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166 心当たり
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「話を元に戻そう」
再び殿下とアリアーデ先生が加わり、デリヒ氏の死亡と司祭が消えたことなどの事実も踏まえて話し合いが再開した。
「フィリップが王に就くということについて、具体的には何か言っていたか?」
「フィリップがどうして王になることができるのか、どうやって王になるのか、具体的なことは何も言っていませんでした。グスタフが殿下への復讐を餌に仲間に入ったことと、成功したのちの彼が望む報酬については話していました」
「フィリップはグスタフに王に就く協力をしたら、私への復讐の他に何を代わりに与えると言ったのだ?」
「人です」
「人……?」
「そう……人です。グスタフはフィリップの目的が達成したら、もらいうけたい人物がいると言っていたそうです。それが誰かは名前は言っていませんでしたが」
それは本当だった。
だが、話の中身を聞いたところによると、どうやら私を指しているように思った。
王弟の護衛の女とは私のことではないだろうか。
「他に何か特徴は?」
グスタフがなぜ私に興味を示すのか。
彼らの話では私が彼の火傷痕を恐れなかったからのようだ。
「ローリィ………聞いているか?」
考え込む私に、ウィリアムさんが声をかけ、隣に再び座ったアリアーデ先生が肩に触れる。
「グスタフの火傷の痕を見て、悲鳴を上げなかった女。領主の所の背が高いメイド」
それが誰を指すか、すぐにわかってしまう。
「「「「「!!」」」」」
皆もそれが私のことだとわかり、一斉に私に視線が注がれる。
「なぜ………」
呟く声に私は首を傾げる。
「なぜ、グスタフがそのように言ったかはわかりません。どうしようと考えているのかも、彼らは言っていませんでした」
「グスタフが、そなたを取り引き材料にしているなど……一体どんな権利があってそんなことを……人を何だと思っているのか」
殿下は身を震わせ、今にも激昂しそうな程に声を押し殺している。
この世界には奴隷制はない。人の売り買いは違法だ。だから簡単に人を交渉材料にしていいわけではない。
ましてそれが悪事の成功報酬などとなると、殿下が怒りに震えるのもわかる。
「先ほどからひとつ気になっているのですが」
おもむろにネヴィルさんが口を挟む。
「ローリィさんのことをもらうもらわないは私もとんでもないことだとは思いますが、それよりもそのフィリップという人物……行方不明になっている司祭様が言っている王位に就くということですが、そんなことが可能なのでしょうか」
「そうです。皆が皆、王位を望んでいるとは言いませんが、王族の血筋でない者が王になると言い放ったところで安易に王になれるものでしょうか」
ネヴィルさんに続いてレイさんも疑問をぶつける。
「それは私も疑問に思いました。いくら声高に王様になりたいと主張したところで、王家の血をひいていない人物が玉座に座ったとして誰も認めないでしょう。王族にそんな人間がいらっしゃるのですか」
「フィリップという名前の王族に私も心当たりはない」
私の問いに殿下が答える。
「だが………」
再び殿下とアリアーデ先生が加わり、デリヒ氏の死亡と司祭が消えたことなどの事実も踏まえて話し合いが再開した。
「フィリップが王に就くということについて、具体的には何か言っていたか?」
「フィリップがどうして王になることができるのか、どうやって王になるのか、具体的なことは何も言っていませんでした。グスタフが殿下への復讐を餌に仲間に入ったことと、成功したのちの彼が望む報酬については話していました」
「フィリップはグスタフに王に就く協力をしたら、私への復讐の他に何を代わりに与えると言ったのだ?」
「人です」
「人……?」
「そう……人です。グスタフはフィリップの目的が達成したら、もらいうけたい人物がいると言っていたそうです。それが誰かは名前は言っていませんでしたが」
それは本当だった。
だが、話の中身を聞いたところによると、どうやら私を指しているように思った。
王弟の護衛の女とは私のことではないだろうか。
「他に何か特徴は?」
グスタフがなぜ私に興味を示すのか。
彼らの話では私が彼の火傷痕を恐れなかったからのようだ。
「ローリィ………聞いているか?」
考え込む私に、ウィリアムさんが声をかけ、隣に再び座ったアリアーデ先生が肩に触れる。
「グスタフの火傷の痕を見て、悲鳴を上げなかった女。領主の所の背が高いメイド」
それが誰を指すか、すぐにわかってしまう。
「「「「「!!」」」」」
皆もそれが私のことだとわかり、一斉に私に視線が注がれる。
「なぜ………」
呟く声に私は首を傾げる。
「なぜ、グスタフがそのように言ったかはわかりません。どうしようと考えているのかも、彼らは言っていませんでした」
「グスタフが、そなたを取り引き材料にしているなど……一体どんな権利があってそんなことを……人を何だと思っているのか」
殿下は身を震わせ、今にも激昂しそうな程に声を押し殺している。
この世界には奴隷制はない。人の売り買いは違法だ。だから簡単に人を交渉材料にしていいわけではない。
ましてそれが悪事の成功報酬などとなると、殿下が怒りに震えるのもわかる。
「先ほどからひとつ気になっているのですが」
おもむろにネヴィルさんが口を挟む。
「ローリィさんのことをもらうもらわないは私もとんでもないことだとは思いますが、それよりもそのフィリップという人物……行方不明になっている司祭様が言っている王位に就くということですが、そんなことが可能なのでしょうか」
「そうです。皆が皆、王位を望んでいるとは言いませんが、王族の血筋でない者が王になると言い放ったところで安易に王になれるものでしょうか」
ネヴィルさんに続いてレイさんも疑問をぶつける。
「それは私も疑問に思いました。いくら声高に王様になりたいと主張したところで、王家の血をひいていない人物が玉座に座ったとして誰も認めないでしょう。王族にそんな人間がいらっしゃるのですか」
「フィリップという名前の王族に私も心当たりはない」
私の問いに殿下が答える。
「だが………」
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