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26 公開練習(続き)
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ウィリアムさんは腰の辺りで剣を構え、私は腰の少し上辺りで構え、切っ先を相手の目に向ける。
剣道でいうところの正眼の構えだ。
口から細く息を吐き、吐ききったらスッと一気に吸い込む。その呼吸を繰り返す。腹式呼吸で下丹田に意識を集中する。
呼吸が整い、周囲の喧騒が遠のき、ただ目の前のウィリアムさんだけに意識を向ける。
「始め!」
ハレス子爵の掛け声が耳に響き、瞬間、私の神経は一気に覚醒する。
「はっ!」
先に動いたのはウィリアムさんだった。
モーリス師匠に似なかったとはいえ、それなりに大柄なので、向かってくる一歩は大きい。あっという間に間合いを詰め、腕を振り上げ上段から振り下ろす。
体重を入れた重い一撃だったが、更に間合いに入り柄の近くで受け止めてから絡めて押さえ込む。押さえ込まれて下げた腕をウィリアムさんが跳ね上げたので、私はその勢いを使って後ろに飛んで下がった。
俊敏さと柔軟性、どんな体制でもぐらつかな体幹が、私の強み。
腕力では上位に立てないが、互角か、それ以上に戦える自信はある。
息つく暇を与えずウィリアムさんは跳ね上げた剣を翻し右から左に横流して斬り込んでくる。大きく後ろに足を引いて上半身を後ろ向きに傾け切っ先をかわし、かわした剣が戻ってくる前に体制を戻そうとした際に、左に流れたウィリアムさんが再び切り返してくる。
(なかなか動きが速い)
さすがモーリス師匠の息子で、現役の騎士なだけはある。
切り込まれては受け流すことを続けていくと、鐘がなった。
前半の半分の時間が過ぎた。
それまで受け身一方だったが、後半の時間は、こちらから攻撃を仕掛けた。
飛び上がり、頭上から一気に剣を降りおろし、当然のようにその一撃は受け止められたが、振り払う反動を利用して体を仰け反らせて片手を着いて後ろ向きに一回転する。着地の反動力で再びウィリアムさんの懐へ飛び込む。
次第にウィリアムさんが押されぎみになるが、彼もつけ入る隙を狙おうとする。
私は常にスッスッ、ハッハッと二回ずつ吸っては吐いての呼吸を続ける。長距離マラソンをする時など、この呼吸法で疲れにくくなると聞いたことがあったからだ。
後ろ向きからくるりとフィギュアスケートのジャンプのように回転し、ウィリアムさんの剣を叩き落とすように上から剣を振り下ろすと、そのまま重みで二人の剣先が地面にめり込む。
「そこまで!」
二回目の砂時計の砂が全て落ちた瞬間だった。
この間、約20分。
私とウィリアムさんは互いに視線を交わす。
全身をフル稼働させた撃ち合いだったが、呼吸は以外に乱れていない。
対してウィリアムさんの方は少し肩で息をしている。
全力で斬り込んだ結果だったが、私はウィリアムさんの撃ち込む力を受け流したり、逆にそれらを利用したり、パワー不足を補って撃ち合っていたため、まだ少し余裕があった。
「………やるな」
剣を下げそう言うと、ウィリアムさんが剣を左手に持ち替え、すっと右手を差し出した。
「ウィリアムさんも」
同じように私も右手を出し、二人で握手をかわした。
その瞬間、周囲からどっと歓声がわき上がり、二人でぎょっとした。
「ローリイ!」「ローリイさん」
ひときわ甲高い声がする方を見ると、最前列でホリイさんやミリイたちがブンブン両手を振っている。
振り返すと、さらに黄色い歓声があがった。
「ドルグランどの~」
私を打ち負かすとまではいかなかったが、私たちの撃ち合いに男性たちも、盛り上がっていた。
