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167 王家の血筋
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フィリップとマーティン……自分が知る中でそのような名の王族はいない。
殿下は確かにそうおっしゃった。
だが……そう殿下は話を続けた。
「これは、私の推測であり、まだ断定はできないが、私の知らない王族の一員がいる可能性はある」
いきなりの王室のお家事情を聞かされ驚いた。
現役の王族が知らない王族。
それはもう一般市民が知ってはいけない、怪しい香りが溢れまくっている。
「皆も知っているとおり、先々のジェスティア陛下の即位にあたり多くの王族同士の争いがあった。その際、失脚し地位を剥奪されたり勢力を削がれた方々の中に、もしかしたら子孫を残した方がいるのではと思っている」
「その二人がそうだと?」
ネヴィルさんが問いかける。
「私の推測だと言ったが、すでに何人かは調べがついている。まだ行方がわかっていない中に、彼らが存在しているかも知れない」
いわゆるご落胤と言える人たちが存在し、彼らが王位に返り咲くことを目論んでいたとしても、そう簡単には現在の陛下から王位を奪還することなどできるのだろうか。
いずれにしても、彼らはここを立ち去った。捕らえた男たちやティモシーからの情報を集めるという話となった。
途中、ジャックさんたち王都の公爵邸の使用人たちが出発する時間になり、邸の皆で見送った。
レイさんとクリスさんは情報収集のために警羅隊の詰所へと行くこととし、ネヴィルさんも押収した書類の確認に少しでも早く取り掛かりたいと書斎へと移った。
殿下とウィリアムさん、エリックさんとアリアーデ先生と私でその後に再び殿下の部屋へと移動した。
部屋に入ってすぐに殿下が口にした。
「フィリップは私がこの地を治めるようになって、すぐにここにやってきた。彼らが王位に就くために何かを企んでいるなら、ここにいた目的は何だったのか……」
「彼らの目的が何にせよ。王家の血を引く可能性があるなら、陛下たちにもこの件について早急に報告するべきでしょう」
「わかっている……それに彼らの行方も探らなければ……」
「彼らとデリヒの関係も明らかにする必要があります。一方は死に、一方は行方不明でどこまで調べがつくかわかりませんが……」
「他に彼らが話していたことは何かあるか?」
殿下が私に向いて訊ねる。
グスタフがどうしてか私を側に置きたいと思っていること。
フィリップが王位を狙っていること。
それ以外に彼らが話していたこと。
すでに警羅で取り調べが行われているかも知れない。もし、彼らが話していなくても、私が聞いていたことはいずれはわかること。
「ナジェット……」
「ナジェット?」
「彼らはナジェット卿という名を口にしていました。彼らの仲間のようです。シュルスでのことがどうとか言っていました」
ナジェット卿の話をすれば、シュルス近くの街道で殺された父さまのことも話さなければならなくない。
殿下は確かにそうおっしゃった。
だが……そう殿下は話を続けた。
「これは、私の推測であり、まだ断定はできないが、私の知らない王族の一員がいる可能性はある」
いきなりの王室のお家事情を聞かされ驚いた。
現役の王族が知らない王族。
それはもう一般市民が知ってはいけない、怪しい香りが溢れまくっている。
「皆も知っているとおり、先々のジェスティア陛下の即位にあたり多くの王族同士の争いがあった。その際、失脚し地位を剥奪されたり勢力を削がれた方々の中に、もしかしたら子孫を残した方がいるのではと思っている」
「その二人がそうだと?」
ネヴィルさんが問いかける。
「私の推測だと言ったが、すでに何人かは調べがついている。まだ行方がわかっていない中に、彼らが存在しているかも知れない」
いわゆるご落胤と言える人たちが存在し、彼らが王位に返り咲くことを目論んでいたとしても、そう簡単には現在の陛下から王位を奪還することなどできるのだろうか。
いずれにしても、彼らはここを立ち去った。捕らえた男たちやティモシーからの情報を集めるという話となった。
途中、ジャックさんたち王都の公爵邸の使用人たちが出発する時間になり、邸の皆で見送った。
レイさんとクリスさんは情報収集のために警羅隊の詰所へと行くこととし、ネヴィルさんも押収した書類の確認に少しでも早く取り掛かりたいと書斎へと移った。
殿下とウィリアムさん、エリックさんとアリアーデ先生と私でその後に再び殿下の部屋へと移動した。
部屋に入ってすぐに殿下が口にした。
「フィリップは私がこの地を治めるようになって、すぐにここにやってきた。彼らが王位に就くために何かを企んでいるなら、ここにいた目的は何だったのか……」
「彼らの目的が何にせよ。王家の血を引く可能性があるなら、陛下たちにもこの件について早急に報告するべきでしょう」
「わかっている……それに彼らの行方も探らなければ……」
「彼らとデリヒの関係も明らかにする必要があります。一方は死に、一方は行方不明でどこまで調べがつくかわかりませんが……」
「他に彼らが話していたことは何かあるか?」
殿下が私に向いて訊ねる。
グスタフがどうしてか私を側に置きたいと思っていること。
フィリップが王位を狙っていること。
それ以外に彼らが話していたこと。
すでに警羅で取り調べが行われているかも知れない。もし、彼らが話していなくても、私が聞いていたことはいずれはわかること。
「ナジェット……」
「ナジェット?」
「彼らはナジェット卿という名を口にしていました。彼らの仲間のようです。シュルスでのことがどうとか言っていました」
ナジェット卿の話をすれば、シュルス近くの街道で殺された父さまのことも話さなければならなくない。
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