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29 問題解決?
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女性のように………ではなく、本当に女性だった。
言われてじっくり見れば、女だとわかる。
女性としては背が高いが、自分やドルグランと比べると低く、喉仏も出ていない。
「いや、すまない。てっきり男だと……」
「いえ、紛らわしい格好をしている私も悪いのです。ですが、昔からよく間違われていまして……普通はいくら男装してもわかると思うのですが」
「やはり武芸に通じているからか、こう、まとっている何かが男と同じ格好すると違和感がないように見えるのではないか?別に女らしくないとか、そういうのではなく」
「女と思って見れば女に、男と思って見れば男に見えなくもないとも言えるか」
喜んでいいのかわからないフォローをされて、どうリアクションしていいのか、わからない。
兎も角、女とわかって、子爵の考えは変わったのだろうか。
「お気持ちは、変わりませんか?それとも………」
「その前に、君自身はこの話、どう思う?ドルグランはあまりいい話とは思っていないようだが」
「そうですね……私としては、この王都で一人で身を立てられるようにはなりたいと思っています。ですので、いくらかの報酬がいただけるのでしたら、仕事としてお受けしても構わないと思っております。武術の修練を積んだのも、自分だけでなく、いざというときに誰かを助けるためになればと思って始めましたから」
五歳の時、賊に襲われ、前世の記憶を取り戻した時に、人生初めてのわがままを言ったことを思い出す。
「先ほど申し上げたように、現在、舞屋で用心棒としてお世話になっているのですが、腕を組んで街中連れ回されたり、公園で寛いでいる横で座らされたり、用心棒らしいことができていないので、それでお世話になるのは心苦しいと思っていました」
「……………」
用心棒というより、それは付き合っている男女がやることではないのかと男二人は思った。
「ドルグランはどう思う?ハインツはこう申しているが」
「どう思うも何も、ローリイさんがいいと思うなら、やってみたらいい。だが、誰かを護るということは、その人のために自分を犠牲にすることだ。それに護る相手がそれなりの身分の方の場合、万が一失敗したなら、どうなるかわからないのだぞ」
私を気遣ってくれているのがわかる言葉だ。
誰かを護ること、自分を犠牲にすること。痛いほどその意味と重さを知っている。
何故なら、前世の私は、そのために死んだのだから。
前世で私は護衛についていたVIPを庇い、飛んで来た銃弾に倒れたのだ。
また誰かの護衛をするということに、畏れはないかと言えば、ないとは言えない。
けれど、前世で護り切れなかった後悔もあり、今度こそはという思いもある。
「絶対……護りきれるとは約束できません。ハレス様は、私が女であるとわかっても、まだ私が適任だと思われますか?」
そう尋ねられて、彼はじっと目の前の人物を見つめ、腕を組んで考える。
始めから、一人に全てを委ねるつもりもなく、心配しすぎる宰相が万が一を考慮して動いていることだ。
宰相からは男か女かなどの指示はない。(女を護衛にという発想がなかっただけだが)
そう考え、女であることの方が公爵も、敵も逆に警戒しないのではないかということに思い当たった。
「女だということが、この件に不利だとは思わん。むしろその方が、本来の目的を達成できると思わないか、ドルグラン」
「………」
何も言えないのは、子爵の言葉にも一理あると思うからだ。
「俺もできることは協力しますが、やるのは彼女です。決めるのも彼女だ」
そう言って二人は私を見た。
「わかりました……」
「そうか、引き受けてくれるか!」
「私でお役に立てるなら…」
王都に来る途中、刀傷を負ったあの人を助けたことを思い出す。誰かの命を助けることができたことに、心から幸せを感じた。
前世も誰かの役に立ちたいと警察官を目指した。
つくづく生まれ変わっても変わらないなぁと思う。
「ところで、引き受けるからには、もう少し詳しく教えていただけるのですよね」
「ああ、そうだな、誰を護るかも知るべきだ」
「それで、その貴人というのは」
「王弟殿下だ」
「…………え?」
「キルヒライル・カストルフ・ドーシャ・エドワルド公爵だ」
