転生して要人警護やってます

七夜かなた

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34 交渉

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「ボウルルームを、一日のうち、短時間だけ、私たちに使わせていただきたいのです」

「ボウルルーム?何をするんだ?私たちとは?」

何が来るのかと身構えた殿下は、意外な申し出に拍子抜けした様子だった。

「私たちとは、メイド全員です。何をするかは、秘密です」

「私は主人だぞ」

確かにそれはもっともな話だ。

「わかりました。私たちの美容と健康のために、少し運動をしたいと思いまして、ローリイに教えてもらうんです」

「………美容と………健康?具体的には何をやるのか聞いても?」

殿下は私に聞いてきた。

「……ヨガです」

「…………」

「ヨガです」

「聞こえている。ヨガとは何だ?」

「……色々な姿勢を取って、柔軟性を高めたり、間接を動かしたり、体の内側の筋肉を鍛えたり、精神安定などのために行う運動です」

「………そんなものがあるのか?」

「それほど激しい運動ではありませんが」

「…………シリアはわかるか?」

全く想像できないので、今度はシリアに尋ねる。

「……申し訳ありません。私も彼女と同室の子たちから聞いただけで、実際に見たことがありませんので」

そうか、と言って殿下はしばらく考え込んだ。

「一度、やっているところを見ても?」

やっぱりそういう話になるよね。

やっているところを見てもらうのは簡単だ。

だが、ヨガを見せるということは、ヨガに適した服装をしなくてはならない。

そして、ヨガのポーズは………あれを、見せるのか…………

「どうした?私が見て、いいと思うなら許可してもいいぞ。どうせしばらく使う予定のない部屋だ」

「本当ですか!」

殿下の言葉にシリアさんが、私の方を見て、是非やって見せて!と迫った。

「………出来れば、見ないで許可だけいただけると有難いのですが………無理ですよね」

「当たり前だ」

どんなものかもわからず、許可などできない。つべこべ言わず見せろ、と言われれば、やって見せるしかない。

「………わかりました。ですが、できれば、立ち会いは殿下だけで……もちろん、シリアさんたちは同席していただいて構いませんので」

「ジャックでもダメか?」

「ダメです。もし、ご許可いただけたなら、男子禁制でお願いします」

「……?女だけで、ということか?」

「そうです。でなければ、後で困ります」

「………いいだろう。では、夕食の後で」

今日のすべての仕事が終わってから、ここで、ということで、私たちは執務室を出て、殿下はそのあとの仕事を片付けて、午後にはいつものように王宮へ出掛けていった。

見たら後悔するのは、殿下の方だと思うのだけど、わけのわからないことに簡単に許可はできないという意見にも一理ある。

みんなの所に戻って、交渉の結果を伝えると、いつも私がどんな格好をしてヨガをやっているか知っているルルが青ざめた。

やっぱり、そう思うよね。

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