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198 対戦相手
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上着を脱いで中庭とテラスを区切る柵に掛けると、一旦腰の剣を外して柵に立て掛けた。
「ありがとうございます」
練習用の刃を潰した剣を侍女から受け取り、鞘から抜いて軽く振るう。
そのまま何通りか型を取っていると外回りにテラスを回って執事に連れられて来る人物が見えた。
「旦那様、お呼びとうかがいました」
鼻の下に髭をはやし、肩まで伸びた赤茶けたクセの強い髪を無造作に首の後ろに束ねた筋骨隆々とした大柄な男が、腰から身を屈めて侯爵に挨拶をする。
「急に呼び立ててすまんな、クラウス」
「いえ、ご用命があればいつでも」
侯爵がわざわざハンスという人物からこのクラウスという男に私の相手を変えた意図は不明だが、丸太のような腕回りを見る限りかなりの腕力だと想像できる。
現れたクラウスの大きさに圧倒したアンジェリーナ様が大丈夫かと無言のままこちらを見つめる。
「クラウス、護衛主任のお前に頼むことではないが彼女の相手をして欲しい」
「彼女の…ですか」
驚いて彼は私を見た。
「確か……ハンスが相手だと……」
「あいつでは生温い。そなたには不満だろうがな。頼まれてくれるか。報酬は弾むぞ」
侯爵からストレッチをしている私に視線を移し、クラウスはにやりと笑った。
「小娘の手習い程度の剣術など、ほんの一撃で終わらせてさしあげます」
どうやら侯爵は私に勝たせるつもりなどないようだ。
女だからと見くびられるのは久し振りだ。
彼の実力を見ていないので勝てるとは言いきれないが、それなりにいい線は行く自信はある。
何せ目の前にいる彼は体格だけみてもモーリス師匠には及ばない。
侯爵家の護衛主任ならそこそこの腕前だろうが、師匠ほどならそれなりに名を馳せている筈だ。
相手が女だからと見かけで見くびるなら、大したことはないのではないだろうか。
「小娘、覚悟しろよ」
手渡された刃を潰した剣を頭上でぶんぶん振り回してクラウス護衛主任が不適に笑った。
「ありがとうございます」
練習用の刃を潰した剣を侍女から受け取り、鞘から抜いて軽く振るう。
そのまま何通りか型を取っていると外回りにテラスを回って執事に連れられて来る人物が見えた。
「旦那様、お呼びとうかがいました」
鼻の下に髭をはやし、肩まで伸びた赤茶けたクセの強い髪を無造作に首の後ろに束ねた筋骨隆々とした大柄な男が、腰から身を屈めて侯爵に挨拶をする。
「急に呼び立ててすまんな、クラウス」
「いえ、ご用命があればいつでも」
侯爵がわざわざハンスという人物からこのクラウスという男に私の相手を変えた意図は不明だが、丸太のような腕回りを見る限りかなりの腕力だと想像できる。
現れたクラウスの大きさに圧倒したアンジェリーナ様が大丈夫かと無言のままこちらを見つめる。
「クラウス、護衛主任のお前に頼むことではないが彼女の相手をして欲しい」
「彼女の…ですか」
驚いて彼は私を見た。
「確か……ハンスが相手だと……」
「あいつでは生温い。そなたには不満だろうがな。頼まれてくれるか。報酬は弾むぞ」
侯爵からストレッチをしている私に視線を移し、クラウスはにやりと笑った。
「小娘の手習い程度の剣術など、ほんの一撃で終わらせてさしあげます」
どうやら侯爵は私に勝たせるつもりなどないようだ。
女だからと見くびられるのは久し振りだ。
彼の実力を見ていないので勝てるとは言いきれないが、それなりにいい線は行く自信はある。
何せ目の前にいる彼は体格だけみてもモーリス師匠には及ばない。
侯爵家の護衛主任ならそこそこの腕前だろうが、師匠ほどならそれなりに名を馳せている筈だ。
相手が女だからと見かけで見くびるなら、大したことはないのではないだろうか。
「小娘、覚悟しろよ」
手渡された刃を潰した剣を頭上でぶんぶん振り回してクラウス護衛主任が不適に笑った。
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