやきもきしなかった。もう男が好みだと言われても受け入れる覚悟をしかけていたところだ」
「………」
「冗談だ。だが、わかって欲しい。お前に幸せになって欲しいと思っている気持ちは本物だ」

真摯な気持ちがイースフォルドの言葉に込められているのをキルヒライルは感じた。

「ゴホン………気持ちはわかりました。でも、もし私が彼女との身分差を気にして思いを封じ込めるか諦めることになったら、どうするつもりだったのです」
「彼女が気にするのはわかるが、お前がそんなことで躊躇う必要があるか?身分など、二人の思いが強ければ乗り越えられるものだろう。我が弟がそんなこともできない軟弱者な筈がないと信じていた」
「……ありがとう……ございます……」
「だが、何度も言うように、好きな女性がいて、相手もお前を少なからず好いているのに、それで身分がどうとかで躊躇うようなら……」
「ようなら?」
「いや………」
「兄上?」
「気にするな……」

もし彼女もキルヒライルに好意を持っていて、互いに両思いなのに身分を気にして思いを貫けないなら、弟とは思わない。妹扱いをする。とまで言いきったことは言わないでおこうとイースフォルドは心に決めた。

本当はそれほど怒ってもいない。早くにローリィがアイスヴァイン伯爵の娘で元貴族だとわかっていたとしてもなにかが変わっていたとは思えない。
結局、彼女の生まれがどうとかの前に勢いのままに行動してしまった。

「それはそうと、例の娘……ローゼリアだが、ハレス卿が引き受けてもいいと言っている。何でも奥方が大層彼女を気に入っているということだ」
「彼の所なら使用人の中にも腕の立つ者がいるでしょう」
「側に置かなくていいのか?何ならエリゼ宮の侍女として雇い入れても……」

兄の提案にキルヒライルは首を横に降る。

「側にはいて欲しいと思いますが、王宮は彼女にはまだ早いと思います。警備の面から言えば確かに安全です。でも彼女がそれを望んでいない。今は……」
「わかった。そのうち会いたいものだ」

その件については互いに納得しあっているとわかり、イースフォルドもそれ以上の追及はしなかった。

「覚悟はいいですか?兄上」
「うむ、いいぞ」

二人は見つめ黙って頷いた。

その後すぐにキルヒライルはエリゼ宮へ身を移した。

王弟の病を引きずり療養のために引きこもり、なぜか兄との不仲が噂となって流れた。
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