転生して要人警護やってます

七夜かなた

文字の大きさ
上 下
34 / 266

34 交渉

しおりを挟む
「ボウルルームを、一日のうち、短時間だけ、私たちに使わせていただきたいのです」

「ボウルルーム?何をするんだ?私たちとは?」

何が来るのかと身構えた殿下は、意外な申し出に拍子抜けした様子だった。

「私たちとは、メイド全員です。何をするかは、秘密です」

「私は主人だぞ」

確かにそれはもっともな話だ。

「わかりました。私たちの美容と健康のために、少し運動をしたいと思いまして、ローリイに教えてもらうんです」

「………美容と………健康?具体的には何をやるのか聞いても?」

殿下は私に聞いてきた。

「……ヨガです」

「…………」

「ヨガです」

「聞こえている。ヨガとは何だ?」

「……色々な姿勢を取って、柔軟性を高めたり、間接を動かしたり、体の内側の筋肉を鍛えたり、精神安定などのために行う運動です」

「………そんなものがあるのか?」

「それほど激しい運動ではありませんが」

「…………シリアはわかるか?」

全く想像できないので、今度はシリアに尋ねる。

「……申し訳ありません。私も彼女と同室の子たちから聞いただけで、実際に見たことがありませんので」

そうか、と言って殿下はしばらく考え込んだ。

「一度、やっているところを見ても?」

やっぱりそういう話になるよね。

やっているところを見てもらうのは簡単だ。

だが、ヨガを見せるということは、ヨガに適した服装をしなくてはならない。

そして、ヨガのポーズは………あれを、見せるのか…………

「どうした?私が見て、いいと思うなら許可してもいいぞ。どうせしばらく使う予定のない部屋だ」

「本当ですか!」

殿下の言葉にシリアさんが、私の方を見て、是非やって見せて!と迫った。

「………出来れば、見ないで許可だけいただけると有難いのですが………無理ですよね」

「当たり前だ」

どんなものかもわからず、許可などできない。つべこべ言わず見せろ、と言われれば、やって見せるしかない。

「………わかりました。ですが、できれば、立ち会いは殿下だけで……もちろん、シリアさんたちは同席していただいて構いませんので」

「ジャックでもダメか?」

「ダメです。もし、ご許可いただけたなら、男子禁制でお願いします」

「……?女だけで、ということか?」

「そうです。でなければ、後で困ります」

「………いいだろう。では、夕食の後で」

今日のすべての仕事が終わってから、ここで、ということで、私たちは執務室を出て、殿下はそのあとの仕事を片付けて、午後にはいつものように王宮へ出掛けていった。

見たら後悔するのは、殿下の方だと思うのだけど、わけのわからないことに簡単に許可はできないという意見にも一理ある。

みんなの所に戻って、交渉の結果を伝えると、いつも私がどんな格好をしてヨガをやっているか知っているルルが青ざめた。

やっぱり、そう思うよね。

しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

処理中です...