さあーっと血の気が引いた。
ハレス子爵の問題は解決したが、私に取ってこれはいいことなのかな。
言われてじっくり見れば、女だとわかる。
女性としては背が高いが、自分やドルグランと比べると低く、喉仏も出ていない。
「いや、すまない。てっきり男だと……」
「いえ、紛らわしい格好をしている私も悪いのです。ですが、昔からよく間違われていまして……普通はいくら男装してもわかると思うのですが」
「やはり武芸に通じているからか、こう、まとっている何かが男と同じ格好すると違和感がないように見えるのではないか?別に女らしくないとか、そういうのではなく」
「女と思って見れば女に、男と思って見れば男に見えなくもないとも言えるか」
喜んでいいのかわからないフォローをされて、どうリアクションしていいのか、わからない。
兎も角、女とわかって、子爵の考えは変わったのだろうか。
「お気持ちは、変わりませんか?それとも………」
「その前に、君自身はこの話、どう思う?ドルグランはあまりいい話とは思っていないようだが」
「そうですね……私としては、この王都で一人で身を立てられるようにはなりたいと思っています。ですので、いくらかの報酬がいただけるのでしたら、仕事としてお受けしても構わないと思っております。武術の修練を積んだのも、自分だけでなく、いざというときに誰かを助けるためになればと思って始めましたから」
五歳の時、賊に襲われ、前世の記憶を取り戻した時に、人生初めてのわがままを言ったことを思い出す。
「先ほど申し上げたように、現在、舞屋で用心棒としてお世話になっているのですが、腕を組んで街中連れ回されたり、公園で寛いでいる横で座らされたり、用心棒らしいことができていないので、それでお世話になるのは心苦しいと思っていました」
「……………」
用心棒というより、それは付き合っている男女がやることではないのかと男二人は思った。
「ドルグランはどう思う?ハインツはこう申しているが」
「どう思うも何も、ローリイさんがいいと思うなら、やってみたらいい。だが、誰かを護るということは、その人のために自分を犠牲にすることだ。それに護る相手がそれなりの身分の方の場合、万が一失敗したなら、どうなるかわからないのだぞ」
私を気遣ってくれているのがわかる言葉だ。
誰かを護ること、自分を犠牲にすること。痛いほどその意味と重さを知っている。
何故なら、前世の私は、そのために死んだのだから。
前世で私は護衛についていたVIPを庇い、飛んで来た銃弾に倒れたのだ。
また誰かの護衛をするということに、畏れはないかと言えば、ないとは言えない。
けれど、前世で護り切れなかった後悔もあり、今度こそはという思いもある。
「絶対……護りきれるとは約束できません。ハレス様は、私が女であるとわかっても、まだ私が適任だと思われますか?」
そう尋ねられて、彼はじっと目の前の人物を見つめ、腕を組んで考える。
始めから、一人に全てを委ねるつもりもなく、心配しすぎる宰相が万が一を考慮して動いていることだ。
宰相からは男か女かなどの指示はない。(女を護衛にという発想がなかっただけだが)
そう考え、女であることの方が公爵も、敵も逆に警戒しないのではないかということに思い当たった。
「女だということが、この件に不利だとは思わん。むしろその方が、本来の目的を達成できると思わないか、ドルグラン」
「………」
何も言えないのは、子爵の言葉にも一理あると思うからだ。
「俺もできることは協力しますが、やるのは彼女です。決めるのも彼女だ」
そう言って二人は私を見た。
「わかりました……」
「そうか、引き受けてくれるか!」
「私でお役に立てるなら…」
王都に来る途中、刀傷を負ったあの人を助けたことを思い出す。誰かの命を助けることができたことに、心から幸せを感じた。
前世も誰かの役に立ちたいと警察官を目指した。
つくづく生まれ変わっても変わらないなぁと思う。
「ところで、引き受けるからには、もう少し詳しく教えていただけるのですよね」
「ああ、そうだな、誰を護るかも知るべきだ」
「それで、その貴人というのは」
「王弟殿下だ」
「…………え?」
「キルヒライル・カストルフ・ドーシャ・エドワルド公爵だ」
さあーっと血の気が引いた。
ハレス子爵の問題は解決したが、私に取ってこれはいいことなのかな。
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