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149 マッサージとは
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「ローリィさん、少しよろしいですか?」
ジャックさんとホーク先生が連れだってきたことに、少し緊張して駆け寄り対応する。
ネヴィルさんたちも何事かと注目するなか、ジャックさんはそんなに身構えなくていいからと前置きする。
「以前、王都の屋敷で殿下が頭痛を訴えられた時のことについて、先生方に説明していただきたいのです」
思っても見なかった展開に驚き、ジャックさんとホーク先生を交互に見る。
「マッサージについてですか?」
「マッサージ……というのですか?」
「あの、それが何か?もしかして、殿下がまた頭痛を?」
「そうなのです。ですが、今は無闇に他の薬を処方するわけにもいかず……薬以外の解決があるのならと………」
「詳細は思い出されていらっしゃらないらしいのですが、頭痛が楽になって良かったと、殿下がおっしゃられて……ホーク先生が私にお尋ねになられたのです。思い当たるのはあの時のことでした。ローリィさんがマッサージをしてくれたおかげで殿下は私がお起こしするまでぐっすりお休みになられましたよね」
「………ですが、あれは、所詮は緊張を解すくらいのもので、先生方の前でご披露するものでは」
「そのマッサージというもの……難しいものでないならお願いできませんか?」
「……今からですか?」
私は振り返り、ウィリアムさんたちの方を見る。
「その……マッサ……とは何ですか?」
初めて聞く言葉に皆が興味津々で訊ねる。
「えっとですね……筋肉を解したり体を揉んだりして体の緊張を和らげたりするんです」
「それはどういったものを使って行うのですか?」
「だいたいは手で行います。体を温めるために蒸したタオルなどを使ったり、気持ちを和らげるために香りのいい香油やクリームを使ったりします」
「蒸したタオルや香油……それらがあればそのマッサージとやらをやっていただけるのでしょうか」
「それは可能ですが………私でお役に立てるなら。少し待っていただいてもよろしいでしょうか」
先生たちに断りを入れてウィリアムさんたちと話し合う。
「とりあえず、レイに先に警羅隊長へ話をして、先ほどのことを相談してもらおう。その上で、隊長の指示に従おう。それに横領の件についても、工房などを調べるなら隊長にも協力してもらわなければならない」
それでいいかとウィリアムさんが私たちに確認をし、皆で頷いた。
「ローリィ、とにかく今はそのマッサー……マッサージというものが殿下の記憶に少しでも残っていることなら、殿下の頭痛を緩和するだけでなく、記憶を取り戻す助けになるかもしれない。それに、もし殿下の状態がよければ、今の件について話をしてみて欲しい」
少し不安はあったが、今私にできることがあるならと、私は頷いた。
ジャックさんとホーク先生が連れだってきたことに、少し緊張して駆け寄り対応する。
ネヴィルさんたちも何事かと注目するなか、ジャックさんはそんなに身構えなくていいからと前置きする。
「以前、王都の屋敷で殿下が頭痛を訴えられた時のことについて、先生方に説明していただきたいのです」
思っても見なかった展開に驚き、ジャックさんとホーク先生を交互に見る。
「マッサージについてですか?」
「マッサージ……というのですか?」
「あの、それが何か?もしかして、殿下がまた頭痛を?」
「そうなのです。ですが、今は無闇に他の薬を処方するわけにもいかず……薬以外の解決があるのならと………」
「詳細は思い出されていらっしゃらないらしいのですが、頭痛が楽になって良かったと、殿下がおっしゃられて……ホーク先生が私にお尋ねになられたのです。思い当たるのはあの時のことでした。ローリィさんがマッサージをしてくれたおかげで殿下は私がお起こしするまでぐっすりお休みになられましたよね」
「………ですが、あれは、所詮は緊張を解すくらいのもので、先生方の前でご披露するものでは」
「そのマッサージというもの……難しいものでないならお願いできませんか?」
「……今からですか?」
私は振り返り、ウィリアムさんたちの方を見る。
「その……マッサ……とは何ですか?」
初めて聞く言葉に皆が興味津々で訊ねる。
「えっとですね……筋肉を解したり体を揉んだりして体の緊張を和らげたりするんです」
「それはどういったものを使って行うのですか?」
「だいたいは手で行います。体を温めるために蒸したタオルなどを使ったり、気持ちを和らげるために香りのいい香油やクリームを使ったりします」
「蒸したタオルや香油……それらがあればそのマッサージとやらをやっていただけるのでしょうか」
「それは可能ですが………私でお役に立てるなら。少し待っていただいてもよろしいでしょうか」
先生たちに断りを入れてウィリアムさんたちと話し合う。
「とりあえず、レイに先に警羅隊長へ話をして、先ほどのことを相談してもらおう。その上で、隊長の指示に従おう。それに横領の件についても、工房などを調べるなら隊長にも協力してもらわなければならない」
それでいいかとウィリアムさんが私たちに確認をし、皆で頷いた。
「ローリィ、とにかく今はそのマッサー……マッサージというものが殿下の記憶に少しでも残っていることなら、殿下の頭痛を緩和するだけでなく、記憶を取り戻す助けになるかもしれない。それに、もし殿下の状態がよければ、今の件について話をしてみて欲しい」
少し不安はあったが、今私にできることがあるならと、私は頷いた。
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