「大丈夫だろう?」
ウィリアムさんがそう言ったので、軽く頷き、二人で子爵夫妻の元へ歩いて行った。
剣道でいうところの正眼の構えだ。
口から細く息を吐き、吐ききったらスッと一気に吸い込む。その呼吸を繰り返す。腹式呼吸で下丹田に意識を集中する。
呼吸が整い、周囲の喧騒が遠のき、ただ目の前のウィリアムさんだけに意識を向ける。
「始め!」
ハレス子爵の掛け声が耳に響き、瞬間、私の神経は一気に覚醒する。
「はっ!」
先に動いたのはウィリアムさんだった。
モーリス師匠に似なかったとはいえ、それなりに大柄なので、向かってくる一歩は大きい。あっという間に間合いを詰め、腕を振り上げ上段から振り下ろす。
体重を入れた重い一撃だったが、更に間合いに入り柄の近くで受け止めてから絡めて押さえ込む。押さえ込まれて下げた腕をウィリアムさんが跳ね上げたので、私はその勢いを使って後ろに飛んで下がった。
俊敏さと柔軟性、どんな体制でもぐらつかな体幹が、私の強み。
腕力では上位に立てないが、互角か、それ以上に戦える自信はある。
息つく暇を与えずウィリアムさんは跳ね上げた剣を翻し右から左に横流して斬り込んでくる。大きく後ろに足を引いて上半身を後ろ向きに傾け切っ先をかわし、かわした剣が戻ってくる前に体制を戻そうとした際に、左に流れたウィリアムさんが再び切り返してくる。
(なかなか動きが速い)
さすがモーリス師匠の息子で、現役の騎士なだけはある。
切り込まれては受け流すことを続けていくと、鐘がなった。
前半の半分の時間が過ぎた。
それまで受け身一方だったが、後半の時間は、こちらから攻撃を仕掛けた。
飛び上がり、頭上から一気に剣を降りおろし、当然のようにその一撃は受け止められたが、振り払う反動を利用して体を仰け反らせて片手を着いて後ろ向きに一回転する。着地の反動力で再びウィリアムさんの懐へ飛び込む。
次第にウィリアムさんが押されぎみになるが、彼もつけ入る隙を狙おうとする。
私は常にスッスッ、ハッハッと二回ずつ吸っては吐いての呼吸を続ける。長距離マラソンをする時など、この呼吸法で疲れにくくなると聞いたことがあったからだ。
後ろ向きからくるりとフィギュアスケートのジャンプのように回転し、ウィリアムさんの剣を叩き落とすように上から剣を振り下ろすと、そのまま重みで二人の剣先が地面にめり込む。
「そこまで!」
二回目の砂時計の砂が全て落ちた瞬間だった。
この間、約20分。
私とウィリアムさんは互いに視線を交わす。
全身をフル稼働させた撃ち合いだったが、呼吸は以外に乱れていない。
対してウィリアムさんの方は少し肩で息をしている。
全力で斬り込んだ結果だったが、私はウィリアムさんの撃ち込む力を受け流したり、逆にそれらを利用したり、パワー不足を補って撃ち合っていたため、まだ少し余裕があった。
「………やるな」
剣を下げそう言うと、ウィリアムさんが剣を左手に持ち替え、すっと右手を差し出した。
「ウィリアムさんも」
同じように私も右手を出し、二人で握手をかわした。
その瞬間、周囲からどっと歓声がわき上がり、二人でぎょっとした。
「ローリイ!」「ローリイさん」
ひときわ甲高い声がする方を見ると、最前列でホリイさんやミリイたちがブンブン両手を振っている。
振り返すと、さらに黄色い歓声があがった。
「ドルグランどの~」
私を打ち負かすとまではいかなかったが、私たちの撃ち合いに男性たちも、盛り上がっていた。
「大丈夫だろう?」
ウィリアムさんがそう言ったので、軽く頷き、二人で子爵夫妻の元へ歩いて行った。
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