126 / 266
125 マリーの心配事
しおりを挟む
「ローリィ……?」
黙ってしまった私にジャックさんが不思議そうな表情を向ける。
「あ、いえ、殿下とはそう言うお話は……」
自分の顔が赤くなっているのが鏡を見なくてもわかるくらい、熱を感じる。
「何か知っているので……」
「あ、ここにいた、ローリィ」
ジャックさんが私に訊ねようとした時、フレアが厨房に走り込んできた。
「フレア?」
「マリーやジュリアさんも来たから、そろそろ着替えておけって」
ジャックさんにお辞儀をしてからフレアが私を呼びに来た理由を告げる。
「マリーたちが………あの、ジャックさん、よろしいですか?忙しいところ抜けてしまいますが」
「大丈夫ですよ。せっかくのお祭りです。楽しんでください」
私にまだ聞きたいことがあったようだったが、ジャックさんは微笑んでそれだけ言った。
私はフレアとともに厨房を出て自分達の部屋に着替えに戻った。
衣装を着替えて庭に出る。宴が始まりすでに一時間ほどが経っていて、振る舞われた酒ですでに酔っぱらう人も出てきている。
すぐ目につくところにジュリアさんたちが立っていた。朗らかに笑うジュリアさんとミーシャさんと違い、マリーはやや俯き加減で顔の表情も暗い。
「お待たせしました」
フレアと私が近づくと、それまで俯いていたマリーがびくりと顔を上げた。
「ローリィ……」
フレアもいるが、マリーはただ私だけを見つめている。
「どうしたの、マリー?……この子ずっとこんな風で……本当に無理なら言いなさいね」
ジュリアさんが心配してそう言うが、マリーは無理矢理笑顔をつくり、大丈夫だからと繰り返す。
昨日、パレードに参加してすっかり元気になったと思ったのに、何があったのだろう。
「何か食べる?私たちも何かちょっとつまんでおこうかと思ってるの」
ミーシャさんが丸テーブルの方を指し示す。今までは仕事中だったが、今はワイン娘の優勝者でここにいるので、招待客として食べることはできる。
朝早く朝食を取ってから何も口にしていないので、お腹の虫が抗議している。
「そうだね、何か少し食べに行きましょう」
マリーに近付きそう声をかけると、不安げな様子で見返してくる。
「あの、皆は先に行っててもらっていい?私はマリーと後で行くわ」
「え?そう?」
実は早く行きたくてウズウズしているフレアが聞き返す。ジュリアさんたちもいつまでも具合が悪そうなマリーは気にかかるが、気持ちは同じらしい。
「どうぞ、先に行っててください」
再度私がそういうと、皆はこちらを気にかけながらも食事が並んでいるテーブルに駆け寄っていった。
「何があったの?モリーのこと?」
会話が聞こえない距離に皆が離れてからマリーに向き直る。
いきなりの本題にマリーは少し驚いた顔をしたが、すぐにもとの心配げな表情に戻った。
「モリーが、ずっとうなされているの……うわ言でティモシーが、…でも慌てて起こして何があったのって聞くと涙を浮かべて何も言わないの……こんなこと初めて……小さいときからずっと一緒で……何でも打ち明けてきた。ティモシーと付き合うようになってから、二人の時間も減ったけど、彼とケンカしたとか何でも打ち明けてくれた…なのに」
またもや彼女の目に涙が滲み出てきた。
すがり付くように私を仰ぎ見るマリーが痛々しい。
今頃は警羅が彼女に面会を求めているはずだ。
事件の手がかりは失われるかもしれないが、殺された二人が絡んでいた男女がモリーたちでないことを祈るばかりだ。
「きっと落ち着いたらマリーにも話してくれるよ」
何の慰めにもならないが、マリーの気持ちが少し上向きになればと願うばかりだ。
「さあ、マリー……せっかくのご馳走だし、フレアたちに全部食べられる前に行こう」
「そうだね」
まだ少し顔色は悪いが、さっきよりは吹っ切れたマリーが弱々しく答えた。
二人で出かけたモリーとティモシー。家に帰らなかった二人。モリーは疲労と緊張と脱水症状で帰って来た(見つかった?)
