転生して要人警護やってます

七夜かなた

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125 マリーの心配事

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「ローリィ……?」

黙ってしまった私にジャックさんが不思議そうな表情を向ける。

「あ、いえ、殿下とはそう言うお話は……」

自分の顔が赤くなっているのが鏡を見なくてもわかるくらい、熱を感じる。

「何か知っているので……」
「あ、ここにいた、ローリィ」

ジャックさんが私に訊ねようとした時、フレアが厨房に走り込んできた。
「フレア?」
「マリーやジュリアさんも来たから、そろそろ着替えておけって」
ジャックさんにお辞儀をしてからフレアが私を呼びに来た理由を告げる。
「マリーたちが………あの、ジャックさん、よろしいですか?忙しいところ抜けてしまいますが」
「大丈夫ですよ。せっかくのお祭りです。楽しんでください」

私にまだ聞きたいことがあったようだったが、ジャックさんは微笑んでそれだけ言った。
私はフレアとともに厨房を出て自分達の部屋に着替えに戻った。

衣装を着替えて庭に出る。宴が始まりすでに一時間ほどが経っていて、振る舞われた酒ですでに酔っぱらう人も出てきている。

すぐ目につくところにジュリアさんたちが立っていた。朗らかに笑うジュリアさんとミーシャさんと違い、マリーはやや俯き加減で顔の表情も暗い。

「お待たせしました」
フレアと私が近づくと、それまで俯いていたマリーがびくりと顔を上げた。

「ローリィ……」
フレアもいるが、マリーはただ私だけを見つめている。

「どうしたの、マリー?……この子ずっとこんな風で……本当に無理なら言いなさいね」

ジュリアさんが心配してそう言うが、マリーは無理矢理笑顔をつくり、大丈夫だからと繰り返す。
昨日、パレードに参加してすっかり元気になったと思ったのに、何があったのだろう。

「何か食べる?私たちも何かちょっとつまんでおこうかと思ってるの」
ミーシャさんが丸テーブルの方を指し示す。今までは仕事中だったが、今はワイン娘の優勝者でここにいるので、招待客として食べることはできる。
朝早く朝食を取ってから何も口にしていないので、お腹の虫が抗議している。

「そうだね、何か少し食べに行きましょう」

マリーに近付きそう声をかけると、不安げな様子で見返してくる。
「あの、皆は先に行っててもらっていい?私はマリーと後で行くわ」

「え?そう?」
実は早く行きたくてウズウズしているフレアが聞き返す。ジュリアさんたちもいつまでも具合が悪そうなマリーは気にかかるが、気持ちは同じらしい。
「どうぞ、先に行っててください」

再度私がそういうと、皆はこちらを気にかけながらも食事が並んでいるテーブルに駆け寄っていった。

「何があったの?モリーのこと?」

会話が聞こえない距離に皆が離れてからマリーに向き直る。
いきなりの本題にマリーは少し驚いた顔をしたが、すぐにもとの心配げな表情に戻った。
「モリーが、ずっとうなされているの……うわ言でティモシーが、…でも慌てて起こして何があったのって聞くと涙を浮かべて何も言わないの……こんなこと初めて……小さいときからずっと一緒で……何でも打ち明けてきた。ティモシーと付き合うようになってから、二人の時間も減ったけど、彼とケンカしたとか何でも打ち明けてくれた…なのに」

またもや彼女の目に涙が滲み出てきた。

すがり付くように私を仰ぎ見るマリーが痛々しい。
今頃は警羅が彼女に面会を求めているはずだ。
事件の手がかりは失われるかもしれないが、殺された二人が絡んでいた男女がモリーたちでないことを祈るばかりだ。

「きっと落ち着いたらマリーにも話してくれるよ」

何の慰めにもならないが、マリーの気持ちが少し上向きになればと願うばかりだ。

「さあ、マリー……せっかくのご馳走だし、フレアたちに全部食べられる前に行こう」

「そうだね」

まだ少し顔色は悪いが、さっきよりは吹っ切れたマリーが弱々しく答えた。

二人で出かけたモリーとティモシー。家に帰らなかった二人。モリーは疲労と緊張と脱水症状で帰って来た(見つかった?)

もし本当に例の男女がモリーたちで、彼女たちに何か危害を加えたのだとしたら、そこまで周りの人間を巻き込んで果たしたい復讐とは何なのだろう。

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