もし本当に例の男女がモリーたちで、彼女たちに何か危害を加えたのだとしたら、そこまで周りの人間を巻き込んで果たしたい復讐とは何なのだろう。
黙ってしまった私にジャックさんが不思議そうな表情を向ける。
「あ、いえ、殿下とはそう言うお話は……」
自分の顔が赤くなっているのが鏡を見なくてもわかるくらい、熱を感じる。
「何か知っているので……」
「あ、ここにいた、ローリィ」
ジャックさんが私に訊ねようとした時、フレアが厨房に走り込んできた。
「フレア?」
「マリーやジュリアさんも来たから、そろそろ着替えておけって」
ジャックさんにお辞儀をしてからフレアが私を呼びに来た理由を告げる。
「マリーたちが………あの、ジャックさん、よろしいですか?忙しいところ抜けてしまいますが」
「大丈夫ですよ。せっかくのお祭りです。楽しんでください」
私にまだ聞きたいことがあったようだったが、ジャックさんは微笑んでそれだけ言った。
私はフレアとともに厨房を出て自分達の部屋に着替えに戻った。
衣装を着替えて庭に出る。宴が始まりすでに一時間ほどが経っていて、振る舞われた酒ですでに酔っぱらう人も出てきている。
すぐ目につくところにジュリアさんたちが立っていた。朗らかに笑うジュリアさんとミーシャさんと違い、マリーはやや俯き加減で顔の表情も暗い。
「お待たせしました」
フレアと私が近づくと、それまで俯いていたマリーがびくりと顔を上げた。
「ローリィ……」
フレアもいるが、マリーはただ私だけを見つめている。
「どうしたの、マリー?……この子ずっとこんな風で……本当に無理なら言いなさいね」
ジュリアさんが心配してそう言うが、マリーは無理矢理笑顔をつくり、大丈夫だからと繰り返す。
昨日、パレードに参加してすっかり元気になったと思ったのに、何があったのだろう。
「何か食べる?私たちも何かちょっとつまんでおこうかと思ってるの」
ミーシャさんが丸テーブルの方を指し示す。今までは仕事中だったが、今はワイン娘の優勝者でここにいるので、招待客として食べることはできる。
朝早く朝食を取ってから何も口にしていないので、お腹の虫が抗議している。
「そうだね、何か少し食べに行きましょう」
マリーに近付きそう声をかけると、不安げな様子で見返してくる。
「あの、皆は先に行っててもらっていい?私はマリーと後で行くわ」
「え?そう?」
実は早く行きたくてウズウズしているフレアが聞き返す。ジュリアさんたちもいつまでも具合が悪そうなマリーは気にかかるが、気持ちは同じらしい。
「どうぞ、先に行っててください」
再度私がそういうと、皆はこちらを気にかけながらも食事が並んでいるテーブルに駆け寄っていった。
「何があったの?モリーのこと?」
会話が聞こえない距離に皆が離れてからマリーに向き直る。
いきなりの本題にマリーは少し驚いた顔をしたが、すぐにもとの心配げな表情に戻った。
「モリーが、ずっとうなされているの……うわ言でティモシーが、…でも慌てて起こして何があったのって聞くと涙を浮かべて何も言わないの……こんなこと初めて……小さいときからずっと一緒で……何でも打ち明けてきた。ティモシーと付き合うようになってから、二人の時間も減ったけど、彼とケンカしたとか何でも打ち明けてくれた…なのに」
またもや彼女の目に涙が滲み出てきた。
すがり付くように私を仰ぎ見るマリーが痛々しい。
今頃は警羅が彼女に面会を求めているはずだ。
事件の手がかりは失われるかもしれないが、殺された二人が絡んでいた男女がモリーたちでないことを祈るばかりだ。
「きっと落ち着いたらマリーにも話してくれるよ」
何の慰めにもならないが、マリーの気持ちが少し上向きになればと願うばかりだ。
「さあ、マリー……せっかくのご馳走だし、フレアたちに全部食べられる前に行こう」
「そうだね」
まだ少し顔色は悪いが、さっきよりは吹っ切れたマリーが弱々しく答えた。
二人で出かけたモリーとティモシー。家に帰らなかった二人。モリーは疲労と緊張と脱水症状で帰って来た(見つかった?)
もし本当に例の男女がモリーたちで、彼女たちに何か危害を加えたのだとしたら、そこまで周りの人間を巻き込んで果たしたい復讐とは何なのだろう。
1
お気に入りに追加
1,933
あなたにおすすめの小説
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる